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ドミニカ国で再生可能エネルギー100%を実現するための答えは、地下にある?(UN News 記事・日本語訳)

2024年05月29日

ドミニカのロゾー渓谷にある地熱エネルギー管 © UNDP/ Zaimis Olmos

2024年4月30日 — 自国のすべての電力を再生可能エネルギーで賄えるよう着実に進展を遂げている国は、少数ながらも増えつつあります。カリブ海東部に位置するドミニカ国では、こうした先駆者たちに仲間入りし、小島嶼開発途上国(SIDS)の中で、エネルギー生産に化石燃料を使用しない最初の国になろうとしています。

このような心躍るような展望をドミニカにもらたしているのが、地熱エネルギーです。地熱には、風力や太陽光につきものである、間欠性の問題がありません。言い換えると、地熱は昼夜を問わず安定したエネルギーを供給できます。また、地上の土地などの不動産を占めることがないため、ロゾー渓谷を手つかずの状態に保つことができるのです。

大半のSIDS諸国では、発電や輸送を化石燃料の輸入に依存しており、そのため、資源に大きな負荷がかかっているだけでなく、国際燃料市場の変動にさらされ、国のエネルギー安全保障が脅かされています。

しかしドミニカでは、首都ロゾーから車でほど近い人気観光地、ロゾー渓谷の地下に、巨大なクリーン電力源が眠っています。それはクリーンかつ完全に再生可能であり、政府が余剰電力を近隣の島々に売却できるほど膨大なエネルギーをもたらす可能性があります。

高圧を利用した、期待が高まるプロジェクト

地球の地熱によっておよそ250°Cまで熱された水の溜まり場である「地熱貯留層」に突き当たるところまで、パイプを地下深く掘り下げます。ドミニカは火山の尾根上に位置しているため、比較的地表に近いところに地熱が存在しています。パイプが貯留層に到達すると、高圧によって熱水が地表へと送られ、地上で蒸気に変わり、それがタービンを動かして発電します。

国有企業であるドミニカ地熱開発公社の責任者を務めるフレッド・ジョン氏は、次のように述べています。「私たちは、ロゾー渓谷の地下約1,000メートルのところに素晴らしい地熱貯留層を発見しました。井戸を2本掘り、一方は熱水を汲み上げ、もう一方は貯留層に戻すという、閉ループシステムを造成しました。私たちが選択したのは、環境に最も配慮した、最高クラスのテクノロジーです」

ドミニカ政府では数十年前から、地熱が暮らしに大きな変化をもたらしうるものであり、国の電力コストを大幅に削減できると確信していました。同国は現在、電源として主に高価な輸入ディーゼルに依存し、それを水力発電と少量の風力・太陽光発電で補完している状況です。

ドミニカの地熱発電所 © UNDP/ Zaimis Olmos

実現に向けた変革の数十年

ビンス・ヘンダーソン外務・国際ビジネス・貿易・エネルギー大臣は、次のように語っています。「ドミニカは、1969年というかなり以前から、このエネルギー源を追求してきました。国連の支援を受けて実施した調査で、島の電力を賄える潜在力があることが判明したからです。1974年に地熱開発公社を設立して以降、この潜在力を実現させる野心を抱き続けてきたのです」

ドミニカ政府が試験的な地熱井の掘削に必要な資金を確保するまでに40年近くを要しましたが、その結果、地熱発電は商業的に採算が取れ、近隣のマルティニーク島やグアドループ島にも販売できることが確認されました。

「地熱発電の開発には多額の費用がかかり、離島国家にとってはなおさらです。幸いにも私たちは、ここに至るまでに助成金と譲許的融資の両方を得ることができました」ヘンダーソン大臣は、カリブ開発銀行、米州開発銀行、世界銀行やニュージーランド、英国、米国政府など、さまざまなドナーからの資金援助に言及しつつ、最後にこう付け加えました。「しかし、国際社会が本気で取り組むのであれば、助成金の形で、いくらかの先行投資はあるべきです」

ドミニカ政府では、この発電所で生産される地熱エネルギーによって、今後2年以内に島の電力を賄えると確信しています。この先待つ2年という時間は、プロジェクトの立ち上げまでに何十年も苦闘したことを考えれば、短いものです。

ジョン氏は、こう語っています。「これは、この国の経済を変革する素晴らしい機会です。その第一歩は、すべての人々にとって電気代が安くなることであり、それ自体が大きな効果をもたらします。次に、電力を販売する段階に入れば、それがドミニカに収入をもたらし、島全体の経済成長が実現するのです」

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原文(English)はこちらをご覧ください。