国連副事務総長、アフリカでの持続可能な開発の実現に向けた行動を呼びかけ(UN News 記事・日本語訳)
2022年09月20日
アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長は、8月28日に行われたチュニジアのカイス・サイード大統領との会談で、持続可能な開発目標(SDGs)の継続的な重要性を強調しました。
*****************
モハメッド副事務総長は、同日閉幕した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に出席するため、同国を訪問しました。
この会議は「アフリカの人々のためのアフリカの開発」という理念の下、1993年から日本が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、およびアフリカ連合委員会が共同で開催しています。
新時代の到来
サイード大統領は、国連副事務総長を迎えるにあたり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナでの戦争を挙げ、世界の新時代について語る一方で、新憲法が制定されたチュニジアの新時代についても言及しました。新憲法の下では、すべての人に対してより一層の説明責任が確立されるとしています。
大統領は、TICADはすでにアフリカに重要な成果をもたらしているとし、今回の会議での合意事項を実行に移すために、すべきことはたくさんあると述べました。
SDGsの変わらぬ重要性
モハメッド副事務総長は、SDGsはこの新時代においても引き続き非常に重要な枠組みであり、TICADは重要な注意喚起の役割を果たしてきていると振り返りました。
17の目標は、極度の貧困の撲滅、ジェンダー平等の実現、経済成長の推進や、気候変動への対応、自然環境の保全などを通じて、より公正で公平な世界を実現することを目指しています。
これらの目標は、2015年に世界の首脳らによって採択され、2030年を達成の期限としています。
副事務総長は、多くの地域において、各国政府は特に女性と女児のためのより良い公共サービスを未だ提供できていないと述べました。また、国連は引き続き各国を支援し、人々に希望を与えていくと付け加えました。
教育の変革
モハメッド副事務総長は、グテーレス事務総長がサイード大統領を次期国連総会および「教育変革サミット(Transforming Education Summit)」に招待していることについて触れました。
9月16日から3日間、国連本部で開催されるこのサミットは、あらゆる年齢や背景の学習者に対して、成長するために必要なスキルや知識、価値を身につけさせる教育の新しいビジョンを打ち出すことを目的としています。
副事務総長は、学者でもあるサイード大統領が、アフリカにおける教育の再定義や見直しに貢献できると述べました。
大統領は出席への意向を認め、教育をこの新時代に適応させることは必須であると指摘しました。また、自国の新憲法には、教育と学習のための最高評議会が盛り込まれていると明らかにしました。
チュニジア大統領との会談は、モハメッド副事務総長がTICAD8の開会式で演説した翌日に行われました。
「究極の嵐」
副事務総長は演説の中で、今日の世界が直面している「複数の危機の連鎖的な影響」に立ち向かうための行動を呼びかけました。
COVID-19パンデミックからの復興、ウクライナでの戦争の影響、気候緊急事態、そして金融危機によって、すでに脆弱な立場に置かれた人々が大きな重圧にさらされていると指摘しています。
「この『究極の嵐』は、現在および将来の紛争や不安を悪化させる肥沃な温床を作り出しており、結果としてSDGsの達成や命と暮らしを守るための私たちの協調的な取り組みを危険にさらしています」と副事務総長は続けました。
行動すべき3つの分野
モハメッド副事務総長は、各国はこれらの課題を克服し、アフリカの安全保障と持続可能な開発に取り組む上で、かつてない機会を得ていると語りました。
また、アフリカ経済に利益をもたらし、SDGsを達成するためには、3つの主要分野で行動を加速させなければならないと強調しました。
1つ目は、エネルギーへの普遍的なアクセスの確保と、再生可能エネルギーへ公正かつ公平に移行するということです。
アフリカにおけるエネルギー開発の道筋を描くためには、持続可能な投資と、TICADのような強力なパートナーシップに基づいた、包括的なアプローチが欠かせません。
「エネルギー・アクセスにおける格差が約6億人に影響を及ぼしているなか、アフリカでは、クリーン・エネルギーへの普遍的で信頼できる安価なアクセスを確保するという野心と歩調を合わせた、『エネルギー開発余地』が必要になるでしょう」と副事務総長は会議で語りました。
「現在の世界的なエネルギー価格の上昇が、アフリカ大陸が持つ再生可能エネルギーの大きな可能性を最大限に引き出すようアフリカ諸国に促す可能性もあります。ただ、それにはタイムリーで大規模な投資が必要です」
食料システムの変革
2つ目の分野は、世界の食料システムを変革する必要性に焦点を当てたものです。つまり、食料安全保障、栄養摂取、自給自足、そしてアフリカ大陸全土の若者のための雇用を実現するということです。
「アフリカの穀倉地帯を拡大するには、灌漑システムの近代化、農業の機械化、ポストハーベスト・ロス(収穫後損失)の削減といった新しいテクノロジーの活用による、農業の生産性や食料システムの向上が必要であり、これらはアフリカ大陸にとって優先度の高い事項です」とモハメッド副事務総長は指摘しました。
副事務総長はまた、TICADパートナーシップは、適切な投資、テクノロジー、安価で大規模なイノベーションを通じて、この変革を促進できるとの見方を示しました。
最後に、モハメッド副事務総長は、各国が不平等とその根本的な要因に対処しない限り、これらの相互に連鎖する危機の解決はあり得ないと強調しました。
「依存的な大陸であるというアフリカの認識を、他の地域と同じ権利や地位を持ち、世界の舞台で重要な役割を果たす、というものに変えていく必要があります。それは、経済面でも、政治面でも。持続可能な開発のためには、十分な資金を動員することが不可欠なのです」と続けています。
次の機会をとらえる
モハメッド副事務総長は出席者に対し、次期国連総会や、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会、20カ国・地域(G20)会合、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の機会をとらえ、COVID-19パンデミックからのより良い復興や、ウクライナで続く戦争の影響への対応に向けて、一致団結した行動を強化するよう呼びかけました。
「私たちはゼロからスタートしているわけではありません」とし、アフリカのための持続可能な開発を実現するという野心を達成するためには、確固たる礎となる要素が必要だと強調しました。
副事務総長は、国連にはアフリカ諸国のこの旅路に引き続き同行する用意がある、と明言しました。
* *** *
原文(English)はこちらからご覧ください。