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安全保障理事会は、団結して平和を推進する「努力を惜しんではならない」(UN News 記事・日本語訳)

2024年10月22日

勲章授与式における、南スーダンに派遣されたベトナムの女性国連平和維持部隊員の隊員ら(資料写真)©UNMISS

2024925 平和が「決して自動的」に訪れるわけではない世界では、国連安全保障理事会(安保理)によるリーダーシップが不可欠であり、行き詰まりに直面している安保理は団結するより良い方法を見つけなればなりません。アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、このように述べました

グテーレス事務総長は、「平和のためのリーダーシップ」に関する安全保障理事会ハイレベル討論会でこのように演説しました。この討論会は、国連憲章の原則への支持を強化し、9月22日に採択された画期的な「未来のための協定」に盛り込まれた改革への呼びかけをさらに推し進めることを目的としていました。

グテーレス事務総長は、国家間の分断が深まり不信が高まっている中で、国際法と憲章の「度重なる違反」とともに不処罰が広がっている、とニューヨークの安保理会議場で世界の指導者らと上級代表らに向けて語りました。

「平和のためのリーダーシップとは、世界的な緊張を緩和し、世界各地であまりにも多くの苦難をもたらしている紛争への対応を促進するために、安保理が、意味のある形で行動することを確実にするものです」

安保理が団結すれば、平和のために非常に大きな変化をもたらすことができます。安保理が分断されれば、それは叶わないのです」グテーレス事務総長はこのように続けました。

事務総長は、拒否権を行使する常任理事国間の分断を主な理由として、行動が取とられないことを踏まえると、理事国が「共通点を見いだすべく協力する努力を惜しまない」ことが「不可欠である」と述べました。

平和維持の成功事例

事務総長は、ガザ地区とウクライナでの戦争をめぐる不作為がある一方で、約7万人の要員が参加する11の国連平和維持活動の監督から、アフリカ連合(AU)が主導する支援オペレーションを規定した画期的な決議に至るまで、安保理が結束して効果的に行動した顕著な例もあると語りました。

これらの事例は、平和を築くことが可能だと証明しています」と述べ、そこにはガザ地区、ウクライナ、スーダンも含まれると事務総長は述べました。

平和に向けた前進のために唯一望むことは、理事国間の積極的な協調と団結です。今日、私はすべての理事国に対し、この重大な責任と国連憲章の約束を果たすよう呼びかけます。安保理を弱体化させるのではなく成功するよう貢献するのです」グテーレス事務総長は、このように続けました。

赤十字:安保理は言葉を行動へと移さなければならない

ミリアナ・スポリアリッチ赤十字国際委員会(ICRC)総裁は、安保理の成功は、安保理が世界的な分断や、「味方か敵か」という政治の根本のとらえ方をどのように乗り越えられるかによって評価されると述べました。

このような違いを超えるにはリーダーシップが必要です。しかし、残念なことに、集団的な不作為と、大胆になった戦争当事者が法的義務を軽んじる現状の容認とによって、人の命は同等の価値をもつという事実が無視され、人間性を天秤にかけるための新しい境界点を生み出そうとしています。

国際法は「取引の対象ではない」

国際人道法は、分断を乗り越えて分極化から平和への道を拓くために作られました。これらの法、すなわち皆様の国々が策定して批准した条約は、自制を強いるものだ、と総裁は付け加えました。

「ジュネーブ条約の下では、敵でさえも人道的に扱われなければなりません。[国際人道法]は取引の対象ではないのです。戦争は、法の条文と精神を守りながら戦い、勝つことができるということを、皆様の軍の司令官たちに理解させてほしいのです」と総裁は述べました。

総裁は、全理事国が、紛争当事者に対して国際人道法を遵守するよう組織的に念押ししていることを歓迎する一方で、「私たちはそれを超えて、真の意義が確実に守られるようにしなければなりません」と訴えました。

これは、民間人の被害を最小限に抑えるためのあらゆる実行可能な予防措置を講じること、容認される比例性の原則の計算を偽って説明しないこと、そして「たとえ敵がそうしなくても」戦争のルールを尊重することを意味します。

総裁は、非人道的な行いは暴力を助長する一方、人道を守ることはエスカレーションの緩和につながると述べ、国家と軍は、国際人道法を、戦争のためだけでなく長期的な安定を可能にする勝利を収めるために、自らの防衛戦略に完全に組み込まなければならないと指摘しました。

5日間にわたる安全通行作戦期間中に、ウクライナ・マリウポリのアゾフスタリ製鉄所地区を離れる民間人たち© ICRC

安保理へのメッセージ:「電話をかけてください」

総裁は、理事会は国際人道法を支持するという自身の言葉を行動に移していることを、世界に証明しなければならないと述べました。

「ジュネーブ条約が人命を救う平和のための手段であるかどうかを決めるのは皆様です」総裁はこのように語りました。

「同盟国が民間人を標的にしている際には、その同盟国に電話をかけて止めるように求めてください。同盟国が戦争の抑留者や捕虜に対するICRCの訪問を拒否する際には、電話をかけて訪問に応じるように求めてください。同盟国が戦争法規を見る影もないほどに逸脱している際は、それを止めるための手段を講じてください」

国際人道法は、イエメンにおける何千もの抑留者やナイジェリアのチボクにおける女児たちの解放、そしてICRCがハルツームにおいて孤児を安全な場所に護送する取り組みを可能にするなど、人命を救っています。

「機能していないのは法ではなく、法を執行する意思です。ジュネーブ条約を守ることは、自国の核心的な利益になります。[国際人道法]は平和への道筋を提供してくれるものであり、国際人道法が貴国の政治的な優先事項だと表明してください」総裁はこのように述べました。

ジョンソン・サーリーフ リベリア元大統領:平和のためのリーダーシップが「著しく欠如している」

リベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ元大統領は、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が設立した「エルダーズ・グループ」の一員として、安保理で演説しました。

「平和の維持はすべての指導者にとって第一の責務であるべきですが、世界が切実に必要としている平和のためのリーダーシップが著しく欠如しています」と元大統領は述べ、3つの問題に対して行動を起こすよう呼びかけました。

元大統領は、第一に指導者たちは一貫して国際法を守らなければならないと述べ、ウクライナからガザ地区やその他の地域に至るまで、戦争地帯における組織的な違反事例が増加していること、残虐行為を犯した者が処罰を受けていないこと、そして影響力のある国々が紛争に介入して戦争当事者に兵器を移転し、侵略をあおっていることを指摘しました。

「安保理の常任理事国の一部を含む大国が、国際的な規範を意図的に無視しています」と元大統領は強調し、ウクライナに対する侵略戦争は国連憲章の明白な違反であり、安保理が機能不全に陥って対応できていないと付け加えました。

元大統領は、一部の理事国が国際司法裁判所ICJ)の判決をないがしろにしているとともに、国際刑事裁判所とその職員を脅かしている事例を指摘し、「国際的な司法機関が支持を受け、判決が守られることが極めて重要です。説明責任を問われるのが誰かにかかわらず、国際法は一貫して適用されなければなりません」と語りました。

国際の平和と安全の維持に関する安保理会合で演説するエレン・ジョンソン・サーリーフ リベリア元大統領©UN Photo/Evan Schneider

包摂的な平和構築

第二に、紛争解決と平和構築は真に包摂的なものでなければならないとジョンソン・サーリーフ元大統領は続けました。

来年は、安保理が決議第1325号を採択してから25年目を迎えます。同決議は、平和と安全において女性が担うべき極めて重要な役割を認識したものですが、それでも依然として平和と安全に最も影響を与える決定は、主に男性によって、場合によっては男性のみで下され、紛争の発端となったのと同じ男性が下す場合も多くあります。

そのためエルダーズは、平和創造と平和構築のプロセスに上級レベルの女性参加者を加えることを義務化するよう呼びかけています。

「世界はあなた方の行動を求めている」

「最後に、指導者である皆様方は、国際の平和と安全のアーキテクチャに対する信頼を取り戻さなければなりません」と元大統領は述べ、14年にわたる内戦の後、平和維持活動が平和の確保に極めて重要な役割を果たしたリベリアでの例など、国連がその平和維持活動によって世界各地で知られていることを強調しました。

残念なことに、平和維持がかつてないほどに必要とされている時にそれが損なわれつつあると元大統領は続けました。世界が紛争や世界的なパンデミックといった脅威に直面し、国連にリーダーシップを期待するとき、真っ先にその期待が向かうのは安保理なのだとジョンソン・サーリーフ元大統領は語りました。

「しかし、安保理は機能していないと広く受け止められています。改革が急務でありながら、大幅に遅れています。安保理は1945年の遺物であってはならず、2025年やその先の世界にふさわしいものでなければなりません」と元大統領は語り、先日採択された「未来のための協定」の機運に乗じるべく、改革プロセスを開始するとともに、より代表的で効果的な安保理に向けた交渉を推進する連携をエルダーズは呼びかけていることを付け加えました。

「言い訳をしている時間は過ぎました。今こそ皆様方がリーダーシップを発揮する時です。世界は皆様方の行動を求めています。私たちを失望させないでください」元大統領はこのように述べました。

議長声明

会合の冒頭、安保理は会合のテーマに関する議長声明を採択し、9月の安保理議長国であるスロベニアのロベルト・ゴロブ首相がその全文を読み上げました。

安保理は特に、武力紛争の全当事者に対し、人道支援要員を含む民間人を尊重して保護するために、国際人道法に基づく義務を完全に遵守するよう要請しました。安保理はまた、違反行為に対する説明責任へのコミットメントを改めて表明しました。

スロベニア:「世界中の人々が今日このコミットメントを聞きたいと願っている」

自国の代表として声明を発表したゴロブ首相は、共通の価値観や原則よりも国益が優先されていることがあまりに多すぎると語りました。

「私たち皆が共通の利益を優先する取り組みを強化すれば、世界はより良い場所になるでしょう。世界中の人々が今日このコミットメントを私たちから聞きたいと願っているのです」首相はこのように述べました。

首相は、ユーゴスラビア紛争の際に、安保理は、国際法廷を通じた説明責任のメカニズムを設立する決議を採択する意欲があり、実際に決議を採択できたことを振り返り、他方で今日では、多くの紛争で同様の残虐行為が起こっていると指摘しました。

首相は「残念なことに、安保理が同様の決議を採択するとは考えられそうにありません」と語り、今日の世界にふさわしい効果的で適切な安保理の構築に投資すべく努力しなければならないと付け加えました。

国際の平和と安全の維持に関する安保理会合で演説する英国のキア・スターマー首相(左)©UN Photo/Manuel Elías

英国のスターマー首相:安保理はかつてないほど重要

中東、ウクライナ、スーダンで紛争が深刻化するにつれ、「世界は、安保理に対してかつてないほど、平和のためのリーダーシップを発揮することを期待しており」、集団安全保障を維持し、脆弱な民間人を保護することを求めていると英国のキア・スターマー首相は述べました。

自身の党が7月に選挙で勝利を収めて以来、初めてとなる国連での主要な演説の中で、首相は、英国が理事会の常任理事国の一員として「常にその役割を十分に果たしていく」ことを約束しました。

首相は、理事国に対し、暴力の連鎖を断ち切る政治的な解決策を追求するよう要請し、ガザ地区の紛争における軍事的な解決策はないと指摘しました。

首相は、ロシアがウクライナで民間人に対する爆撃を続けていることを挙げ、「ロシアがどうしてこの建物に顔を出せるのか不思議に思います(中略)彼らは国連憲章を守るためにここにいますが、その国連憲章は、人間の尊厳を謳っており、それは自国民をひき肉にするための肉片のように扱うことではありません」と語りました。

中国:国連は神聖な使命を担っている

中国の王毅外交部長は、平和は人類が心底から願うものであり続けているが、紛争や冷戦思考の再来によって、そこに至る道のりはまだ長いと述べました。

外交部長は、「国連は、『剣を打って鋤の刃にする』(争いを止めて平和をもたらす)神聖な使命を負っています」と述べ、中国が国連憲章と領土保全を遵守する和平案を提案したことに言及しました。

外交部長は、ガザ地区で継続中の戦争も含め、停戦と関連決議の完全な履行を最優先事項として、安保理がその責任を果たすために立ち上がるべきであると述べました。そして、持続可能な開発への支援や戦争の根本原因の根絶を含めた、現在の紛争の和平に向けた取り組みにおける中国の役割を強調しました。

米国:国連は「今この時に対応するために」変革を遂げるべき

米国のリンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使は、世界はイスラエル、ガザ地区、レバノン、ハイチ、スーダンや他の地域における現在の課題への最良の対応について、国連が重要な役割を果たしたリベリアの平和への道のりから学ぶことができるとした一方で、国際システムは不十分であり、人々が不満を抱くのも当然だと述べました。

「世界における国連の役割はかつてないほどに重要となっていますが、問題点もあります。国連は、変革を遂げて初めて、今この時に対応できるのです」と大使は語り、米国政府が最近提出した安保理改革案について言及しました。

大使は、女性と女児に影響を及ぼすものを含め、人道危機に対処するために一層協力しなければならないと述べ、この点において民間セクターとその他の主体が果たすべき役割があると指摘しました。

ウクライナでのロシアに対する代理戦争で西側諸国が勝つことは「不可能」

ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使は、1962年のキューバ危機以来、世界がこれほどまで全面戦争に近づいたことはないことを指摘し、この状況を生み出したのは、「ウクライナで反ロシア的な取り組みを続けるために、自らをロシアとの戦争により深く引きずり込んでいる」米国と北大西洋条約機構(NATO)加盟国だとして、両者を非難しました。

次席大使は、NATOが東南アジア諸国連合(ASEAN)の地域的な同盟を崩壊させる狙いで、オーストラリアとのAUKUSパートナーシップなどの代替的な同盟を通じてアジア太平洋地域に足がかりを得ようとしていると非難しました。

また、西側諸国は、ロシアと中国を抑止しようと「主に自らの設計によって構築したグローバリゼーションのシステム」を弱体化させてしまったと語りました。

ポリャンスキー次席大使は、ウクライナでのロシアに対する西側の「代理戦争」が世界全体に及ぼす危険性について警鐘を鳴らし、強力で核保有国でもあるロシアに軍事的に勝利することは「基本的に不可能」だと述べました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。