本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪に見る世界の今~2013年5・6・7月

2013年07月30日

今年初めての潘基文(パン・ギムン)事務総長の世界歴訪報告をお届けします。潘事務総長は就任7年目となった2013年も、意欲的に各国に足を運び、「すべての人にとってより安全で持続可能な未来」をつくり出す努力を重ねています。

横浜で6月に開かれた第5回アフリカ開発会議(TICAD V)のために日本を訪問したことはすでに紹介しましたが、その直前の5月下旬には、世界銀行ジム・ヨン・キム総裁らとともにアフリカを訪問。中東部の大湖地域を中心に各地をめぐり、アフリカの抱える課題を自分の目で確認しました。

TICAD後の6月中旬には、習近平国家主席就任後初めての中国訪問を果たしました。その後欧州を回って、7月には一旦ニューヨークの国連本部に戻り、12日には女性の教育権を訴えたことで武装集団に襲われたパキスタンの少女マララ・ユスフザイさんを迎えて「マララ・デー」イベントを主催。世界80カ国の若者を国連本部に集めて、すべての子どもたちが教育の機会を得られるように力を合わせようと呼びかけました。

* * * * *

事務総長の大湖歴訪はコンゴ民主共和国から始まりました。国連と世界銀行のトップがともに大湖地域を訪れるのは初めてのこと。案内役として、同地域の事務総長特使を務めるメアリー・ロビンソン元アイルランド大統領が同行しました。

潘事務総長とキム総裁は、首都キンシャサでジョセフ・カビラ大統領と会談。事務総長は会談後、世界銀行が10億ドルの新規支援を表明したことを歓迎しつつも、東部の主要都市ゴマ周辺で続く武力衝突など不安定な情勢に懸念を表明しました。また、カビラ大統領に対し、「軍に適正な指示を与え、国際法に従って市民の命を守るように」と要請、政府による事態の沈静化を求めたことを明らかにしました。ゴマでは現地の病院を訪れ、コンゴ紛争により性的虐待を受けた被害者を慰問。その後の記者会見では、女性に対する暴力の絶滅に向けた決意を強い言葉で訴えかけました

続いてルワンダを訪れた事務総長は、キム総裁とともにポール・カガメ大統領や主要閣僚らと会談し、コンゴ情勢の安定化に向け、周辺諸国との間で合意された平和・安全保障協力の枠組みに対して改めて支援を求めました。また、事務総長としては2度目、自身3度目となる、1994年のルワンダ大虐殺の犠牲者の共同墓地訪問を果たしました。さらにウガンダを訪れ、大湖地域国際会議の議長を務めるヨウェリ・ムセベニ大統領にもコンゴと周辺地域の平和に向けた協力を求めた事務総長は、最後にエチオピアの首都アディスアベバでアフリカ連合の50周年を記念した特別首脳会議の開幕式に出席し、アフリカ歴訪を締めくくりました。

 

6月の主な歴訪先としては、中国が挙げられます。国連安全保障理事会の常任理事国であり、国連平和維持活動(PKO)の主要貢献国である中国には、就任後たびたび訪れている事務総長ですが、今回は習近平国家主席の就任後初めての訪問ということもあり、中国共産党や軍の幹部ら主要当事者と会談を重ね、改めて国連活動への理解と協力を求めました。

今回の訪中で、事務総長はいくつかのテーマ別に、積極的に国連活動をアピールしました。習国家主席との会談では、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)問題への対応などに加えて、中国による国連PKOへの貢献の重要性についても、時間をかけて話し合いました。滞在中、北京郊外にある中国国防省の平和維持センターも訪れ、これから派遣される予定のPKO要員らの訓練の様子を見学。人民解放軍の幹部とも会い、これまでの要員提供に対して感謝の意を伝えるとともに、今後のさらなる協力を求めました。

このほか、気候変動対策については、国連を支援する企業でつくる「グローバル・コンパクト」の代表らに会って直接協力を要請したほか、中国のクリーンエネルギー推進機関を訪問しました。さらには、自ら自転車に乗って、省エネを呼びかけました。

また、国連活動を広く中国の市民に知ってもらうための広報活動にも取り組みました。例えば、国連が今年、中国生まれのスマートフォン向けインスタントメッセンジャー「微信(WeChat)」に開設した公式アカウントを宣伝したり、さらには、中国最大級のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である「微博(Weibo)」に開設されている国連アカウントの400万人目のフォロアーと会って、記念撮影を行ったりしました。

 

7月は欧州を中心に回った事務総長ですが、ある重要な行事のため、中旬に一旦帰国しました。それは、女性が教育を受ける権利を訴えて武装勢力に撃たれたマララ・ユスフザイさんの誕生日にちなんだ、「マララ・デー」の立ち上げイベント。世界80カ国以上から約500人の若者を国連本部に招き、マララさんの頭の傷の回復と誕生日をともに祝福しました。すべての子どもに教育を受ける権利が与えられるように訴えたマララさんの演説を受け、事務総長は「みんなでこの勇敢な少女、マララに続きましょう」とエールを送りました。

* * * * *

病院で、コンゴ紛争による性的虐待の被害者を見舞う事務総長(ゴマで、2013年5月23日)©UN Photo/Eskinder Debebe
大湖地域を歴訪した事務総長と、世界銀行のキム総裁(左端)、ロビンソン事務総長特使(右端)。左から2番目はウガンダのムセベニ大統領(エンテベで、2013年5月24日)©UN Photo/Eskinder Debebe
アフリカ連合50周年を記念した特別首脳会議の開幕式に出席した事務総長(アディスアベバで、2013年5月25日)©UN Photo/Eskinder Debebe
中国の習近平国家主席(右)と会談する事務総長(北京で、2013年6月19日)©UN Photo/Evan Schneider
中国国防省の平和維持センターで訓練を受ける女性PKO要員たち(北京で、2013年6月19日)©UN Photo/Evan Schneider
中国のSNS「Weibo」の国連公式アカウント400万人目のフォロワーと記念撮影(北京で、2013年6月20日)©UN Photo/Evan Schneider
中国訪問中、街中を自転車で走り、省エネを訴える事務総長(北京で、2013年6月20日)©UN Photo/Evan Schneider
「マララ・デー」を祝うため国連本部を訪れたマララ・ユスフザイさん(左)を迎える事務総長(ニューヨークで、2013年7月12日)©UN Photo/ Eskinder Debebe