日本語訳(非公式)ができましたのでお知らせします
エイズのグローバルな蔓延続く
プレスリリース 06/082-J 2006年12月04日
最もリスクの高い人々への支援に重点を置き、
各国の流行状況の変化に対応する予防プログラムが効果的
ジュネーブ、2006年11月21日 ―グローバルなエイズの蔓延が続く中で、一部の国々では、これまで横ばいあるいは低下に向かっていた新規HIV感染率が再び上昇に転じるという不安な動きが見られます。しかし、感染率が低下している国も見られ、若者の性行動にもプラスの変化が生じています。
国連エイズ合同計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)が発表した2006年度版『エイズ流行最新情報(AIDS Epidemic Update)』によれば、HIV感染者の総数は3,950万人に上ります。2006年の新規感染者数は430万人でしたが、このうち280万人(65%)はサハラ以南アフリカの感染者であるほか、東欧や中央アジアでも感染が急増しており、中には2004年以来、感染率が50%以上も上昇したケースが見られます。2006年のエイズ関連疾患による死者は290万人に達しました。
最新のデータによると、HIV予防プログラムが継続されなかったり、感染パターンの変化に適応できていなかったりする一部の国々では、感染率が横ばいで推移するか、再び上昇に転じています。
北米と西欧では、HIV予防プログラムが継続されないことが多く、新規感染者数も横ばいにとどまっています。同様に、低・中所得国を見ても、新規感染者数を実際に削減できた国々はごく一部にすぎません。また、ウガンダなど、これまで新規感染者数の削減に成功してきた国々の中でも、低下のペースが鈍ったり、逆に上昇を始めたりするケースが出ています。
「ウガンダを筆頭とするこれら諸国では、HIV予防プログラムの拡充がこれまで成果を収めていたことを思えば、その先行きが心配です。つまり、このような国々の予防努力が感染スピードに追いついていないということです」と語るのは、UNAIDS事務局長のピーター・ピオット博士です。「命を救うための予防努力を大幅に強化しつつ、HIV治療プログラムも広げてゆく必要があります」
HIV予防に効果も、しかし焦点を絞り継続が必要
報告書の最新データを見ると、HIV感染リスクが最も高い人々への重点的な適応を図るHIV予防プログラムが増え、効果をあげていることがわかります。
多くのエイズ蔓延国では過去10年間に、コンドームの使用増大、性交渉開始年齢の上昇、性的パートナー数の減少など、若者の性行動に改善が見られます。ボツワナ、ブルンジ、コートジボワール、ケニア、マラウイ、ルワンダ、タンザニア、ジンバブエでは2000年から2005年にかけ、若者のHIV感染率が大幅に低下しました。
その他、資源が少なくとも、HIVに最も感染しやすい人々のニーズに焦点を絞った投資を行うことで、大きな成果をあげている国々もあります。中国では、売春婦を重点とするプログラムが、コンドームの使用を大幅に増大させ、性感染症の感染率を低下させた例があるほか、一部の地方では、注射による薬物使用者を対象としたプログラムも進展を見せています。また、ポルトガルでは、HIVと薬物使用に焦点を絞った特別予防プログラムの実施を受けて、HIV感染者と診断される注射による薬物使用者が2001年から2005年にかけ、ほぼ3分の1(31%)減少しました。
課題への取り組み:自覚を持とう
多くの国々では、若者、女性と女児、男性の同性愛者、売春婦とその客、注射による薬物使用者、少数民族、文化的少数者など、感染リスクの最も高い人々が、HIV予防プログラムの対象から漏れています。報告書はエイズの流行に関連し、女性と女児の問題に対する関心を維持し、高めることの必要性にも触れています。例えばサハラ以南アフリカでは、男性よりも女性のHIV感染率が高いほか、感染者の介護も主として女性の負担となる国が多くなっています。
報告書によれば、ラテンアメリカ全域に加え、カンボジア、中国、インド、ネパール、パキスタン、タイ、ベトナムでも、男性の同性愛者間のHIV感染が表面化してきましたが、各国のエイズ対策プログラムでは、こうした人々の特殊なニーズがほとんど考慮されていません。また、最新データでは、ラテンアメリカ、東欧、そして特にアジアで、HIV予防プログラムが注射による薬物使用と売春による感染の重複関係に取り組めていない実態も浮き彫りになっています。
「HIV予防と治療サービスへの投資をともに増やし続け、エイズによる不必要な死者や患者を減らすことが急務」と語るのは、WHO事務局長代理を務めるアンデシュ・ノードスツローム博士です。「最も被害の大きいサハラ以南アフリカでは、平均寿命がわずか47歳で、ほとんどの高所得国より30年も短くなっています」
『エイズ流行最新情報』はラテンアメリカ、カリブ海、中東、北アフリカなど、いくつかの地域でHIV監視体制が弱いことも明らかにしています。こうした事情もあって、男性の同性愛者、売春婦、注射による薬物使用者など、最もリスクの高い人々が、その具体的な状況と実態がはっきりつかめていないことを理由に、HIV予防・治療戦略の十分な対象とされないことが多いのです。
報告書はまた、多くの国々で安全な性行為やHIVに関する知識水準が相変わらず低く、個人的リスクに対する考え方も甘いことを明らかにしています。スワジランドや南アフリカなど、エイズ蔓延が大問題となっている国々でさえ、国民の大部分は自分たちに感染のリスクがあるとは考えていないのです。
「エイズ蔓延の自覚を持ち、男女の不平等や同性愛嫌悪など、蔓延の温床について理解することは、エイズへの長期的な対応に欠かせない基本条件です。対策を一気に強化するだけでなく、その戦略性、重点性、持続可能性を高めることで、資金が最も必要な人々に行き渡るようにせねばなりません」。ピオット博士はこのように語っています。
年刊の『エイズ流行最新情報』は、グローバルなエイズ流行の最新動向を伝える報告書です。2006年度版は、地図や地域別推計により、エイズ禍の規模と犠牲者に関する最新推計を提示し、エイズ流行の新たな傾向を探るものとなっています。本書はwww.unaids.orgで入手できます。
国連エイズ合同計画(UNAIDS)は、国連システム内10機関の取り組みと資源を結集し、グローバルなエイズ対策を目指すものです。共同スポンサーは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(ユニセフ)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関(WHO)、そして世界銀行の各機関です。UNAIDS事務局はジュネーブを本拠としつつ、全世界の75カ国以上で実地活動を展開しています。
WHOは国際保健活動の指揮・調整機関として、国連システムの先頭に立ち、グローバルな保健部門のHIV/エイズ対策に努めています。WHOが提供する専門的な証拠に基づく支援は、保健部門を通じて治療、ケア、支援、予防サービスなど、包括的で持続可能なHIV/エイズ対策を実施できるよう、保健システムの強化を図る加盟国の取り組みに役立っています。
お問い合わせ先
Yasmine Topor | UNAIDS Geneva | +41 22 791 3501 | topory@unaids.org
Beth Magne-Watts | UNAIDS Geneva | +41 22 791 5074 | magnewattsb@unaids.org
Sophie Barton-Knott | UNAIDS Geneva | +41 22 791 1967 | bartonknotts@unaids.org
Iqbal Nandra | WHO Geneva | + 41 22 791 5589 | nandrai@who.int