本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

ミレニアム開発目標報告2005
MDGs進捗状況報告書、貧困が国際交渉の焦点となる中で発表

世界的な貧困改善も、人間の生存ニーズ充足には大きな隔たり、と国連

プレスリリース 05/056-J 2005年06月28日

 

1日1ドル未満で暮らす人々の数 1990年、1996年、2001年比較(単位:百万人)
1日1ドル未満で暮らす人々の割合 1990年、2001年比較(単位:%)

国連は2005年6月9日、世界の現状を映し出す報告書を発表しました。それによると、アジアでは貧困の解消がかつてないスピードで進む一方、多くの地域において、母子が治療と予防の可能な原因から命を失い、開発途上国に住む人々の半数が簡易衛生設備さえ利用できないような状況にあります。

貧困とその根絶が世界的な最優先課題の一つに数えられる中、ミレニアム開発目標(MDGs)実現に向けた現状評価は、開発、安全保障、人権のための国際的行動について国連で進められている話し合いと、アフリカを中心的議題とするスコットランドでのグレンイーグルズ・サミットに向けた準備に反映されます。

「2005年は、MDGs達成に向けた私たちの取り組みにとって重要な年です」。コフィー・アナン国連事務総長は、報告書の前書きでこのように述べています。「世界の指導者は今度こそ、目標を定めるのではなく、それをどのように達成するかを決めなければなりません」

MDGsをはじめて明確に定めた「ミレニアム宣言」から5年が過ぎ、また、ほとんどの目標の達成期限を10年後に控え、国連総会は9月に予定されるサミットで、ミレニアム宣言の全領域に関する進捗状況を審査することになります。

『ミレニアム開発目標報告2005(Millennium Development Goals Report 2005)』によれば、1990年以来、開発途上地域で人口が8億人以上増えているにもかかわらず、極端な貧困の中で暮らす人々の数は全世界で1億3,000万人減りました。

人類の古くからの敵である貧困は、歴史上どの時代とも比べものにならない速さで減少しています。その先頭に立つ東アジア、東南アジア、南アジアの諸国では、極貧人口が1990年以来、2億3,000万人も減りました。ラテンアメリカ・カリブ海地域でも大きな前進が見られます。

このような改善が見られる一方で、サハラ以南アフリカをはじめとする他の地域では、極貧人口が1990年の2億2,700万人から、2001年には3億1,300万人へと増大しています。これらを総合すれば、10億人(開発途上国人口の5人に1人)が依然として、1日あたり所得が1ドル(1993年基準米ドル)という極貧ライン以下で暮らしていることになります。サハラ以南の極端に貧しい人々を見ると、1日あたり平均所得は実際のところ、1990年の62セントから2001年には60セントへと落ち込んでいるのです。

それでも、世界人口に占める極端に貧しい人々の割合が1990年の28%から2001年の21%へと減少したことは、1990年以来の傾向が続けば、極貧人口の半減という目標が2015年という期限を待たずに、全世界で実現できることを意味しています。

母子の死亡率

国連によれば、どのような尺度をもってしても、母子死亡率削減の進展は受け入れがたい状況にあります。

1960年から1990年にかけ、開発途上国では、5歳未満の幼児死亡率引き下げに大きな前進が見られました。しかし、その後の前進は鈍く、さらに2015年までに5歳未満の幼児死亡率を3分の2減らすという目標は、達成が危ぶまれています。予防接種など、安価な予防と治療の措置を幅広く導入すれば、年間数百万人の幼い命が救えるはずです(グラフを参照)。

データを見ると、多くの開発途上国では、出産時に死亡する女性の数が減っていますが、妊産婦死亡率は正確な統計がもっとも得にくい項目の一つです。開発途上国では、出産10万件あたり450人の妊産婦が死亡していますが、先進国ではこの数が14人にすぎません。女性の出産回数が多い国々では、ほとんどの女性が何度もこの危険に直面します。生涯を通じ、開発途上国の女性が出産時に死亡する確率は、先進国の女性よりも63倍高いのです。熟練助産婦がいれば、生存の確率は大きく改善します。しかし、助産婦の補助による出産の割合は、1990年の41%よりは上昇しているものの、2003年の時点でまだ57%にすぎません。

もう一つ、取り組み不足の懸案事項として、開発途上国では半数の人々が改善型衛生設備を利用できないことが挙げられます。その影響は、病気にかかりやすくなることだけにとどまりません。例えば、衛生設備が利用できないために、女児が学校を中退せざるを得ないことがあります。きれいな水へのアクセスが改善されていることに比べ、衛生設備への取り組みの遅れは際だっています。

2005年は決断の年

出生1,000人あたりの5歳未満幼児死亡率、1990年、2003年比較

今回の報告は、MDGsに関連する目標値や指標について、もっとも包括的な最新統計を提示するものですが、データの集計には25の国連機関と国際機関が協力しました。その内容は貧困、保健、教育、男女平等のほか、環境の持続可能性とスラム、さらには貿易、援助、債務の問題も対象としています。

1990年代の一連の国連グローバル開発会議以来、人間の福祉にかかわるさまざまな分野で見られた進展は、国際協力と開発援助に各国国内での政策刷新が加われば、十分な成果が上がることを物語っています。よって、生死にかかわるニーズが十分に満たされていないという現状は、どれだけのチャンスを逃したか、そして、不十分な取り組みの代償がどれだけ大きかったかを如実に示す結果といえます。

国連加盟国は現在、9月に予定される2005年世界サミットに向けた準備の一環として、貿易、援助、債務救済を含め、MDGsの目標値を達成する手段についての合意を目指す交渉を進めています。事務総長は2005年の報告書『より大きな自由を求めて(In Larger Freedom)』(http://www.un.org/larger-freedom/)の中で、開発、安全保障、人権の諸課題を関連づける勧告を行っていますが、加盟国間の話し合いはこれに応えて行われているものです。一方、事務総長報告書のほうは、ミレニアム・プロジェクトがMDGs達成に必要な手段をとりまとめて2005年に発表した『開発への投資(Investing in Development)』を土台として作成されています。

特にアフリカでのMDGs達成に向けた前進は、英国の主催で7月に行われるG8サミットでも、議題の最優先項目に掲げられています。3週間ほど前にはEU15カ国が、2015年までに国民所得の0.7%をODAに当てるという国連目標の達成を誓約しましたが、MDGs達成の必要性が差し迫っていることは、その重要な根拠となりました。

6月27、28の両日には、開発資金と2002年モントレー合意のフォローアップに関し、国連総会でハイレベル協議が予定されています。『ミレニアム開発目標報告』はここでも重要な検討資料となるでしょう。

報道関係の問い合わせ先:

国連広報局(United Nations Department of Public Information)
Tim Wall, wallt@un.org, (212) 963-5851
Mabel Brodrick-Okereke, brodrick-okereke@un.org, (212) 963-3771

国連児童基金(United Nations Children’s Fund)
Kate Donovan, kdonovan@unicef.org, (212) 326-7452

国連開発計画(United Nations Development Programme)
Mattias Johansson, mattias.johansson@undp.org, (212) 906-5344

国連人口基金(United Nations Population Fund)
Abubakar Dungus, dungus@unfpa.org, (212) 297-5031

ウェブサイト:

国連ミレニアム開発目標報告書全文
http://millenniumindicators.un.org/

国連ミレニアム・キャンペーン事務所
http://www.millenniumcampaign.org/

国連ミレニアム・プロジェクト
http://www.unmillenniumproject.org/

記者会見のウェブキャスト
http://www.un.org/webcast/

 

出生10万件あたり妊産婦死亡率、2000年

 

 

国連ミレニアム開発目標(MDGs)関連スケジュール

2000年9月 ニューヨークの国連ミレニアムサミットで、加盟国189カ国がミレニアム宣言を採択
2001年9月 事務総長が総会に「ロードマップ」を提出。MDGs達成に向けた進捗状況を監視する国連初の統計枠組み。
2001年12月 総会、国連システムと加盟国によるミレニアム宣言実施に向けた進捗状況に関する年次報告書の作成を事務総長に要請。
2002年3月 国際開発資金会議、モントレー合意を承認。MDGsをはじめ、国際的に合意された開発目標達成に向けたパートナーシップ重視の姿勢を打ち出す。米国とEUはODA増額を誓約。
2002年10月 事務総長、ミレニアム宣言に関する第1回年次報告を提出。MDGs達成に向けた進捗状況を示す統計データを添付。
2004年12月 事務総長の「脅威・挑戦・変革に関するハイレベル・パネル」報告書、貧困緩和とMDGs達成を「より安全な世界」に不可欠な柱と認定。
2005年1月 ミレニアム・プロジェクト報告書『開発への投資』、MDGs達成に向けた詳細な計画を提示。援助国が国民所得の0.7%をODAに当てるべきとする国連目標を支持。
2005年3月 事務総長、報告書『より大きな自由を求めて』を発表。MDGsとODAに関する0.7%目標の達成を含め、万人にとっての開発、安全保障、人権の実現に向けた計画を提示。
2005年5月 EU閣僚、加盟国のうちもっとも豊かな15カ国が2015年までに0.7%目標を達成することを誓約。
2005年6月 総会、開発資金とMDGsに関する会合を開催(6月27~28日)、経社理ハイレベル協議(6月29~30日、7月1日)では開発目標が検討テーマに(開催場所はともにニューヨーク)。総会、MDGsを含むミレニアム宣言問題に関し、NGO、市民社会、民間セクターと非公式な公聴会を開催。
2005年7月
6~8日
G8諸国、スコットランドでグレンイーグルズ・サミット開催。アフリカと地球温暖化をはじめ、MDGsが重要議題に。
2005年9月
14~16日
ニューヨークで2005年世界サミット。ミレニアム宣言とMDGsに関し、過去5年間の進捗状況を審査。事務総長は報告書『より大きな自由を求めて』で詳しい提案を提示。
2005年 初等・中等教育における男女不平等解消に関するMDGs目標値の達成期限。
2015年 その他MDGs目標値の達成期限。
国連広報局作成 DPI/2390A – June 2005