ヘイトスピーチを理解する:ヘイトスピーチとは何か
2023年06月16日
ヘイトスピーチとは何か
いわゆる「ヘイトスピーチ」とは、人の内的属性(人種、宗教、ジェンダーなど)に基づいて、ある集団や個人を標的とし、社会の平和をも脅かす可能性のある攻撃的言説を指します。
国連がこの問題に世界規模で対処するための統一的な枠組みを提供するために、「ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画」は、ヘイトスピーチを次のように定義しています。「ある個人や集団について、その人が何者であるか、すなわち宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダー、または他のアイデンティティー要素を基に、それらを攻撃する、または軽蔑的もしくは差別的な言葉を使用する、発話、文章、または行動上のあらゆる種類のコミュニケーション」
一方、国際人権法では、ヘイトスピーチの普遍的な定義はまだ存在していません。この概念については、とりわけ、意見と表現の自由、差別の防止、平等性の観点から現在も議論が続けられています。
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前述の定義は、法的なものではなく、また国際人権法で禁止されている「差別、敵意、暴力の扇動」よりも広義ですが、次のような3つの重要な性質を持っています。
ヘイトスピーチは、画像、風刺画、ミーム、オブジェクト、ジェスチャー、記号といった、あらゆる表現形式で伝達され、オフラインまたはオンラインで拡散され得るものです。
ヘイトスピーチは、ある個人や集団についての「差別的な」(偏った、偏狭な、または不寛容な)表現、または「軽蔑的な」(偏見に基づく、侮蔑的な、または屈辱を与える)表現です。
ヘイトスピーチは、ある個人や集団が実際に持つ、または、そう受け取られている「アイデンティティー要素」(「宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダー」など)だけでなく、言語、経済的・社会的出自、障害、健康状態、性的指向といった多岐にわたる特徴をも非難するものです。
ヘイトスピーチは、個人または個人からなる集団のみを対象としている点に注意が必要です。国家やその国の機関、国の象徴または公務員に関するコミュニケーションや、宗教指導者や信仰上の教義に関するコミュニケーションは、ヘイトスピーチには含まれません。
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オンライン上のヘイトスピーチがもたらす課題
誤情報は、私たちが動揺しているときにこそ、急速に広がってしまう。
ちょっと待って、シェアする前に考えよう(#TakeCareBeforeYouShare)
憎悪に満ちたオンラインコンテンツは、デジタルツールで容易に共有できるようになった偽情報の台頭と相まって増加しています。この現象は、私たちの社会に未曽有の課題を突き付けており、各国政府は、仮想世界が規模を増し、加速する中で、国内法に基づいた取り締まりを行うのに苦労しています。
従来メディアとは異なり、オンライン上のヘイトスピーチは、制作も共有も容易な上、低コストかつ匿名で行うことができます。世界中の多様なオーディエンスにリアルタイムで届く可能性も持っています。憎悪に満ちたオンラインコンテンツは比較的に永続性を持つことも問題で、時が経過する中で再度注目を集めたり、(改めて)勢いを得たりすることがあります。
オンライン上の様々なコミュニティーとプラットフォームにまたがってヘイトスピーチを把握・監視することが、新たな対応を練るための鍵となります。しかし多くの場合、そうした取り組みは、この現象の規模の大きさ、自動監視システムの技術的限界、オンライン企業における透明性の欠如といった理由によって、妨げられてしまうのです。
一方で、分断をもたらす憎悪に満ちたストーリーを拡散するソーシャルメディアの武器化の増殖を、オンライン企業のアルゴリズムが助長してきました。このため、脆弱な立場に置かれたコミュニティーが直面するスティグマ(偏見)が激化し、民主主義の脆さが世界中で浮き彫りになりました。これを受け、インターネット上で展開する企業に目が向けられるようになり、現実世界で生じている被害において、それらの企業が負うべき役割や責任について疑義が噴出しました。結果として、一部の国では、違法と見なされるコンテンツのモデレーションや削除の責任をインターネット企業に負わせることが始まり、言論の自由に対する制限や検閲の懸念が生まれています。
こうした課題がある中でも、国連やその他多くの主体は、ヘイトスピーチに対抗する方策を探っています。その取り組みには、表現の自由に対する権利を確保しつつ、オンラインユーザーのメディア・情報リテラシーを高めるイニシアティブも含まれています。
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原文(English)はこちらをご覧ください。