グローバル・コミュニケーション担当事務次長による寄稿(日本語訳):「メタ社の決定は、偽情報や憎悪を広める者たちに力を与える」
2025年03月12日
メリッサ・フレミング
グローバル・コミュニケーション担当事務次長
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2025年1月11日
信頼性と安全性のための対策を後退させるというメタ社の最近の発表は、私たちの世界に計り知れない害をもたらすことになるでしょう。
憎悪に満ちたコンテンツが波のように押し寄せ、オンラインおよびオフラインでのハラスメントや暴力の急増を引き起こす可能性が高くあります。これは、「より多くの言論」を可能にするどころか、実際には言論や参加を封じ、市民空間を狭め、情報へのアクセスを縮小させることになります。ソーシャルメディアの利用者たちは、事実に基づいた正確な情報にアクセスすることが、より困難になるでしょう。
訓練を受けた、特定の党派に偏らない倫理的なファクトチェッカーを排除し、ユーザーにその取り締まりを委ねるのは場当たり的であり、しばしば緩慢で信頼性にも欠けます。
ノーベル平和賞の受賞者であるマリア・レッサ氏は、メタ社の決定が意味するのは、ジャーナリズムと民主主義、そしてソーシャルメディアの利用者たちにとって「極めて危険な時代が待ち受けている」ということだとして、それは「事実なき世界」を招く可能性があると付け加えました。
より安全なオンライン空間を創出するための取り組みは検閲に等しいとするその主張は、不正確であるだけでなく、危険でもあります。規制を欠いた情報空間は、人々を沈黙させ、人々を標的にさせてしまうことがあり、そして多くの場合、それは最も脆弱な立場に置かれ社会から疎外された人々なのです。
これは言論の自由を弱体化させます。言論の自由が活気づくのは、多様な声が聞かれる時であり、憎悪や偽情報が増幅される時ではありません。
すでに不安定な状況の中で蔓延している偽情報と憎悪のキャンペーンの影響を、私たちはとても懸念しています。私たちは、とりわけミャンマー、エチオピアなどでの紛争において、その恐ろしい影響の潜在力を目の当たりにしてきました。マーク・ザッカーバーグ氏は、ミャンマーで起きたことを「恐ろしい悲劇」と表現し、メタ社のプラットフォームが「成すべきことは、もっとたくさんあった」と述べました。
その気持ちはどこへ行ってしまったのでしょう。その代わりに私たちが目にしているのは、情報エコシステムの誠実性を強化しようとする世界中の取り組みに対し全面的に狙いを定めた、新たな好戦的なレトリックです。
しかしながら、デジタル上の信頼性と安全性は、あったらよいというようなオプションではありません。それは人権を擁護する上で欠かせないものであり、科学と制度に対する信頼にとっても欠かせないものです。
ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は、LinkedInへの投稿で次のように発言しています。
ソーシャルメディアは、社会を形成しているとともに、生活を向上させ、私たちをつなぐ計り知れない可能性を秘めています。その一方で、紛争を煽り、憎悪を扇動し、安全を脅かす力も示してきました。ソーシャルメディアが最も機能している時、それは、必ずしも一致を見なくとも、さまざまな見解を持つ人々が意見を交換できる時です。
安全なオンライン空間を創出する取り組みを「検閲」と呼ぶことは、規制のない空間では一部の人々、特にその声がしばしば隅に追いやられている人々が沈黙させられてしまうという事実を、無視しています。更に、オンライン上で憎悪を許せば、表現の自由が制限されて、現実世界に危害が及ぶおそれがあります。表現の自由は、危害や偽情報を生じさせることなく多様な声が届けられるようにした場合において、繁栄するのです。
これらの変更が世界に対してどのような意味を持つのか、その全体像を私たちはまだ把握していませんが、ただ傍観しているつもりはありません。これまでもメタ社の信頼性と安全性のリソースのサービスを十分に受けていなかった、世界中の脆弱な立場に置かれ、社会から疎外されたコミュニティーに対する影響について、私たちは声を上げ続けていきます。
私たちは、より人間的なインターネットを提唱し続けます。それは、あらゆる場所の人々がオンライン空間を安全に歩み、攻撃に怯えることなく自由に意見を述べ、さまざまな意見や情報源にアクセスできるインターネットです。
私たちは、増加することが見込まれる国連とその優先課題に対する憎悪と偽情報の言説に対応し、引き続き協力体制を敷き、能力を構築し、緩和措置を実行していきます。
私たちは、公益に照らして倫理的に行動する独立系メディアを擁護し続けます。それは、自由で多元的なメディア環境が、私たちの情報エコシステムの健全性に不可欠であることを認識しているからです。
また、より健全な広告慣行を提唱し続けます。自社広告がヘイトスピーチや偽情報の隣に表示されてしまう可能性が増々高まっていることを受け、広告主に対して、ブランドの安全性に関するこのような潜在的な懸念について意識を高めます。
はっきりしていることが一つあります。国際社会は、大手テクノロジー企業に、より高い水準を求めています。国連事務総長が繰り返し述べてきたように、テクノロジー企業は、自社のプロダクトによって生じた損害に責任を負い、人権を擁護する措置を講じなければなりません。例外はあり得ないのです。
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原文(English)はこちらをご覧ください。