国境を越えて:なぜ新たな「公海」条約が世界にとって不可欠なのか(UN News 記事・日本語訳)
2023年07月25日
2023年6月19日 ― 国連の193の加盟国は本日、法的拘束力のある画期的な海洋生物多様性協定を採択しました。本協定は、地球上の海洋の3分の2を占める、国境を越える公海の保全と持続可能性に向けたうねりを共同で作り出すために20年近くにわたって行われた激しい交渉を経て採択されたものです。本記事では、この協定が世界にとって不可欠な理由について、重要な5つのポイントを紹介します。
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1 国境を越えた新たな保護
各国は、国家管轄権内にある水路の保全と持続可能な利用に対して責任を負っていますが、このたび公海も、汚染や持続不可能な漁業活動といった破壊的な動きから保護されることとなりました。
国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)に関する政府間会議で採択された「公海」条約は、現在および将来の世代のために、国連海洋法条約に従って海洋を管理することを目指しています。
新たな条約は75条からなり、海洋環境を保護、管理し、その責任ある利用を確保するとともに、海洋生態系の完全性を維持し、海洋生物多様性固有の価値を保護することを目的としています。
「海洋は私たちの地球の生命線であり、今日皆様は、新たな命と希望を注ぎ込むことで、海洋に闘いの可能性を与えたのです」アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、各国の代表団に向けてこのように述べました。
2 よりきれいな海洋へ
有毒な化学物質や何百万トンものプラスチックごみが沿岸の生態系へと流入し、魚類、ウミガメ、海鳥、海洋哺乳類の命を奪い、傷つけています。そして食物連鎖に入り込むことで最終的には人に摂取されています。
2021年には、1,700万トンを超えるプラスチックが世界の海洋に流入しました。これは、海洋ごみの85%を占めています。最新の『持続可能な開発目標(SDGs)報告』によれば、流入量は2040年までに毎年2倍または3倍に増える見込みです。
国連の推計によると、何も行動を起こさなければ、2050年までに海中のプラスチック量は魚類よりも多くなる可能性があります。
今回の条約は、レジリエンス(強靱性)の強化を目指すとともに、汚染者負担の原則に基づいた条項や紛争メカニズムが盛り込まれています。
条項に基づき、締約国は、国家管轄権を超えて計画するいかなる活動についても、環境に与える潜在的な負荷を評価しなければなりません。
3 魚類資源の持続可能な管理
国連によると、世界では魚類資源の3分の1超が乱獲されています。
今回の条約では、組織能力や各国の規制枠組み・メカニズムの開発と強化を含めた、能力開発や海洋技術の技術移転の重要性について強調されています。
この中には、地域における海洋機関と漁業管理機関との提携拡大も含まれています。
4 気温を下げる
地球温暖化によって海水温が過去最高に達しており、暴風雨の頻発化・激甚化、海面上昇、沿岸陸域・帯水層の塩類化が進んでいます。
こうした喫緊の問題に対応するため、今回の条約では指針を提供しています。これには気候変動や海洋酸性化の悪影響に対処する生態系のレジリエンスを構築し、また、炭素循環機能も含め、生態系の完全性を維持・回復していく海洋管理に向けた、統合アプローチを通じた対応も含まれます。
また条約の条文では、先住民と現地コミュニティーの権利と伝統的知識、科学的研究の自由、公平・公正な利益分配の必要性も認められています。
5 「2030アジェンダ」の実現に不可欠
今回の新たな協定は、「海洋が直面している脅威に対処し、2030アジェンダを含めた海洋関連の目標とターゲットを達成する上で極めて重要です」グテーレス事務総長はこのように述べました。
こうした目標とターゲットには、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14が含まれており、とりわけ、2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減すること、また実現可能な最短時間で水産資源を回復させるため、科学的な管理計画を通じて乱獲を終わらせることを目指しています。
今回の新たな協定によって、公海と国際海底区域における極めて重要な生息地と種を保全し、持続可能な形態で管理することを目的とした、海洋保護区を含めた海域ベースの管理ツールの整備が可能となります。
条約はまた、小島嶼・内陸開発途上国が直面している特別な事情についても考慮しています。
チャバ・コロシ国連総会議長は本日、政府間会議の各国代表に向けて、このように述べました。「私たちは新たなツールを手にしました。この画期的な成果は、国家管轄権を超えた区域における海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に対する皆様の共同コミットメントの証しです。皆様は協力して、私たちの海洋をより良く管理する礎を築き、将来世代のためにその存続を確保したのです」
世界の海洋を守るための国連の取り組みの詳細は、こちらをご覧ください。
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原文(English)はこちらをご覧ください。
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