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グローバル・コミュニケーション担当事務次長による寄稿(日本語訳):「戦時下で情報の誠実性をどう守るか」

2023年11月08日

メリッサ・フレミング
グローバル・コミュニケーション担当事務次長

Photo World Food Programme

2023年10月23日

私たちは、困惑の時代を生きています。「戦場の霧」は、またしてもオンラインでの憎悪や嘘の拡散を助長し、その結果、危険な誤りを引き起こし、現実世界にリアルタイムで影響を及ぼしています。情報の誠実性を守ることが、これほど説得力を持ち、緊急性を帯びることは、ほとんどありません。

私たちは、以前にも同様の事態に直面しています。ロシアによるウクライナ侵攻の初期と同じように、情報に対する需要が極めて高まっています。私たちは、毎分のようにソーシャルメディアにくぎ付けになり、ガザ地区やイスラエルにおける暴力に関する最新情報を確認しています。恐怖や不安を感じ、目をそらすことができません。

国連は、深刻な人道状況と、支援が必要なすべての民間人が直面している窮状に、極めて神経を集中しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ガザ地区に対する無制限かつ持続的な人道上のアクセスと、イスラエル人捕虜の即時かつ無条件での解放を求めています

そして私たちは、もう一つ、重大な問題について警鐘を鳴らしています。関連するヘイトスピーチや誤情報・偽情報が、すでに蔓延していて、ソーシャルメディアのフィードにあふれ、認識をゆがめ、さらなる暴力を引き起こすおそれがあるのです。特にこうした状況では、肥沃な温床に憎悪が広がります

問題の大部分は構造的なものです。デジタルプラットフォームは、このような時代にあっては、両刃の剣です。一方においては、貴重なニュース収集ツールとして、苦痛を伴うほどまでに私たちをリアルタイムで出来事へと近付けるとともに、勇敢な記者や市民ジャーナリストたちが戦争に伴う人的損失の証人となる上で役立っています。

しかし他方では、ジャーナリストやファクトチェッカーなら誰もが知るように、同じプラットフォームが同時に人々の目を欺いてもいるのです。ソーシャルメディアは長らく、虚偽の、憎悪に満ちた、扇動的なメッセージを拡散しようとする者たちにとって便利なツールであり続けています。偽情報の主体は、大半のプラットフォームのビジネスモデル、つまり挑発的なコンテンツを助長して関与を促すような、関心をつかむアルゴリズムを、悪用することに長けているのです。

このことは、ニュースを伝える際に、オンライン上に流れる動画や画像、音声を検証することが、すべての善良なニュース編集室の中心的業務になることを意味します。感情が高ぶり、欺瞞が渦巻く「戦場の霧」の中でのこうした業務は、これまで以上に困難になります。

そうした熱気を帯びた雰囲気の中では、危険な噂が勢いを増します。暗号化メッセージサービスの中で未検証の主張が飛び交い、より大きなプラットフォーム上で、より幅広い視聴者の目に触れることになります。そのようなコンテンツはそれまでに何度も転送を繰り返されているため、その出所や正確さを検証するのは困難です。

新たなツールによって、問題は一層厄介なものとなります。ビデオゲームから流用された画像、文脈を無視して投稿された過去の画像や無関係な画像といった、“よくある”フェイクだけでなく、著名な政治家やジャーナリスト、報道機関になりすましたボットが高度なフェイクを発信している例も見られます。

AI技術が、急速かつ急激に状況を変化させつつあります。ベテランのジャーナリストやファクトチェッカーでさえ、今やリアルタイムで情報を検証するのに苦労しています。危険な誤りが犯され、すでに損なわれつつある従来のニュースメディアに対する信頼性に、深刻な影響を及ぼしています。

では、どうすればよいのでしょう。

国連はかねてより、プラットフォームに対して、有害コンテンツの拡散に対する独自の防護柵の構築を強化するよう求めてきました。私たちは、欧州連合(EU)がプラットフォームに対し、デジタルサービス法の遵守を求めていること、そして一部のプラットフォームが、自ら講じている措置の概要を示してそれに応えていることを、心強く感じています。しかし、現在の取り組みが到底十分でないことは明らかです。

私たちは、常に警鐘を鳴らし続けています。状況が悪いことは、ソーシャルメディア上の誰もが理解できます。多くの人が、事態はかつてないほどに悪化しているようだ、と逸話のように語っています。しかし、プラットフォームが十分なデータを共有していないため、どれほど悪いのかは誰にもわからないのが実情です。そうした状況を、変える時が来たのです。

研究者たちは、ヘイトスピーチや誤情報・偽情報の実際の拡散状況を定量的に測定し、オンラインの危険に対抗する現在の取り組みがどの程度機能しているのか、いないのかについて評価するために、信頼できるデータにアクセスすることができなければなりません。冷静な解決策には、冷静な分析が必要なのです。

一握りの企業が、ユーザーが目にするコンテンツをコントロールするだけでなく、その企業のオペレーション方法をいつどのように私たちが知るのかまで決めてしまうのは、もはや許されることではありません。目下のところ、こうした企業は、秘密裏に行動し、自社の行いに対してすべて自分たちで決めてしまっているかたわらで莫大な利益を得ています。

状況を変えねばなりません。しかし、状況が変わるまでの間、私はすべてのソーシャルメディアユーザーに向けて、2つの緊急の呼びかけをしたいと思います。第一に、忍耐強くあってください。私たちは皆、24時間ひっきりなしの情報アップデートに慣れてしまっています。しかし、このような汚染された情報環境下では、それを維持することはできません。私たちの期待値を調整すべき時です。

第二に、用心深くあってください。私たちの多くが、恐れ、憤慨し、悲嘆に暮れており、その場の勢いで反応したくなることもあるかもしれません。しかし、往々にしてフェイクが拡散するのは、まさにフェイクがこうした感情を引き起こし、投稿内容の真偽を確認せずに私たちが共有してしまう可能性を高めるからなのです。嘘は事実よりも数倍速く伝わる、これは研究で明らかになっています。

私たちは、以前にも同様の事態に直面しています。だからこそ、それを力に変えようではありませんか。ウクライナや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックなどの最近の危機は、有害コンテンツの拡散を食い止める方法を含めて、いくつかの厳しい教訓を与えてくれました。またしても私たちの世界に暗黒の時が訪れた今こそ、それを思い出さねばなりません。

恐れ、憤慨し、悲嘆に暮れた時は、複数の独立した信頼できる情報源を参照することが重要です。しかし同じく重要なのは、すべての報道機関がニュアンスを含んだ正確な見解を示す意欲あるいは能力があるわけではないと覚えておくことです。多くの報道機関が苦しんでいることを認識してください。そして、この情報環境の誠実性のために、私たちにはできることがあるのです。「共有する前に、注意する」ということです。

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原文(English)はこちらをご覧ください。