「気候危機は正念場を迎えている」と国連の『排出ギャップ報告書2024』が警告(UN News 記事・日本語訳)
2024年11月08日
2024年10月24日 —温室効果ガスの年間排出量が過去最高を記録する中で、気温の破滅的な上昇を防ぎ気候変動による最悪の影響を回避するためには、緊急行動を起こさなければならない ― 国連環境計画(UNEP)が本日発表した新たな報告書はこのように述べています。
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端的に言えば、各国は直ちに排出量を削減しなければならない、と国連の『排出ギャップ報告書2024』は指摘しています。
「気候変動の正念場を迎えている」とUNEPのインガー・アンダーセン事務局長は述べています。
「次回の気候変動に関する誓約を待つことなく今すぐに、これまでにない規模とペースで世界的に動員し始める必要があります」
そうしなければ、気候変動に関するパリ協定で設定された、気温上昇を1.5℃に抑えるという目標は「間もなく息絶え、2℃を大幅に下回る数値に抑えるという目標も、集中治療室に入ることになるでしょう」と事務局長は警告しています。
気候目標が消滅する可能性
コロンビアのカリで開催中の国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)で発表されたこの報告書は、現在の各国のコミットメントに基づいて世界の排出量がたどっている推移と、2015年の気候変動に関するパリ協定で定められた気温目標に沿って温暖化を2℃を大きく下回る数値に抑え、1.5℃の目標を追求するために取るべき推移とのギャップを追跡しています。
報告書によると、次回の「自国が決定する貢献(NDC)」で、各国が共に温室効果ガスの年間排出量を全体で2030年までに42%、そして2035年までに57%削減することを約束し、それを迅速な行動で支えない限り、1.5℃の目標は数年以内に達成不可能になるでしょう。
各国が自主的に決定した貢献は、排出量を削減するための措置や干ばつ、洪水、異常気象など気候変動による影響に適応するための措置を提示し、必要な資金を確保するものであり、5年ごとに計画が更新されます。計画の次回の更新は、ブラジルで開催される国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)に先立って2025年前半に行われる予定です。
「地球規模の綱渡り」
温室効果ガスの排出量を劇的に削減しなければ、世界は破滅的な3.1℃という気温上昇を避けられない可能性がある ― 各国政府が約束を十分に果たせていない状況下で発表されたこの報告書は、このように述べています。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、排出ギャップは抽象的な概念ではないと言います。実際のところ、排出量の増加と頻発化・激甚化する気候関連災害との間には直接的な因果関係があります。
「私たちは地球規模の綱渡りをしながら よろめいています。指導者たちが排出ギャップを埋めるのか、それとも気候災害にまっしぐらに突き進み、最も貧しい人々と最も脆弱な立場に置かれた人々が最も苦しむのか、そのどちらかです」事務総長はビデオメッセージの中で、このように警告しています。
手の届くテクノロジーが助けに
今年11月にアゼルバイジャンのバクーで開幕する国連の気候会議COP29を、新たな野心的な国別計画についての詳細な議論の出発点とすべきであり、COP29は「各国の新たな国別気候行動計画の来年の提出に向け、開始の時を告げるものだ」と事務総長は述べました。
「各国政府はこれらの計画を1.5℃目標に整合させることで合意しています」
つまり、各国政府がすべての温室効果ガス排出量を削減し、経済全体にわたりあらゆる部門での進展を後押ししなければならないことを意味すると事務総長は述べ、世界全体の排出量のおよそ80%を占める経済大国のG20諸国がこのプロセスを主導するよう要請しました。
グテーレス事務総長は、希望はあると強調しています。「手の届く価格の既存のテクノロジ―を活用することによって、気温上昇を1.5℃に抑えるため2030年までに、そして2035年までに必要な排出量の削減を達成することは可能だ、と本日発表された報告書は示していますが、それは野心と支援を急拡大した場合に限られます」事務総長はこのように述べています。
クリーンエネルギーは軌道を変えられる
報告書では、二酸化炭素排出量を2030年までに最大31ギガトン(2023年に報告された排出量の約52%に相当)、2035年までに41ギガトン削減すれば、両年までの1.5℃の目標を達成できる大きな可能性が示されています。
太陽光発電および風力エネルギーの利用を促進することで、2030年までに総削減量の27%、2035年までに38%貢献できる可能性があります。さらに、森林保全によって、両年までに必要な削減量の約20%を賄うことができます。
その他の効果的な方策にはエネルギー効率の向上、幅広い部門の電化、さらには建物、輸送、工業における化石燃料からの移行が含まれる、と報告書は述べています。
しかし、これらの可能性のほんの一部を実現するだけでも、前例のない国際協力と各国政府による包括的なアプローチが必要であり、トレードオフを最小限に抑えながら社会経済的および環境面での利益の最大化に注力することが求められるとしています。
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原文(English)はこちらをご覧ください。