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UNAIDS/WHO報告書
HIV:感染率は数カ国で低下も、世界全体の感染者数は引き続き増大

プレスリリース 05/093-J 2005年11月25日

エイズ流行の減速、後退にはHIV予防・治療努力の拡大が必要

新たな検証によれば、成人のエイズウイルス(HIV)感染率は一部の国々で低下していますが、これには感染予防のための行動変化(コンドームの使用増大、最初の性体験の遅延、性的パートナー数の減少など)が大きな役割を果たしています。国連が新たに発表した報告書はその一方で、全体的なHIV感染者数は依然として増加傾向にあり、エイズの流行を食い止めるためには、HIV予防への取り組みをさらに強化する必要があるとしています。

ケニア、ジンバブエや、カリブ海地域の一部諸国では、ここ数年間でHIVの流行が収まりつつあります。ケニアでは、成人全体の感染率が1990年代後半の10%をピークに、2003年には7%にまで低下しました。ジンバブエでは、妊婦のHIV感染率が2003年の26%から、2004年には21%に低下しています。ブルキナファソの都市部を見ても、若い妊婦の感染率が2001年の約4%から、2003年には2%弱にまで下がりました。

これら最近の動向は『エイズ流行最新情報2005(AIDS Epidemic Update 2005)』で明らかにされています。この報告書は毎年、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)が共同で発行しているものです。HIV予防に焦点を当てた今年の報告書は2005年11月21日、世界エイズ・デー(12月1日)に先駆けて発表されました。

カリブ海地域数カ国(バハマ、バルバドス、バミューダ、ドミニカ共和国、ハイチ)の最新動向を見ると、妊婦のHIV感染率の低下、性産業でのコンドーム利用増加の兆候、自主的なHIV検査やカウンセリングの拡大など、やや明るい見通しが表れてきています。

一部の国々で感染率が低下しているにもかかわらず、カリブ海を除く世界の全地域では、HIV感染者数が増加の一途をたどっています。2005年の新規感染者は500万人に上りました。全世界のHIV感染者数は2003年の3,750万人から4,030万人へと増大し、史上最悪の水準に達しています。2005年のエイズ関連疾患による死者は300万人を超えましたが、その中には子ども50万人が含まれています。

報告書によると、HIV感染がもっとも急増しているのは東ヨーロッパ、中央アジア(160万人へと25%増大)、東アジアです。しかし、世界でもっとも影響が大きい地域はサハラ以南アフリカで、新規感染の64%(300万人以上)を占めています。

「数カ国で改善が見られたこと、また、持続的なHIV予防プログラムが感染減少に重要な役割を果たしたことは、心強い限りです。しかし、世界的、国内的な対策がエイズ禍に追いついていないという現実に変わりはありません」。こう語るのは、UNAIDS事務局長のピーター・ピオット博士です。「HIV予防プログラムの規模と範囲を急激に拡大することが急務であるのは明らかです。短期的な視野の小規模プロジェクトから、長期的、総合的な戦略へと軸足を移さなければなりません」

HIV治療の効果
報告書は、ここ2年間でHIV治療へのアクセスが大幅に改善されたことを認めています。低・中所得国で、抗レトロウイルス治療により寿命を延ばし、生活を改善できた感染者は100万人を超えます。また、HIV治療へのアクセス拡大により、今年は25万人から35万人が死を逃れたと見られます。

今年の報告書は、予防と治療の統合によって効果を拡大できる可能性について触れ、HIVとエイズへの総合的な対策を講じるためには、予防、治療、ケアへのアクセス普遍化を最終目標として、治療と予防の努力を同時に加速する必要があることを強調しています。

「HIVの治療と予防をばらばらに行うのではなく、これを同時に拡大してゆくことの利益が、だれの目にも明らかになった」と語るのは、WHO事務局長の李鍾郁(イジョンウク)博士です。「治療を受けられることは、政府がHIV予防情報と自主的なカウンセリングや検査を支援し、また、個人がこれらを求めるうえで強い誘因となります。有効な予防は、最終的にケアが必要になる人数を減らす一助となり、それによって、治療への幅広いアクセスが達成可能かつ持続可能になるのです」

HIV予防強化に向けた今後の課題
新たなデータを見ると、アジアをはじめ、ラテンアメリカ、東ヨーロッパでも、薬物注射と性産業の隆盛が相まって、火に油を注ぐ状況となり、予防プログラムはこの二重要因に対処しきれていないのがわかります。報告書はその一方で、ウガンダやタンザニアの若者、タイやインドの売春婦とその顧客、スペインやブラジルの注射薬物使用者など、さまざまな方面で、持続的かつ集中的なプログラムがHIV感染の減少にどれほど役立ったかも示しています。

報告書の指摘によると、HIV予防措置がなければ、HIV感染者の女性から生まれる子どもの約35%がウイルスに感染することになります。先進国では事実上、母子感染の例がなくなっているほか、その他多くの場所でもサービス提供範囲が広がってきてはいるものの、サハラ以南アフリカでは依然として、取り組みがまったく不十分な状態が続いています。この受け入れがたい犠牲者の数を減らすためには、予防サービス拡大を加速させることが急務です。

感染率が高く、さらに上昇を続けている国々を含め、多くの国々では、安全な性行為やHIVに関する知識水準が依然として低くなっています。サハラ以南の24カ国(カメルーン、コートジボワール、ケニア、ナイジェリア、セネガル、ウガンダなど)では、HIV感染についての総合的知識を持たない若い女性(15~24歳)が、全体の3分の2を超えています。2003年にフィリピンで実施された大がかりな調査では、回答者の90%以上がいまだに、HIV陽性者と食事を分け合うだけでウイルス感染のおそれがあると信じていました。

最後に、ラテンアメリカ、カリブ海、中東、北アフリカの一部諸国を含め、いくつかの地域では、HIV監視態勢の不備により、予防への取り組みが妨げられています。このため、もっとも感染リスクが高い人々(男性の同性愛者、売春婦、注射薬物使用者など)が、HIV予防・治療戦略の対象から漏れることも多くなっています。

 年刊の『エイズ流行最新情報』は、グローバルなエイズ流行の最新動向を伝えるものです。2005年度版は、地図や地域別推計により、エイズ禍の規模と犠牲者に関する最新推計を提示し、エイズ流行の新たな傾向を探るとともに、HIV予防に関する特集記事も掲載しています。

 


*このUNAIDS/WHO報告書は2005年11月21日、全世界の19都市で発表されたものです。発表会はインドのデリーを主会場に行われました。

詳しくは下記にお問い合わせください。

UNAIDS Press Office
Dominique de Santis, UNAIDS, Paris, (+41 79) 254 6803(携帯)
Sophie Barton-Knott, UNAIDS, Geneva, (+41 22) 791 1697
Beth Magne-Watts, UNAIDS, Geneva, (+41 22) 791 5074
Jonathan Rich, UNAIDS, New York, (+1 212) 532 0255

World Health Organization
Klomjit Chandrapanya, WHO, Geneva, (+41 22) 791 5589
WHO North American HIV/AIDS Media Line, (+1 212) 584 5031

報告書の全文はUNAIDSウェブサイト(www.unaids.org)でご覧になれます。