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〔非公式訳〕 記者声明
朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権状況に関する国連特別報告者 ウィティット・ムンタボーン教授、2006年12月10日から14日にかけ訪日

プレスリリース 06/088-J 2006年12月13日

朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権状況に関する国際連合(国連)特別報告者、ウィティット・ムンタボーン教授は2006年12月10日から14日にかけ、日本を公式訪問しました。ムンタボーン教授は2007年初頭をめどに、国連人権理事会に新たな報告書を提出する予定ですが、特別報告者として2回目となる今回の訪日は、その作成に向けた情報収集の一環として行われたものです。

国連特別報告者は、訪日に便宜を図っていただいた日本政府や国連大学の方々に、心から感謝しています。面会を希望した個人や機関の方々にも、すべてお会いすることができました。また、政府担当者、国会議員、国連機関、非政府組織(NGO)、その他市民社会のメンバーの方々とも、DPRKにおける人権問題とその日本への影響について話し合うことができました。訪日の主たる目的は、DPRKによる拉致被害者の家族の方々とお会いすることにありました。特別報告者は、こうした家族の方々にお会いし、その懸念を国連の活動に反映できることを、大変光栄に思います。

特別報告者の任務と任期は2004年、ジュネーブの国連人権委員会で定められました。この任期は、2006年に新設された国連人権理事会により、さらに1年間延長されました。また、特別報告者には、報告書を作成し、これを国連総会と人権理事会の両方に提出する任務が与えられました。特別報告者の任務には、人道援助(特にDPRKへの食糧援助)から庇護、外国人拉致、関連のDPRKによる犯罪行為に至るまで、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利に関連するさまざまな問題が含まれています。残念ながら、DPRKは特別報告者への協力を拒否し、自国への訪問を受け入れていません。

DPRKによる日本人の拉致は、特別報告者の任務の中でも重大な関心事です。主に1970年代からその後これまで数十年にわたり、何人もの日本人がDPRKの工作員に拉致されました。2002年に平壌で行われた初の日朝首脳会談で、DPRKはかなりの数の拉致事件への関与を認め、これについて謝罪しました。両国はその際、特に拉致問題の解決を図るため、平和的な対話と、国際法に基づく問題解決を前提とする2002年日朝平壌宣言を採択しました。

その後、何度も会合が開かれたにもかかわらず、様々な不明な点はまだ残っています。日本は現在、17人がDPRKに拉致されたとしています。うち5人はすでに日本に帰国しましたが、他の事件は主としてDPRKが非協力的な態度を示しているため、まだ解決を見ていません。日本には拉致被害者家族の方々をはじめ、DPRKに拉致された何人もの日本人がDPRK国内で生存していると信じる人々も多くいます。生存者を直ちに日本に帰国させるべきだという感情も強まっています。この1年間には、日本以外の数カ国の人々がDPRKの工作員に拉致された事件にも関心が集まりました。日本の政府当局と市民社会はともに、他国との連携の強化を通じ、情報の共有、拉致問題に関する啓発、そして、拉致の責任を負うべき者に対する圧力をより強めるための戦略策定に努めています。また、国連の場でその主張を展開することも多くなりました。

DPRKによる拉致の問題は、内外で大きな反響を呼び、DPRKに釈明と責任を求める声にも結びついています。拉致事件の中には、特別報告者による取り組みに加え、強制的・非自発的失踪に関する国連作業部会に付託され、審議中のものも多くあります。拉致問題については国連でも重要な決議が採択されており、最近では国連総会の第3委員会が2006年、重大な人権侵害に関する報告が相次ぐ中で、下記に関する懸念を表明しています(第1条(b)項(v)号による)。

「他の主権国出身者の人権侵害に相当する、強制失踪という形での外国人の拉致に関連し、国際的に懸念される未解決の諸問題」

2006年には、DPRKが数回にわたってミサイル発射実験や核実験を行い、国連安全保障理事会(安保理)での全会一致によるDPRK制裁決議の採択をはじめとする世界的な非難を浴びたことで、事態がさらに複雑化しました。DPRKに制裁を科す安保理決議1718の前文が「国際社会の他の安全上および人道上の懸念」を強調し、人権と拉致の問題に遠回しに触れていることは、興味深い点といえます。これに関連して、いわゆる6者協議(日本とDPRKを含む6カ国が参加するもの)を再開し、人権状況にも影響を及ぼす朝鮮半島の核問題をはじめ、重要課題の解決を図る必要性もあります。この点で進展が見られれば、人道援助の可能性も広がるでしょう。

国連特別報告者は2005年、任務の一環としてはじめて日本を訪問しましたが、これを締めくくるにあたり、5つの主要原則に基づく「人道的呼びかけ」を発しました。2回目にあたる2006年の訪日の締めくくりとして、きょう再び、下記の呼びかけを強調しておく価値があるでしょう。

1.責任:
  • DPRKに対し、同国に拉致された何人もの日本人がDPRK国内で生存しており、これらの人々を直ちに、かつ安全に日本へ帰国させるべきだとの日本の主張に対し、実質的かつ迅速に対応するよう呼びかける。
2.透明性:
  • DPRKに対し、同国が拉致した何人もの日本人が死亡したとするDPRKの主張を信頼できる客観的な形で立証し、これに関する曖昧な点や食い違いを解明するとともに、その他にもDPRKによって拉致された日本人がいるかどうかを確認するよう呼びかける。
3.家族の再会:
  • DPRKに対し、特に拉致被害者について、家族の再会と帰国を尊重、保証するよう呼びかける。
4.説明責任:
  • DPRKに対し、その主張の矛盾点を正すとともに、拉致被害者とその家族が司法に訴え、拉致の実行責任者を裁きにかけることを含め、拉致責任者からの実効的かつ迅速な補償を求められるようにするよう呼びかける。
5.持続可能性:
  • DPRKに対し、日本との対話と協力を再開、継続させることで、DPRKによる日本人拉致問題を平和的に解決し、かつ、問題の満足できる解決を確保するとともに、拉致の再発を防止するよう呼びかける。
この「人道的呼びかけ」は下記の方向性により、さらに強化することが望まれます。
  • 積極的な対話:未解決の拉致問題の満足できる解決に向け、さらに迅速な措置を踏むこと。
  • 実質的な進展:国際法を守って人権を保障するという普遍的責任に基づき、具体的な成果を示すこと。
  • 国際的な連帯:国連システム全体の後押しにより、二国間・多国間関係で両国を支援し、問題の平和的な解決を図ること。