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気候危機:2025年に注意すべき5つのこと(UN News 記事・日本語訳)

2025年01月21日

© UNICEF/Truong Viet Hung

執筆者:コナー・レノン

20241229日 — ブラジル・アマゾンの都市ベレンは、202511月に近年で最も重要な国連の気候会議が開催されることで、気候危機に対処する世界的な取り組みの中心地となります。

しかし今後の数年間にも、膨大なプラスチック汚染への対処から、よりクリーンな世界経済への移行に向けた資金調達に至るまで、気候に関連したいくつかの課題で重要な前進を遂げるチャンスが数多くあります。

11.5℃目標を維持できるのか?

1.5℃目標を維持しよう(“Keep 1.5 alive”)」は、国連が数年来掲げてきたスローガンであり、世界の平均気温の上昇が産業革命以前の水準と比べて1.5℃を超えないようにするという目標を指しています。科学的コンセンサスでは、もし行動を起こさなければ、とりわけ海面上昇によって海の下に消えてしまう可能性のある島嶼開発途上国など、いわゆる「最前線にある国々」に壊滅的な結果がもたらされることが示されています。

海水による浸食から太平洋の島国ツバルを守る土嚢に腰掛け、釣りをする男性© UNICEF/Lasse Bak Mejlvang

2025年1110日から21日にかけて開催予定の国連気候変動枠組条約第30回締約国会合(COP30)では、気候変動の緩和(すなわち、気温上昇の原因となる温室効果ガスの排出量を削減するための行動や政策)が重要な焦点となりそうです。

世界各国は、目標を上積みし、より野心的な温室効果ガス削減の約束を携えて参加することになります。これは、既存の誓約は気温を下げるという点でまったく不十分であるという認識であると同時に、2015年のCOPパリ会議で加盟国が署名した合意の一部でもあります(各国は、5年ごとに約束を「引き上げる」ことを期待されています。前回それが行われたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより1年遅れで2021年に開催されたCOPグラスゴー会議でした。)

2.自然を守るということ

ブラジル・アマゾンの熱帯雨林地域でCOP30が開催されることは、象徴的な意義を持っています。それは、環境を保護する国際的な取り組みの黎明期を思い起こさせます。1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された極めて重要な「地球サミット」は、気候変動、生物多様性、砂漠化に関する3つの環境条約の成立につながりました。

インドのマハーラーシュトラ州で、木の枝に止まるオウム© Unsplash/Sreenivas

今回の開催地はまた、気候危機において自然が果たすべき役割も強調しています。熱帯雨林は、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して貯蔵し、大気に流入して温暖化を引き起こすのを防ぐ、巨大な「炭素吸収源」なのです。

残念ながら、熱帯雨林やその他の「自然に基づいた解決策」は、広大な土地を荒廃させている違法伐採といった人為的な開発による脅威に直面しています。国連は、2月にローマで再開される予定の生物多様性に関する協議で、2024年に開始された熱帯雨林や他の生態系の保護を改善する取り組みを継続する予定です。

3.誰が費用を負担するのか?

資金調達は国際的な気候変動交渉において、長年の難題となっています。開発途上国は自分たちが化石燃料から脱却し、クリーンなエネルギー源で経済を活性化させるようなプロジェクトやイニシアチブに対して、富裕国がはるかに多くの資金を拠出すべきと主張しています。一方で富裕国は、今や世界最大の温室効果ガス排出国である中国をはじめ急速に経済成長を遂げている国々も、それに応じた負担分を支払うべきだと反発しています。

アゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29で化石燃料に抗議する活動家たち© UNFCCC/Habib Samadov

アゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29ではある種の突破口が開かれ、途上国に提供される気候変動対策資金を2035年までに3倍にし、年間3,000億ドルに増額する合意が採択されました。この取り決めは前進の確かな一歩ですが、最終的な合計金額は、途上国の危機への適応において気候の専門家たちが必要として挙げている13,000億ドルをはるかに下回っています。

資金調達に関しては、2025年の6月末にスペインで開催されるサミットでさらなる前進が期待されています。開発資金国際会議は10年に一度しか開催されませんが、2025年の会議は国際金融アーキテクチャを抜本的に改革する機会だと言われています。環境と気候に関する懸念が提起され、環境課税、カーボンプライシング、補助金といった潜在的な解決策がすべて議題に上ることになります。

4.法律を制定する

2024年12月に国際司法裁判所(ICJ)が気候変動を注視しその動きは国際法に基づく各国の法的義務をめぐる画期的な瞬間として歓迎されました。

バヌアツは、気候変動によってさらに悪化している台風などの破壊的な異常気象に頻繁に見舞われている© UNDP/Silke von Brockhausen

気候危機に対してとりわけ脆弱な立場に置かれている太平洋の島嶼国バヌアツは、気候変動に関する各国の義務を明確にし今後の司法手続きに情報提供するために、ICJに対して勧告的な見解を出すよう求めました。

バヌアツをはじめとする太平洋島嶼国、中国や米国、日本を含む主要経済国など、96カ国と11の地域機関が、2週間にわたって法廷での聴会に参加しました。

ICJは、この問題に関する勧告的意見を提出する前に、数カ月間にわたり審議を行う予定です。この勧告的意見に拘束力はありませんが、今後の国際気候法の指針となることが期待されています。

5.プラスチック汚染について

世界に蔓延するプラスチック汚染に対処するために国連が招集した会合は、韓国の釜山での交渉で合意に近づきました。

2024年11月の釜山での会合でいくつかの重要な進展が見られましたが、これは、海洋環境内も含めたプラスチック汚染に関して国際的な法的拘束力のある文書を求めた2022年の国連環境総会決議を受けて行われた5回目の交渉となります。

化学物質の問題も含めたプラスチック製品、持続可能な生産と消費、そして資金調達という3つの重要分野での合意について、意見の隔たりを解決することが必要です。

インドでリサイクル用に収集されたプラスチックボトル  ©UNDP India

加盟国は現在、協議の再開前に各国の相違点に対する政治的な解決策を見い出すとともに、プラスチックのライフサイクル全体に対応し、プラスチック汚染をなくす世界的気運を高める最終合意に達する責務を負っています。

国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、このように述べています。「世界が依然としてプラスチック汚染を終わらせることを望み、求めていることは明らかです。私たちは、私たちの潜在能力を下回るような打撃ではなく、この問題に大きな打撃を与えるような文書を確実に作り上げる必要があるのです。私はすべての加盟国に対し、積極的に踏み出すよう呼びかけます」

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原文(English)はこちらをご覧ください。