国連総会、「より大胆な」気候行動を追求するため、国際司法裁判所に意見を求めることを決議(UN News 記事・日本語訳)
2023年06月21日
2023年3月29日 ― 国連総会は本日、全会一致で決議が採択されたことを受け、国際司法裁判所(ICJ)に対し、各国が負う気候変動対策上の義務について意見を求めます。
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決議の提案国は、サイクロンによる被害を受けた南太平洋の島国、バヌアツです。決議はさまざまな地域の17カ国からなる「コア・グループ」の支援を受け、気候変動が小島嶼開発途上国に及ぼす悪影響と気候正義に焦点を当てています。
ICJは「世界法廷」としても知られる、国連の主要な司法機関です。その勧告的意見に法的拘束力はありませんが、法的な権威や道徳的な重みが伴います。
より大胆な行動を
採決に先立ち演説を行ったアントニオ・グテーレス国連事務総長は、ICJの勧告的意見には計り知れない重要性があると指摘しました。
「もしそうした意見が表明されるときには、国連総会、国連、加盟国が、私たちの世界から切に求められているより大胆かつ強力な気候行動を起こす助けとなるでしょう」グテーレス事務総長はこのように述べました。
「決定的な10年」
グテーレス事務総長は、3月に発表された最新の気候科学について言及しました。この200年間の地球温暖化のほぼすべてに、人類が関わっていることが裏付けられたというものです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による報告書はさらに、世界の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃に抑えることは可能ではあるものの、時間切れが迫っていると指摘しています。
気候正義と協力
事務総長は、今こそ気候行動と気候正義を実現する時だと強調しました。
「民族間・文化間・国家間・世代間の協力なくして、気候危機は乗り越えられません。しかし、深刻化する気候の不正義が分断を強め、グローバルな気候行動を麻痺させる恐れがあります」事務総長はこのように警告しました。
バヌアツのアラトイ・イシュマエル・カルサカウ首相は、「気温上昇を1.5℃に抑えるという目標達成に向けた野心は『求められる水準からは依然として程遠い』ものの、ICJの勧告的意見は気候危機に対処するグローバルな取り組みに寄与することを明確にし、一層の協力を生み出すことができる」と語りました。
カルサカウ首相は、決議文の最終版は長きにわたる協議と審議の成果であると述べ、この取り組みのきっかけとなった南太平洋の若い法学生たちが果たした重要な役割についても強調しました。
「特効薬」は存在しない
「コア・グループや幅広い国連加盟国との活発かつ積極的な交渉は、この取り組みの重要性のみならず、気候危機対策に取り組みたいという総意の表れでもありました」カルサカウ首相はこのように述べました。
「これは特効薬ではありませんが、パリ協定に基づいてこれまでよりもはるかに高い野心を促すなど、気候変動、気候行動に重要な貢献を果たす可能性があります」カルサカウ首相は、気候変動に関する2015年の国際協定に言及しつつ、このように付け加えました。
「画期的な決議」
ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は、「画期的な決議」を歓迎する声明を発表しました。
ターク高等弁務官は、ICJの勧告的意見が「地球温暖化を止め、気候による人権侵害を抑制・是正する上で必要な、緊急で、大胆で、公平な気候行動を進展させる重要な契機となる可能性がある」と述べました。
また、決議が「将来世代のために今行動を起こすことの重要性を明確に認めている」ことも歓迎しました。
ターク高等弁務官は、自身が率いる国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)では、気候変動が人権に及ぼす影響を広範囲に記録しており、各国やその他のアクターが負う人権上の義務を提示していると述べました。
「各国は、気候変動を緩和し、これに適応し、そしてそれに伴う損失と損害に対処する義務を負っています。国際司法裁判所におけるこのような非常に重要な手続きを通じて、これまでに得られた知見を共有することを期待しています」ターク高等弁務官はこのように述べました。
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