世界の先住民の国際デー(8月9日)
~環境保護、気候変動対策への先住民の貢献を認識~
プレスリリース 07/058-J 2007年08月09日
環境保護への先住民の貢献に対する認識が高まる中、世界は8月9日、「世界の先住民の国際デー」を迎えます。
潘基文事務総長は国際デーに寄せるメッセージの中で、次のように述べています。「国際社会は近年、先住民支援の必要性に対する認識を高めています。具体的には、国際基準を確立、推進し、先住民の人権尊重を固く守り、政策やプログラム、国レベルのプロジェクトにミレニアム開発目標(MDGs)をはじめとする国際的な開発課題を取り入れるとともに、環境と気候変動に関連する問題について、先住民の特別な管理権を強化するなどの策が講じられています」
こうした問題に取り組むにあたり、また「第2次世界の先住民の国際の10年」(2005-2015年)のテーマ「行動と尊厳のパートナーシップ」を想起しながら、事務総長は「先住民の全面的で実効的な参加という基本原則を指針としよう」と呼びかけました。
経済社会局長を務める沙祖康(シャ・ズカン)事務次長は国際デーに寄せる公式メッセージの中で、先住民の人々が世界で最も生物多様性に富む地域に多く暮らし、このような環境について膨大な知識を蓄積していることを指摘しました。
「地域の環境について豊富な知識を備えた先住民の人々は、グローバルな気候変動対策への取り組みに重要な役割を果たせる立場にあり、また、そうすべきでもあります。私たちは先住民の話に耳を傾けるべきです」。沙事務次長はこのように語りました。
例えば、先住民の人々は伝統的知識を活用することで、自然災害の影響を軽減しています。今年4月にオックスフォード大学で開催されたシンポジウムでは、先住民の人々が「マングローブ林を用いて高潮や津波の力を吸収したり、遺伝的多様性を作物に応用して全面的な凶作を防いだり、コミュニティによっては、災害が襲うたびに居住地を移動したり」する様子が報告されました¹。
また、2006年6月に人権理事会が採択し、総会も採択を検討中の「先住民の権利に関する宣言」は、先住民の知識、文化、しきたりを尊重することが、適切な環境管理をはじめとする持続可能な開発に資することを認識しています。
「先住民の権利に関する宣言は、先住民の生存、尊厳、安寧にとって最低限必要な基準を表すものです。最も過酷で疎外された条件の中で暮らす先住民は依然として多いものの、気候変動や生物・文化多様性の後退など、深刻な世界的問題への解決策を提示しているのも、こうした先住民の人々なのです」。先住民問題に関する常設フォーラムのビクトリア・タウリ=コーパツ議長は、このように述べています。
先住民は特に気候変動の影響を受けやすい一方で、気候変動対策で重要な役割も果たすとの認識に立ち、先住民問題に関する常設フォーラムは2008年会期で「気候変動、生物・文化多様性と暮らし:先住民が管理者として果たす役割と新たな課題」をテーマに、集中的な議論を行う予定です。
気候変動に対する脆弱性
先住民コミュニティの多くはすでに、環境の変化に生活様式を適応させることを余儀なくされています。例えば、スウェーデンでトナカイの放牧を行うサーミ人のコミュニティでは、降雪量が平年を上回ったため、トナカイが厚い氷に阻まれ、餌にありつけなくなっています。また、アンデス先住民コミュニティの中には、異常気象によって深刻な食糧安全保障問題を抱える地域も出てきています。
イヌイットの活動家で最近、潘基文事務総長からマブーブル・ハク人間開発賞を授与されたシーラ・ワット=クルティエ氏は、次のように語っています。「私たちはすべてつながっています。北極は他の地域から地理的に孤立してはいますが、薄くなった氷が割れてイヌイットのハンターが海に転落するという事故は、アンデスやヒマラヤで氷河が解け出していること、小島嶼国の低地で洪水が発生していることと深く関係しているのです²」
生物多様性条約(CBD)事務局の最近の報告³によれば、アラスカの先住民の間では、永久凍土層が解け、嵐による高波で土地と海岸の浸食が進んでいるために、コミュニティ全体の移住を本格的に検討する動きが出ています。
「先住民が大半を占めるアラスカのコミュニティの80%以上が、海岸浸食または河川浸食に対して脆いことが明らかになっている」と報告書は述べています。
バヌアツやサモアなどの小島嶼国でも、移住の問題が浮上しています。海面の上昇や異常気象による洪水が深刻化しているからです。CBDの報告書によると、バヌアツのあるコミュニティは、居住地が年5回にわたって洪水に見舞われるようになったため、それまでの家を捨て、さらに0.5キロメートル内陸へ移住せざるを得なくなりました。
一方、高地では氷河や氷山の融解以外の現象も現れてきました。CBDの報告書によれば、気候変動や干ばつの結果、農業に悪影響が及んでいる地域もあります。フィリピンのコルディエラ山脈では、2000年もの歴史を誇る棚田が、流水量の減少で異常発生した60センチ以上もある大ミミズに荒らされ、土壌やあぜがさらに干上がるという悪循環が生じています。
¹ Environment News Service, “Indigenous Peoples on Climate Change Front Lines”, 19 April 2007 http://www.ens-newswire.com/ens/apr2007/2007-04-19-03.asp
² Inuit Circumpolar Council (Canada), The Canadian Environment Awards Citation of Lifetime Achievement, www.inuitcircumpolar.com/index.php?auto_slide=&ID=357&Lang=En&Parent_ID=¤t_slide_num=
³ Draft Report on Indigenous and Local Communities Highly Vulnerable to Climate Change, Advisory Group Meeting on Article 8(j) and Related Provisions of the Convention on Biological Diversity, 2nd Meeting, Montreal, 30 April-03 May 2007
国際デーについて
1982年にジュネーブで開かれた「国連先住民作業部会」第1回会合を記念し、毎年8月9日は「世界の先住民に関する国際デー」と定められています。今年の国連での記念行事は、先住民問題に関する常設フォーラム事務局、経済社会局、世界の先住民の10年に関するNGO委員会が共催します。
国際デーと国連本部でのイベントについて詳しくは、ウェブサイトhttp://www.un.org/esa/socdev/unpfiiをご覧ください。
報道関係のお問い合せ先:
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Department of Public Information
電話:212.963.2932
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Secretariat of the Permanent Forum on Indigenous Issues
電話:917.367.6006
メールアドレス:IndigenousPermanentForum@un.org