「人類は地獄の門を開けてしまった」気候連合が行動を求める中、グテーレス事務総長が警告(UN News 記事・日本語訳)
2023年10月03日
2023年9月20日 —「恐ろしい熱が恐ろしい影響をもたらしている」アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、「気候野心サミット」のためにニューヨークに集った政治家、企業、市民社会における「ファースト・ムーバーおよびドゥーワー」(先行者および実行者)たちの幅広いグローバルな連合を前に、このように述べました。
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サミットの中心となったのは、連鎖的に起こる気候関連災害を、公正で公平なエネルギー移行を通じて、手遅れになる前に阻止するための緊急の行動の呼びかけでした。
グテーレス事務総長は、国連総会と並行して開催されたサミットにおいて、政治家、企業、活動家、市民社会のリーダーたちに向けた熱のこもった演説を行い、行動を起こさないことがもたらす悲惨な結果について、厳しい警告を発しました。
異常気象が加速化する中、「人類は地獄の門を開けてしまった」と事務総長は述べ、洪水で作物が流されていく様をなすすべもなく見つめる農家の人々の姿、気温上昇によって出現する病原性の疾病、歴史的な森林火災を集団脱出する人々など、悲惨な出来事に触れました。
解決策を求める競争を
「ここでの私たちの焦点は気候問題の解決策であり、私たちの任務は至急である」と事務総長は述べました。
グテーレス事務総長は、人類が(産業革命以前と比べて)2.8℃の気温上昇に向かって進み、危険と不安定さが増している中で、気候行動は「その課題のあまりの大きさのために、小さく見えてしまっている」と警告しました。
しかし事務総長は「未来が決まったわけではない」と続け、気温上昇をできる限り1.5℃近くに抑えるというパリ協定の目標は、まだ達成可能であると指摘しました。
さらに、「ファースト・ムーバーおよびドゥーワー」(先行者および実行者)が集うハイレベル会合において、「私たちはまだ、澄んだ空気、グリーン・ジョブ、そしてすべての人々が手ごろな価格で利用できるクリーンエネルギーのある世界を築くことができる」と呼びかけました。
変革のための推進力
活動家たちは沈黙させられることを拒み、先住民は先祖の土地を守るために結集し、企業の重役たちはビジネス手法を変革しつつあります。
事務総長は、主要な排出主体に一層の責任を問う「気候連帯協定」を呼びかけるとともに、富裕国に対しては新興国がこの危機を切り抜けられるよう支援することを求めています。
「アクセラレーション・アジェンダ」は、各国政府に対して「早送りボタンを押す」よう求めていると、事務総長は付け加えました。
高まる怒り
グテーレス事務総長は、自らが引き起こしたのではない危機によって不当に影響を受けている、世界で最も貧しい国々の大半が感じている怒りを認識した上で、さらなる気候正義の必要性を説きました。
「最貧国の多くが怒りを感じるのは当然である」事務総長はこのように続け、約束された資金提供が実現されない一方、借り入れコストが途方もなく高いままであることを説明しました。
「すべての関係者は、COP28で『損失と損害基金』を稼働させなければならない」と事務総長は要請し、先進国が1,000億ドルを拠出する約束を果たし、「緑の気候基金」を補充し、気候変動適応資金を倍増させなければならないことを念押ししました。
2027年までに、すべての人々のための早期警報システムを実現することも必須です。
信頼を再構築する
「アクセラレーション・アジェンダ」はまた、企業や金融機関に対し、排出量削減計画における透明性と信頼性に焦点を当てながら、真の排出量正味ゼロに向けて乗り出すことも求めています。
「真にビジネスを行うすべての企業は、確実に排出量を削減して気候正義を実現する、公正な移行計画を立てなければならない」とグテーレス事務総長は述べました。
事務総長は、ニューヨークの会議場を去った後の行動を求めました。
「私たちは速度を上げることができるし、またそうしなければならない」と事務総長は満場の大きな喝采の中で、締めくくりました。
この呼びかけに応えるかたちで、最近「アフリカ気候サミット」を主催したケニアのウィリアム・ルト大統領は、アフリカ大陸の持つ大きな可能性について語りました。
世界の鉱物資源のおよそ30%と、膨大な生物多様性を有するアフリカ大陸は、必要とする財政支援があれば「グリーンでグローバルな製造」を大規模に行うことができます。
「アフリカは他の地域とは異なり、新規の需要を満たすのか、あるいは既存の生産能力を脱炭素化させるのかの二者択一を迫られることはない。これは元々の生産能力が非常に低いためだ」と大統領は述べ、アフリカ大陸は「完全にグリーンな産業パラダイムへと飛び越える」ことができるとしました。
気候正義
資金調達と環境正義は、(気候野心サミットでの)議論のすべてに通底するテーマでした。
リディ・ナクピル氏は、再生可能エネルギーへの移行を提唱するNGO「債務と開発に関するアジアの民衆運動」のコーディネーターです。
ナクピル氏は、「抜け道や言い訳のない」移行を実現するためには、新たな合意が必要だと述べています。2050年までに「真の排出量正味ゼロ」を達成するには、化石燃料の不拡散に関する国際条約とグローバルでの段階的廃止計画が必要なのです。
「私たちグローバルサウスの人々は、援助や支援を求めているのではない。気候変動対策資金は義務であり、歴史的かつ継続的な害や不公正に対する補償の一環である」とナクピル氏は述べ、「単に生き延びるだけでなく、子どもたちのためにより良い住処と未来を築く」権利を主張しました。
金銭だけで解決はしない
気候野心サミットに出席した先進国は、相応の負担を負う用意があることを表明しました。例えば、オーストリアのアレクサンダー・ファン・デア・ベレン大統領は、気候変動に取り組むための資金として、2023年から2026年の間に2億2,000万ユーロを追加拠出すると発表しました。
大統領は、「5,000万ユーロは、損失と損害関連のプログラムやプロジェクトを支援するために使われる」と確約しました。オーストリアはまた、「緑の気候基金」への拠出金を25%増額し、計1億6,000万ユーロを拠出します。
しかし、ファン・デア・ベレン大統領はこのようにも述べています。「私たちは金銭で気候危機を脱することはできない。自国の排出量を削減しなければならない」
オーストリアは、「排出量正味ゼロ」ターゲットの2040年までの達成を目指しています。
サミットの出席者たちはその後、特別会合を開催して、懸案の極めて重要な損失と損害の問題について議論しました。
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原文(English)はこちらをご覧ください。