未曽有の干ばつ緊急事態 — 求められる迅速な行動(UN News 記事・日本語訳)
2023年12月25日
2023年12月1日 — 国連の砂漠化対策チームが発表した新たな報告書によると、人間活動に起因する干ばつによって未曽有の緊急事態が発生するという憂慮すべき傾向が、過去2年間にわたってみられることが明らかになりました。
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国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催にあわせて、国連砂漠化対処条約(UNCCD)事務局が12月1日に発表した報告書『Global Drought Snapshot(世界干ばつスナップショット)』は、干ばつによって多くの生命と生活が失われている厳しい実態を写し出しています。
イブラヒム・ティヤゥUNCCD事務局長は、その事態の緊急性を強調しました。
「メディアの関心を集める他の災害とは異なり、干ばつは静かに起こり、注目されないまま進行し、人々の間でも政治的にも迅速な対応につながらないことが多いのです。
干ばつが頻発し、厳しさを増す中、貯水池の水位の低下や、農作物収量の減少、生物多様性の喪失が続くとともに飢饉が広がっているため、大きな変革が求められています」ティヤゥ事務局長は、このように述べました。
警鐘を鳴らす
報告書は、干ばつに対するレジリエンス(強靱性)を強化するためには、土地の回復と持続可能な管理が不可欠であると強調しています。
また、干ばつに強い作物の栽培、効率的な灌漑手法、土壌保全の実践といった、ネイチャーポジティブ(自然再興)な農業技法の利用を呼びかけ、各コミュニティーが干ばつによる農作物や収入への影響を軽減できるよう促しています。
効率的な水管理も、干ばつに対する世界的なレジリエンスの鍵となるもう一つの要素です。
これには、持続可能な水供給システム、保全対策、節水技術の促進に向けた投資が含まれます。
UNCCDはまた、干ばつに対する世界的なレジリエンスを築くために、防災と早期警報システムの導入を要請しました。
気象モニタリング、データ収集、リスク評価に対する投資を拡大することは、干ばつ緊急事態への迅速な対応と影響の最小化に資するとし、さらに国際協力、知識共有、環境・社会正義も呼びかけました。
スナップショットを提示する
報告書には、地理的な広がり、農業と森林、水の状況、社会的側面、排出量など、干ばつに関する重要なデータが含まれています。
例えば、干ばつの影響を受ける人々の85%が低・中所得国に暮らしていること、また、脆弱性が高いと分類されている国々に暮らす人々が洪水、干ばつ、暴風雨で命を落とす確率は、脆弱性が低いとされている国々に暮らす人々の15倍であると指摘しています。
また、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアにまたがる帯状の地帯、いわゆる中米乾燥回廊では、5年に及ぶ干ばつ、熱波、予測不能な降雨に見舞われ、120万人が食料支援を必要としていることも伝えています。
メタンを監視する
また同日、国連環境計画(UNEP)は、メタン警報・対応システム(MARS)に基づく初の調査結果を発表しました。
このシステムは、人工衛星を使ってメタンのデータを監視し、各国政府がこの強力な温室効果ガスの人為的な排出を制限できるようにするものです。メタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の80倍を超えており、今日の地球温暖化の3分の1はメタンによるものなのです。
人為的な排出とは、人間活動によって直接的または間接的に引き起こされた、または影響を受けた排出を指しています。
UNEPによると、大気中のメタン濃度は観測史上で最高水準にあり、大気汚染や人々の健康に深刻な影響を及ぼしています。
さらにUNEPの発表では、農業、廃棄物、化石燃料部門における人間活動が、世界のメタン排出量の半分超を占めています。現在の人間活動のペースが続けば、2020年から2030年までの間に最大13%上昇してしまう可能性があるとしています。しかし地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、同期間にメタン濃度を最大60%低下させなければなりません。
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原文(English)はこちらをご覧ください。