日本語訳(非公式)ができましたのでお知らせします
ファクトシート
国連イラク支援団(UNAMI)
プレスリリース 07/060-J 2007年08月24日
概要
2003年に設置された国連イラク支援団(UNAMI)を通して、国連は、一連の安全保障理事会決議の指針のもとに、イラク国民の対話を促進し、2回に及ぶ総選挙および国民投票の実施を助け、イラク憲法の起草を支援し、人道的援助活動の調整を図り、人権擁護を推進して、イラク政府とイラク国民を支援してきました。2007年8月10日の安全保障理事会決議1770(2007)の採択によって、イラクにおける国連の任務が更新され、かつ強化されました。その結果、政治的対話や国民和解のような領域での助言や支援、イラクと域内諸国との地域協力の促進のような責任をも果たすことになりました。この任務には、イラク・コンパクトによる国連の役割を継続することも含まれています。UNAMIの最高責任者はアシュラフ・カジ イラク担当国連事務総長特別代表ですが、2003年8月19日のバグダッドの国連本部に対する自爆テロ攻撃によって殺害された22人の国連職員の一人であった故セルジオ・ヴィエイラ・デメロ特別代表の後任になります。この自爆テロによって国連職員の移転が行われましたが、2004年4月になって、厳重な警備体制のもとに国連職員の復帰が始まりました。現在、およそ300人の国際スタッフと393人の現地採用スタッフがイラク、クウェート、ヨルダンで働いています。安保理決議1770(2007)のもとにイラク支援が強化される機会を歓迎し、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、国連スタッフの安全が最大の関心事であると強調しました。
最近の動向
安全保障理事会、UNAMI駐留期限を延長
安全保障理事会は2007年8月10日、決議1770(2007)を採択し、UNAMIの駐留期限を延長するとともに、その任務を強化しました。事務総長は、理事会の決定を歓迎する声明の中で、国連はイラク国民の支援に専心することを強調するとともに、「国民の和解、地域的対話、人道的援助および人権のような非常に重要な領域において、可能な場合は、国連の貢献を高める機会を与えられたことを喜んでいる」と述べました。
事務総長はまた、国連はイラクの指導者や国民との緊密なパートナーシップのもとに活動を進めることを期待する一方、「国際社会の支援のもとに、平和的かつ豊かな未来を作り出すのはイラク国民自身である」ことに留意しました。事務総長は、イラクにおいて国連の任務につく勇敢な男女に敬意を表し、「われわれが前進するにあたり、彼らの安全が最大の関心事である」ことを強調しました。
イラク・コンパクトの再検討
国連は7月20日、イラク・コンパクトの最初の年次経過報告(http://www.uniraq.org/ici/ICI%202007%20Mid%20Year%20progress%20Report.pdf)を再検討するための会合をニューヨークで開催しました。イラク・コンパクトは、国際社会の支援の下に、イラク政府が今後5年間に実施すべき包括的な改革・投資計画です。
経過報告は、統合された治安部隊の設置、立法措置、国連支援の憲法再検討プロセスに進展が見られたことに留意したものの、国際社会の支援が引き続き必要であることを強調しました。イラク・コンパクトは2007年5月3日、シャルム・エル・シェイクにおいて、イラクのヌーリ・カメル・アル・マリキ首相と潘基文国連事務総長によって打ち出されました。
任務
安全保障理事会は決議1770(2007)を採択してUNAMIの駐留期限をさらに12カ月間延長するとともに、UNAMIの任務を拡大し、「状況が許す限りにおいて」イラク国民と政府に対して、以下の事項に関して助言を与え、支援し、かつ援助を行うことにしました。
- 包括的かつ政治的対話および国民和解を推進すること
- 選挙および国民投票を実施するためのプロセスを発展させること
- 憲法およびその条項の実施の見直しを図り、また紛争中の国内境界線を解決するためのプロセスを発展させること
- 国境警備、エネルギー、難民の問題等に関して地域対話を促進すること
- 社会復帰プログラムを計画し、資金調達を行い、実施すること
- 国勢調査の実施を計画すること
イラク支援団はまた、「状況が許す限りにおいて」、イラク政府との調整のもとに、以下のことを促進し、支援し、かつ容易にします。
- 難民および避難民の安全かつ秩序ある、自発的な帰還および人道的援助の調整と運送
- 援助国や国際金融機関との調整を含め、イラク・コンパクトの実施
- イラク政府がその国民に必要不可欠なサービスを提供し、かつ「イラク復興信託基金(IRFFI)」による重要な復興・援助計画についてイラクが援助国との調整を積極的に続けることが出来るように、その能力を向上させるプログラムの調整と実施
- 国家機関、地域機関および、必要に応じて市民社会、援助国、国際金融機関との調整のもとに、経済改革、能力向上、持続可能な開発のための条件
- 可能な場合はイラクでの研修や会議などを含め、効果的な官僚機構、社会サービスおよび必要不可欠な公益事業の発展
支援団はさらに、イラクにおける法の支配を強化するために、人権擁護の促進や司法改革、法改正を進めることも求められています。
安全保障理事会決議1546(2004)のもとでは、選挙の実施を支援すること、憲法の起草に関して国民の対話と合意形成を促進すること、効果的な官僚機構および社会サービスの発展についてイラク政府に助言を行うこと、復興、開発、人道的援助の調整と実施を支援すること、イラクにおいて法の支配を強化するために、人権擁護、国民和解および司法改革、法改正を促進すること、最終的な国勢調査の実施に際しては、その計画策定についてイラク政府に助言と支援を行うこと、などがUNAMIの主な任務でした。
成果と業績
- 国連は、過去40年間において初めて機能的かつ民主的に選出されたイラク議会の成立を支援しました。
- 国連は2005年のイラク憲法の起草を助けました。
- 国連は、総選挙(2ラウンド)およびイラク憲法に関する国民投票が成功するように支援しました。
- 国連イラク支援団(UNAMI)は、独立高等選挙委員会(Independent High Electoral Commission=IHEC)の立法議案の策定を助け、また、イラク国民議会(Council of Representatives=COR)による9名の委員選出のプロセスを監視しました。UNAMIは、現在もIHECに技術的な支援を続けています。
- 国連は、保健、教育、給水、衛生および雇用における基礎的な社会サービスの提供ならびに人権の啓蒙についてイラク政府を支援しました。
- 国連は、イラク復興信託基金(International Reconstruction Fund Facility for Iraq=IRFFI)およびイラク・コンパクト(ICI)を通して国際社会とのパートナーシップを促進し、かつそれを強化し、イラクの移行を支援しました。
憲法制定支援
- 憲法制定支援室(OCS)は現在、2005年イラク憲法の正式な再検討プロセスの一環として、イラク国民議会のイラク憲法再検討委員会(Constitutional Review Committee)に支援と援助を提供することに重点的に取り組んでいます。OCSは憲法再検討委員会に対して、改正の可能性のある憲法の特定領域について一連の勧告を行いました。その中には、連邦国家制度/財政連邦国家制度(富の分配)、司法制度、連邦議会もしくは上院、独立した機関および人権などに関する勧告が含まれました。
- 2007年早々に、OCSは、国連プロジェクト・サービス事務所(UNOPS)の援助と支援を受けて、憲法再検討委員会の委員を対象とした一連の研修旅行や多党間対話を組織し、実施しました。
- 憲法に関する審議の開始に先立ち、委員会メンバーはスペイン、ドイツ、マレーシアを訪問し、連邦国家制度について比較検討する機会を得ました。メンバーはまた、カイロではイラク司法制度の将来について、またドバイでは連邦国家制度および財政連邦国家制度について話し合いました。
国連クラスターによるアプローチ
およそ16の国連機関や基金、事務所が国連国別チームを構成しています。これらの機関は、総合的な戦略を策定できるように、以下のような部門に取り組む7つのクラスターに参加しています。
- 農業、食糧の安全保障、環境および天然資源管理
- 教育と文化
- 統治(ガバナンス)および人間開発
- 保健と栄養
- インフラ整備および復興
- 難民、国内避難民および持続的解決
- 選挙プロセスの支援
それぞれのクラスターは、国家開発戦略の方針から逸脱しないようにプロジェクトを再検討し、支持を与えます。その後、プロジェクトはイラク戦略レビュー委員会(Iraqi Strategic Review Board)に提出され、再検討と承認を受けます。UNAMIが5月に報告した現在の人道的危機は「即時の承認と支援を必要」としていることを踏まえて、いかにしてこのクラスター・メカニズムを危機状況に適合させるか、もしくは人道的調整の要求に組み入れるかについて決定するために、このメカニズムの再検討が行われています。
財政的支援
2003年10月に開かれたマドリッド会議は、イラク復興信託基金(IRFFI)を発足させました。現在までに、25カ国から12億ドル以上がIRFFIを構成する2つのイラク信託基金、すなわち国連開発グループ(UNDG)イラク信託基金よび世界銀行・イラク信託基金に拠出されています。
IRFFIは、国家開発戦略に強く結びついており、そのため主に復興および開発の支援を意図して策定されました。現在、国連とそのパートナーのための十分な資金に裏付けられた反応を期待して、人道的な財政支援メカニズムが立案されつつあります。新しい基金の活動を始めるには当初50万ドルが必要だとされています。
プロジェクトと実施制約
UNDGイラク信託基金(ITF)の財政支援に参加する国連機関が実施するプロジェクトは、国家開発戦略やイラク・コンパクトに示されているように、国連・世界銀行共同ニーズ評価(UN/World Bank Needs Assessment)および新たな優先事項や計画に基づいて決定されます。国連は、イラク当局との協議のもとに、国連・イラク戦略的援助計画(Joint UN-Iraq Strategic Assistance Plan)とともに最近承認された合同優先行動計画(Joint Priority Action Plan)を発展させました。合同優先行動計画は、イラク・コンパクトに対する国連の支援を説明する目的で立案されたものです。すべてのITF支援プロジェクトは、イラク戦略レビュー委員会の承認を得ることになっています。
2007年6月30日現在、10億ドル以上の予算とともに152件のプロジェクトが承認されています。実際の支出総額はおよそ6億4,800万ドルで、承認総額の63パーセントに相当します。一方、誓約総額は7億6,500万ドルで、承認総額の74パーセントに相当します。
プロジェクトを実施する上での最大の制約は、治安問題です。治安悪化のためにニーズ地域へのアクセスが制限されるばかりか、事業を実施するために遠隔管理メカニズムを利用する必要も出てきています。国内および国際のNGOに頼ることも、このメカニズムの一環となっています。しかし、他方ではこうしたことによってイラクの市民社会能力を強化するという副次的効果も生まれています。
人道的調整と対応
過去24カ月以上にわたってUNAMIはイラク首相府へ顧問を出向させ、また人権報告、その他の公用文書による擁護運動を進めるなどして、人道問題に関するイラク政府の能力向上に努めるとともに、各種の支援を行ってきました。最近、国連とそのパートナーは「イラクにおける人道的行動のための戦略的枠組み(Strategic Framework for Humanitarian Action in Iraq)」を作成しました。これはイラク政府をはじめ、国際人道的援助社会からも全面的な支持を受けており、実施計画を発展させるプロセスも進行中です。現在、800万人のイラク人が人道的援助を必要としており、そのうちの400万人のイラク人が自分たちの故郷を離れ、200万人以上の人々が近隣諸国で難民となっています。戦略的枠組みは、こうした増大する人道的危機の問題に取り組むことを求めています。
この24カ月間、UNAMIはNGOのパートナーを通して130万ドル以上を支出し、食糧品や非食糧品、緊急健康器具、給水と衛生、教材、国内避難民用住居などを提供しました。
2007年だけでも、60万ドル相当の人道的援助が計画され、さらに資金の提供があれば66万ドルの支出が行われることになっています。
UNAMIは、7月26日にアンマンで開催された難民に関する最初の近隣諸国会合の準備に関し、広範にわたってイラク外務省を支援しました。会合は1日だけでしたが、近隣諸国、とくに200万人以上の難民を抱えるヨルダンとシリアの負担を軽減する方法が探られました。参加者は一般的な目的を強化し、また、三者取り決めのもとに、主要部門(健康、教育、経済的影響、保護)に関する作業グループを設置することに合意しました。国連はオブザーバーとして参加するとともに、主催国政府とイラクとの間の仲介者としての役割も果たすことになっています。
7月27日、イラクから逃げた何万人という子どもたちが引き続き教育を受けられるようにするために、国連は1億2,900万ドル拠出のアピールを行いました。UNHCRやUNICEFはこれらの子どもたちを受け入れているシリア、ヨルダン、エジプト、レバノンの政府を支援しており、2007~2008学年度には15万5,000人の若いイラク人難民の授業料を負担しました。
7月29日、世界保健機関(WHO)は、エジプト、イラク、ヨルダン、シリアの保健担当者の会合をダマスカスで開き、これらの国々に滞在するイラク人難民の健康管理の方法について検討しました。保健部門においては、UNHCRとそのパートナー、とくに赤新月社は、医療の即時提供、病院の復旧、診療所の新規開設、医療スタッフの能力向上、新しい医療器具の提供、その他シリアへ最低11台の救急車の提供などの問題に重点的に取り組むことにしています。
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