7億8,300万人が飢餓に苦しむ中、食料全体の5分の1が廃棄処分に(UN News 記事・日本語訳)
2024年04月23日
2024年3月27日 — 人類のおよそ3分の1が食料不足に直面している中、10億食分に相当する食料が毎日廃棄されていることが、国連環境計画(UNEP)がきょう発表した最新の報告書で明らかになりました。食料の約5分の1が捨てられているのです。
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UNEPの『食品廃棄指標報告2024』は、2022年の最新データをもとに、10億5,000万トンの食料が廃棄されたこと浮き彫りにしています。
小売、食品サービス、家庭レベルで消費者が入手可能な食料全体の約19%が失われたことになります。
これは、国連食糧農業機関(FAO)が発表した、収穫後から販売時点までのサプライチェーンで食料の約13%が失われているとする推計に追加される廃棄量です。
「世界的な悲劇」
「食料廃棄は、世界的な悲劇です。世界中で食料が廃棄される中、何百万もの人々が今日にも飢餓に直面することになるのです」UNEPのインガー・アンダーセン事務局長はこのように述べ、この進行中の課題は、世界経済に影響を与えるだけでなく、気候変動、生物多様性の喪失、そして汚染を深刻化させると説明しました。
世界の食料廃棄物の大半は家庭から排出されており、総量は6億3,100万トンに上りますが、これは無駄になった食料全体の最大6割に相当します。食品サービス部門と小売部門からはそれぞれ、2億9,000万トン、1億3,100万トンが排出されています。
平均すると、1人当たり年間79キログラムの食料を無駄にしています。これは、飢餓の影響を受けている世界中すべての人々の、毎日1.3食分に相当する、と報告書の執筆者たちは強調しています。
「豊かな国」だけの問題ではない
この問題は、裕福な国々に限った話ではありません。『食品廃棄指標報告2021』が発表されてからデータの対象範囲が2倍近くになって以降、豊かな国々と貧しい国々との間の差は、さらに縮まっています。
高所得国、高中所得国、低中所得国の家庭から排出される食料廃棄物の平均量は、年間1人当たりで7キログラムの差しかありません。
都市部と農村部の差の方が、大きくなっています。
例えば、中所得国の農村部では、全般に廃棄量が少なくなっています。考えられる理由の一つは、農村部では、生ごみをペットフード、動物飼料、家庭での堆肥化にリサイクルしていることです。
報告書は、都市部における食料廃棄物の削減と堆肥化の強化に重点的に取り組むよう提言しています。
廃棄物と気候変動
『食品廃棄指標報告2024』から、平均気温と食料廃棄水準との間に、直接的な相関関係があることが分かりました。
気温が高い国ほど、家庭での1人当たりの食料廃棄量が多いとみられており、これには、可食部の少ない生鮮食品の消費量の増加と、しっかりとした冷蔵・保存対策の不足が要因となっている可能性があります。
季節的な気温上昇、猛暑、干ばつによって、食料を安全に貯蔵、加工、輸送、販売することがますます困難になり、大量の食料廃棄や食品ロスにつながることが多くなっているのです。
食品ロスや食料廃棄は世界の温室効果ガス排出量の最大1割を占めており、これは航空部門の総排出量の5倍近くに相当するため、UNEPの専門家は、食料廃棄に伴う排出量の削減が不可欠だと考えています。
希望への「糧」
報告書は、楽観できる余地もあることを示唆しています。食料廃棄を削減し、気候ストレスや水ストレスへの影響を軽減するための官民パートナーシップが、あらゆるレベルの政府で着実に受け入れられつつあります。
その例として、日本と英国はそれぞれ18%と31%の削減を達成しており、食料が適切に分配されれば大きな変化を起こすことが可能であることを示しています。
3月30日の「ごみゼロ国際デー」に先立って発表されたUNEPの『食品廃棄指標報告』は、英国の気候行動NGOであるWRAPとの共同執筆によるものです。
報告書は、小売・消費者レベルでの食料廃棄に関する最も正確な世界推計を提示しており、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3「2030年までに食料廃棄を半減させる」に沿って、データ収集の改善とベストプラクティスについてのガイダンスを各国に提供しています。
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原文(English)はこちらをご覧ください。
ごみゼロ国際デー(3月30日)に寄せる アントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージはこちら。