アフリカとミレニアム開発目標
2007年最新情報
プレスリリース 07/031-J 2007年06月08日
2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)は、2015年の達成期限に向けた中間点を迎えましたが、サハラ以南アフリカでは、どの目標も実現のめどが立っていません。いくつかの領域で大きな進展が見られており、また、ほとんどのアフリカ諸国では目標達成がまだ可能であるものの、域内で最も統治が良好な国々でさえ、多様な形態で現れる極端な貧困の削減に向け、 十分な前進を果たせていないのが現状です。
貧困と飢餓
- 1日1ドル以下で生活する人々の割合は、1999年の45.9%から41.1%へと低下していますが、2015年までに極端な貧困を半減させるというMDGsの目標値を達成するためには、現在のペースをほぼ倍増させる必要があります。
- と同時に、アフリカでは2.3%という高い人口増加率にもかかわらず、極端な貧困にあえぐ人々の数はほぼ横ばいで推移しており、1999年の2億9,600万人から2004年の2億9,800万人へと微増にとどまっています。
- 飢餓を半減させるという目標については、子どもの状況の改善に遅れが目立っています。1990年から2005年にかけ、5歳未満の体重不足児の割合は33%から29%と、10分の1程度しか減少していません。
教育
- 初等教育の完全普及については進展が見られ、就学率は1999年の57%から2005年には70%へと上昇しました。しかし、就学年齢児童の数が日々増加していることを考えれば、残り30%の欠落は大きいといえます。サハラ以南アフリカでは、14歳未満の子どもの数が、1990年の2億3,700万人から2007年には3億4,800万人に膨れあがっています。この数は2015年までに、4億300万人に達すると見られています。
男女平等
- 国会議員に女性が占める割合は現在17%と、1990年の7%に比べ急増していますが、農業以外で給与を得ている女性の割合は、2005年の時点で3分の1に達していません。
乳幼児死亡率
- 5歳未満の乳幼児死亡率は、1990年の出生1,000人当たり185人から、2005年には1,000人当たり166人へと低下していますが、2015年までに3分の2の減少という目標の達成には程遠く、現時点ですでに、開発途上国全体でペースを倍増させる必要性が生じています。ただし、広範な予防接種キャンペーンの結果、1999年から2005年にかけ、サハラ以南アフリカのはしか患者数と死者数が75%近くも減少していることは、ひとつの明るい動きといえます。
妊産婦の保健
- 妊産婦の健康状態は、地域的にも世界的にも恥ずべき状況にあります。特にサハラ以南アフリカの女性が妊娠・出産中の合併症で命を落とす確率は16分の1と、先進国の3,800分の1に比べて異常に高くなっています。
エイズその他の病気
- エイズによる死者数は増加の一途をたどり、2006年には200万人の大台に乗りました。罹患率は頭打ちになってはいるものの、特に女性の新規感染者数とHIV感染が進んだ患者の数が増大を続け、治療サービスの拡大がこれに追いつけていないのが現状です。
- サハラ以南アフリカでは、新規の結核感染率が極めて高く、低下の兆しはまったく見えません。
環境の持続可能性
- 最新の2004年のデータによれば、農村部できれいな水を利用できる人々は42%にすぎません。また、基本的な衛生設備を利用できない人々も全体の63%と、1990年の68%からほとんど減っておらず、2015年までにこの割合を半減させるという目標の達成は程遠い状態にあります。
- 気候変動の影響はすでに現れつつありますが、これによってサハラ以南アフリカでのMDGs達成はさらに困難となります。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測によると、水ストレス増大の影響にさらされる人々は7,500万人から2億5,000万人に上ります。十分な備えがなければ、農村経済と貧困層の生活に破壊的な影響が及ぶおそれもあります。
またとない機会
過去15年間で極貧層が増大を見せた地域は、世界でもアフリカだけだという事実は広く知られています。しかし、アフリカ諸国が主要な開発指標を大幅に向上させているという事実は、あまりよく知られていません。
- 経済政策の改善と商品価格の高騰により、過去3年間の平均経済成長率は年率で6%弱に達しています。この成長率は諸国間で比較的公平に分配されており、IMFも短期のすう勢成長率を7%近くと見込んでいます。
- 内戦の件数は減少傾向にあります。
- 輸出収入の増加により、多くの国々で経常収支が改善したほか、最貧国では最近の債務救済により、マクロ経済の不均衡が縮小しています。
- アフリカ企業は国内投資を増額し、生産性を向上させています。
- 域内諸国の政府の中には、透明性の向上、腐敗の抑制、民主化を継続的に進めているものが多くあります。
- それでも、商品価格の高騰が主因となっていることを考えれば、今後の進展は引き続き予断を許しません。アフリカ諸国は依然として数少ない一次産品に輸出を依存しています。また、生産と貿易の能力を向上させ、高い成長率を維持し、雇用を創出するために欠かせない農業、保健、教育、インフラへの公共投資も不足しています。
成功例
強力な政府の指導力や適切な政策と、国際社会からの十分な資金・技術援助とを組み合わせれば、MDGs達成に向けた大幅な前進が素早く達成できることを、アフリカ諸国は実証しています。最近の例としては、下記があげられます。
- マラウイでは、導入後わずか1年の肥料・種子購入券プログラムにより、2006/7年度の農業生産性が倍増しました。
- ガーナは国産食料品を用いた全国的学校給食プログラムを導入し、これを成功させました。
- ケニア、タンザニア、ウガンダをはじめとする多くの国々では、初等教育の無償化により、わずか数年で就学率が劇的に上昇しました。
- 2006年には、ザンビアが農村部の基本的保健サービスを、ブルンジが母子医療を、それぞれ無償化しました。
- ニジェール、トーゴ、ザンビアなどのアフリカ諸国は、赤十字・赤新月社、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(ユニセフ)、米疾病管理センターからの支援を受け、はしかの予防接種キャンペーンや、長期残効型防虫蚊帳の配給によるマラリア予防キャンペーンに着手しました。これらキャンペーンは2週間以内に全国展開され、マラリア罹患率を少なくとも半減させる効果をあげました。
- ニジェールでは、国の政策改革で大規模な植林を推進した結果、農村部に暮らす数十万人の生活が改善され、干ばつに対する抵抗力も強まりました。
- セネガルでは、ドナーの支援による国の投資プログラムを通じ、水と衛生に関する目標達成のめどが立ちました。
- 多くのアフリカ諸国では、政府がドナーの支援増額を受けながら、現地のリーダーシップと外部援助の組み合わせにより、短期間で貧しいコミュニティを変容できるというミレニアム・ビレッジの教訓を、全国規模で実施に移し始めています。
約束を果たす:開発のためのグローバル・パートナーシップ
ほとんどのアフリカ諸国には、こうした成功例に倣い、さらに大規模な取り組みを行う用意がありますが、そのためには、MDGs達成に向けた公共投資に資金を充当できるよう、政府開発援助(ODA)の質と量をともに改善する必要があります。ところが、サハラ以南アフリカへの援助額は、新千年紀初頭の数年間にこそ増額されたものの、単発的な債務救済や人道援助を除けば、2004年以降ほぼ横ばいとなっています。
ドナーは援助増額計画を前倒しすることで、2010年までに対アフリカ援助額を倍増させるという、2005年に自らが行った約束の信ぴょう性を維持する必要があります。ドナーにはさらに、アフリカ各国の政府が不可欠な投資を計画し、これを支えるマクロ経済枠組みを準備することができるよう、今後の援助増額予定を国別に公表する必要もあります。
アフリカの後発開発途上国(LDC)に対しては、先進国だけでなく、多くの開発途上国も「開発と貧困解消に結びつく」環境を整備するというミレニアム宣言の原則に沿い、関税の撤廃を認めるようになりました。しかし、アフリカのLDCでさえも、供給サイドの制約を免れないばかりか、国産品に対する理不尽な原産地規則の適用を受けることが多くなっています。さらに幅広い視点から見ると、開発志向の世界貿易体制を構築しようとするドーハラウンドの取り組みも滞っています。この膠着状態は打開せねばなりません。
MDGs達成に向けた進展はあまり見られないものの、ほとんどのアフリカ諸国にとって、目標は手の届く範囲にあります。とはいえ、必要な投資を実際に行う時間的余裕はなくなってきています。グレンイーグルスのG8サミットと2005年の世界サミットで世界の指導者が約束、再確認した援助を実行するだけで、目標は十分に達成できるはずです。2007年という中間点を迎えた今、この約束を直ちに実際の計画に盛り込み、これを組織的にフォローせねばなりません。