若者のチカラで世界を明るく!「国連デーin九州大学」が開催されました
2013年11月01日
10月24日は、国連憲章の発効を記念して設けられた「国連デー」。世界中で記念イベントが開催される中、日本では福岡市の九州大学箱崎キャンパスで26日、「国連デーin九州大学:福岡から、若者の手で、世界をちょっと明るくしたい」が開かれました。タイトルのとおり、大学生を中心に大勢の若者が参加。将来の「国連マン」「国連ウーマン」を目指し、人事担当者からのアドバイスや、国連機関で働いた経験を持つ先輩の言葉に熱心に耳を傾けていました。
九州大学は、国連と高等教育機関のパートナーシップである「国連アカデミック・インパクト(UNAI)」に日本で最初に参加した大学の一つ。今年のイベントはその九州大学のユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター(SBRC)と国連広報センター(UNIC)の主催で開かれました。さらに、同大を拠点とする学生団体ユヌス・ソーシャル・ビジネス・クラブ(YSBC)の学生たちが中心となって、運営を盛り立てました。
オープニングでは、主催者を代表して根本かおる 国連広報センター所長が、2年ぶりの地方開催となった国連デーについて、「地方のパートナーと手を携えることなくしては、このように生で国連を感じていただく機会はありません。東京を離れて、福岡で国連デーのイベントを開けたことを嬉しく思います」とあいさつ。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が、若い世代が世界を変える力に大きな期待をかけていることを紹介し、国連活動への理解と積極的な参加を呼びかけました。
今年の基調講演のテーマは、「Serving the World ~Career in the United Nations(国連で働くこと)」。世界に羽ばたく若者を念頭に、国連の採用活動に携わっている国連人的資源管理部アウトリーチ・ユニットのジョン・エリクソンユニット長が、時に日本語を交えながら、分かりやすく国連に入る方法を伝授しました。例えば、「国連」と一口に行っても、国連事務局の本部があるニューヨークだけでなく、国連ファミリーと呼ばれる国連開発計画やユニセフ、ユネスコまで含めれば、世界中に働く場所があることを紹介。また、年齢や経歴に応じて応募方法も多様で、実際に様々な専門性と経験を持った人たちが活躍している現状を説明し、「我々は、国連の使命を信じ、母国を離れて働く意思があり、世界のいろいろな人たちと働ける人材を求めています」と応募を訴えました。
講演のあとには、会場の外でエリクソンユニット長から直接キャリア・ガイダンスを受けられる機会もあり、将来国連で働きたいと考えている高校生から社会人まで、多くの若者が直接質問をぶつけていました。例えば、現在地方公務員を目指しているという長崎大学経済学部3年生の女子学生は、国連職員の中にも公務員出身者がいるのかどうかを質問。エリクソンユニット長から「もちろん。公務員、外交官、政治家などから国連職員になる人は多いですし、地方公務員出身者にも可能性はあります」との説明を受け、「希望が持てました!」と喜んでいました。ほかにも「実務経験と、学術的専門性のどちらが重視されるのか」「インターンにはどうやって申し込めるのか」といった質問が飛び出し、これに対してもエリクソンユニット長は、「年を重ねるほど学位よりも実務経験が重視されます」「インターンは常時募集していますが、いまのところ修士課程以上の大学院生に限られます」などと一つ一つ丁寧に答えていました。(*東京の国連広報センターでは、学部生のインターンも受け入れています)
根本所長がモデレーターを務めたパネル・ディスカッションでは、「私たちが世界を変える~グローバル・イシュー解決のための国連の仕事、ソーシャル・ビジネスを考える~」をテーマに議論しました。エリクソン ユニット長のほか、九州大学からSBRCエグゼクティブ・ディレクターの岡田昌治教授と、言語文化研究院の稲葉美由紀准教授が登壇し、それぞれの実体験を交えつつ意見を交わしました。岡田教授は、国際派サラリーマンから、ソーシャル・ビジネスに携わるきっかけになったノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏との出会いを紹介。一方、根本所長と稲葉准教授は民間から国連機関に就職した自らの経験を共有しました。また、エリクソン ユニット長は、ますます深まる国連とビジネスの関わりと今後の可能性について、思いを語りました。
第2部のメインイベントは、学生チームがソーシャル・ビジネスのアイデアを競い合う「Yunus and Youth Social Business Design Contest 2013」。最初に、岡田教授が、市場経済主義に基づき利益の最大化や私的欲求の追求を目指す普通のビジネスとは違い、出資額以上の利益は株主ではなく事業や社員の福利厚生に還元し、自立・持続しながら社会問題の解決を目指すソーシャル・ビジネスについて解説しました。各チームは、このような考え方に基づき時間をかけて練り上げたビジネス・プランを、8分間のプレゼンテーションに凝縮して発表しました。
提案されたアイデアは、ウガンダの特産品を売って得た収益で学校に通える子どもを増やす(チーム名:「Making Fun With Education」)、児童養護施設でイベントを開くことで新たなコミュニティの形成を目指す(「RE: Dreamers」)、福岡市の中心から離れた九州大学伊都キャンパスで孤立しがちな学生に生き生きとした活動の場を提供する(「4次元がやがや門」)など、着眼点も支援の対象も様々。子どものころ見た報道写真から着想を得たエチオピアの哺乳瓶洗浄ビジネス(「Good Health for Children」)や、実家で作っている環境にやさしい業務用洗剤を、障害者の力を借りて家庭に普及させるプロジェクト(「エコ洗剤プロジェクト」)など、個人的な体験に基づいた提案もあり、会場の共感を呼んでいました。
ビジネス・コンサルタントら7人の審査員の厳正な審査の結果、11月にマレーシアで行われる世界大会に進出する優勝チームは「エコ洗剤プロジェクト」に決定。代表者で京都大学情報学研究科・知能情報学専攻 修士1回生の佐東芳輝さんは「すごく嬉しいです。いろんな方にお世話になってこの賞をいただけたと思っています。本当に勉強になりました」と喜びを語りました。また、観客の投票で選ばれる観客賞は「Good Health for Children」に贈られました。5時間にわたり、日本の若者のパワーを存分に見せつけ、今年の国連デーも盛況のうちに幕を閉じました。