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2006年世界薬物報告を発表

プレスリリース 06/039-J 2006年06月27日

~UNODC事務局長、アフガニスタンのアヘン生産、欧州のコカイン消費に警鐘~

西欧のコカイン消費は危険なレベルに達する一方で、アフガニスタンのアヘン生産は2005年の減少から再び上昇に転じる可能性も―。国連薬物犯罪オフィス(UNODC)のアントニオ・マリア・コスタ事務局長は6月26日、このように語りました。

このたびUNODCが発表した『2006年世界薬物報告(2006 World Drug Report)』によれば、世界のアヘン生産量は2005年に5%の減少を見せましたが、コカイン生産量はほぼ横ばいで推移しました。これら2種類の薬物の押収量は過去最高に達しており、特にコカインの押収量が急増しています。不正薬物の中で最も幅広く使用される大麻の消費量は増大を続けていますが、アンフェタミン型覚せい剤の市場は落ち着きを見せています。アフリカはヨーロッパ向けのコカイン、ヘロインの中継地として、さらに大きな役割を果たすようになっています。

コスタUNODC事務局長は、ワシントンのナショナル・プレス・クラブで『世界薬物報告』を発表するにあたり、薬物市場は世界的に見て縮小傾向にあるものの、政府は需給双方の削減に向けた取り組みをさらに強化する必要があるとした上で、「薬物の取り締まりは成果をあげており、世界の薬物問題の広がりは食い止められつつある」と述べました。

「長期的に見ても、過去数年間だけを見ても、このことに変わりはありません。人類は21世紀を迎えるにあたり、100年前よりも薬物の栽培量と中毒者を大きく減らすことができました。しかも重要なことに、ここ数年間に全世界で不正薬物の脅威を減らす取り組みがなされた結果、25年間にわたって増大を続け、このままでは全世界的に蔓延しかねないと見られていた薬物中毒に、ついに歯止めがかかったのです」

ラオスは1990年代半ばまで、世界第3位の不正アヘン生産国でした。それが2005年までに栽培面積を72%削減し、アヘン撲滅をほぼ達成しました。「ラオスはこれほど目覚ましい前進を示しながら、それに見合った関心を集めていない」とコスタ事務局長は語っています。

しかし、UNODCはグローバルな薬物統制に3つの大きな弱点があることも明らかにしています。アフガニスタンでのヘロイン供給、ヨーロッパでのコカイン需要、そして全世界での大麻の需要と供給がその3つです。

2005年、世界最大のアヘン生産国アフガニスタンでは、ケシの栽培面積が2001年以来初めて縮小し、10万4,000ヘクタール(21%減)となりました。しかし、コスタ事務局長は「アフガニスタンでは貧困や治安悪化のほか、政府の実効的支配が国内全土に及んでいないという事情もあるため、薬物問題が再び悪化するおそれがある」と警告しました。「この春にはアヘン根絶に向けて大きな前進が見られたものの、今年中に問題が再燃する可能性も十分にあります」

コカ/コカイン市場では、いくつか心強い動きが見られます。コカ栽培面積とコカイン生産量がともに横ばいで推移する中で、コカインの押収量は過去最高を更新しました。全世界のコカイン使用量はわずかに減少しています。

コスタ事務局長は「西欧ではコカイン需要が危険な水準に達しつつある」としています。「欧州連合(EU)各国の政府には、この問題から目をそらさないよう求めたいと思います。有能で教養もあるヨーロッパ人の間で、コカインがあまりにも広がっており、しかも自分が中毒に陥っていることを否定する向きが多く見られます。また、有名人の薬物乱用をメディアが大目に見ることも多く、若者の間に混乱と動揺が生じています」

1990年代に広がりを見せたアンフェタミン型覚せい剤(ATS)の市場は、法執行と前駆物質取り締まりの強化を反映し、落ち着きを見せつつあります。2004年の時点で、アンフェタミンの使用経験者は約2,500万人、エクスタシーの使用者も約1,000万人に達しています。2004年のアンフェタミン生産量は合計で480トンと見られますが、これは2000年のピークを下回っています。

米国当局は多数の不正メタンフェタミン製造所の撤去を続けています。2004年にはその数が1万7,000カ所に及び、全世界合計の9割以上を占めました。ここ数年の間、中高校生によるメタンフェタミン乱用は横ばいか減少を示していますが、米国ではメタンフェタミン中毒治療に対する需要が急増しています。

多くの国の薬物問題は自業自得 
『2006年世界薬物報告』は特に、世界で最も乱用者が多い不正薬物として、大麻にスポットを当てています。大麻使用経験者は2004年の時点で1億6,200万人と見られますが、これは15歳から64歳までの世界人口の4%程度にあたり、しかも消費の増大は続いています。

コスタUNODC事務局長は、大麻の作用が数十年前に比べて格段に強まっており、これを比較的害の少ない「ソフト」ドラッグとして軽視するのは誤りだと述べました。大麻の使用によって、深刻な精神障害が生じうることを示す証拠は数多く見られます。

「今日、大麻の有害性はコカインやヘロインなど、他の植物性薬物と大差がない」とコスタ氏は語り、次のように付け加えました。

「各国の大麻対策はまちまちで、年ごとに変化する場合もあります」。「大麻による健康被害が増えている中で、どの政党が政権につくかによって国の大麻対策が左右される状況は、根本的に間違っています。政策の軸がぶれることで、大麻の危険性に対する若者の認識に混乱が生じるからです。他の公衆衛生上の課題と同じく、大麻対策にも政党の枠を超えた社会全体のコンセンサスと一貫した取り組みが必要です」

「薬物統制の経験が蓄積された現在、一貫した長期的戦略を採用することで、薬物の需給と密売を実際に減らせることは誰の目にも明らかだ」とコスタ氏は結論づけています。「仮にこれが実現しなければ、その責任は薬物問題を深刻に受け止めず、十分な対策を講じない一部の国々にあるはずです。多くの国々の薬物問題は自業自得だということです」