国連防災世界会議が閉幕、今後10年間の行動計画を採択
~自然災害に対する抵抗力の強化を約束~
プレスリリース 05/012-J 2005年01月22日
兵庫県神戸-当地で開催されていた国連防災世界会議は、各国が自然災害に襲われやすい数百万人のリスクを軽減することを約束し、きょう閉幕しました。23万人もの命を奪ったインド洋の津波災害から1ヵ月足らずで開催された会議では、より安全な世界の実現を誓う声が地球的規模で沸き起こりました。
「よい行動枠組みが出来上がりました。今後10年間でリスクを軽減し、自然災害に強い世界を作るため、一連の具体的目標が掲げられているからです。」こう語るのは、国連のヤン・エーゲラン人道問題担当事務次長です。
きょうの閉会式では、世界中から参加した168の代表団が行動枠組みを採択し、防災を政治課題と国家政策の中心に据えるよう、各国に呼びかけました。この「兵庫行動枠組み:2005-2015(Hyogo Framework of Action: 2005 – 2015)」は、災害に見舞われやすい国々がリスクに取り組み、防災に多くの投資を行う能力を強化することになります。「この新たな計画は、私たちの知識と実践とのギャップを縮めるのに役立つでしょう。肝心なのは政治的なコミットメントです。」エーゲラン氏はこのように述べています。
1週間にわたる会議で議長を務めた村田吉隆・防災担当相は、閉会式で次のように発言しました。「神戸でのこの5日間は、私たちの災害、リスク、そして脆弱性に対する見方を大きく変えることになるでしょう。私たちは本当の意味で、より安全な世界に向けた一歩を踏み出すのです。」
また、行動枠組みとともに防災会議で採択された宣言では、「防災の文化と災害への抵抗力」をあらゆるレベルで育成しなければならない、などの提言を行い、防災、持続可能な開発、貧困削減は全て関連しているとの認識を示しています。
これらの文書には拘束力こそありませんが、国家や個人による災害に強いコミュニティ作りの「青写真」としての役割を果たせるでしょう。10年前に横浜で生まれた合意をたたき台としながら、今回の計画は国際社会に対し、持続可能な開発を目指す総合的な防災アプローチを追求し、災害の件数と被害の規模を縮減するよう呼びかけています。
「短い時間で膨大な仕事をこなす必要があります。このグローバルな課題の克服に向かって進むためには、協力的なパートナーシップが欠かせません。」エーゲラン氏は閉会式でこのように発言しました。
神戸で発足したパートナーシップは防災関連の国連諸機関に対し、市民社会や政府と密接に連携しながら、弱者への自然災害の影響を軽減する本格的なイニシアチブを作り上げるよう求めています。
防災会議と並行して、専門的なテーマ別分科会も開かれましたが、その中では、よいガバナンス、環境マネジメント、教育などの主題が取り扱われました。「分科会では専門家が政府と連携し、今後10年間について極めて具体的な一連の指針が出来上がりました。国連国際防災戦略(ISDR)では、さらにその詰めを行います。」こう語るのは、ISDRのサルバノ・ブリセーニョ事務局長です。
干ばつ、山火事、洪水、台風、ハリケーン、地すべり、噴火、津波など、あらゆる自然災害への抵抗力を強めるため、「国際早期警報プログラム」も発足しました。国連によるこのイニシアチブは、情報の普及を図る一方で、人間中心の早期警報システムとコミュニティでの防災教育の重要性も強調しています。
防災会議では、先月のインド洋での津波災害を受け、特別セッションも開催。各代表は国際・地域協力の重要性を強調し、インド洋地域への津波早期警報システム設置に向けた支援を約束しました。新たな警報システムは、太平洋津波早期警報システムの経験に依拠しながら、国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間海洋学委員会の既存の調整メカニズムを活用したものとなります。
また、洪水に見舞われる地域に暮らすコミュニティの備えを固めるため、国際洪水対策イニシアチブも発足しまし。この計画は、つくばの訓練・研究センターが調整役となり、運営面だけでなく、社会的意味合いも加味しながら洪水リスクの軽減を図ることになっています。
自由参加型の「地震リスク軽減・地震メガシティ・イニシアチブ支援同盟(Alliance to support Earthquake Risk Reduction and Earthquake Megacities Initiative)」も発足。全世界の「メガシティ」の市職員が集まり、都市防災計画を策定してゆくことになりました。
さらに防災会議の結果、政府、国連諸機関、専門学術研究機関のパートナーシップも生まれました。ユネスコ主導の「教育に関する連合(Coalition on Education)」は、学校プログラムに防災教育を取り入れ、校舎をより安全にする取り組みの先頭に立つことになります。
「来週、世界がより安全な場所になるとは限りません。しかし、私たちはすぐにでも力を合わせ、この会議での約束を実現してゆかなければならないのです。」エーゲラン氏はこのように述べました。
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UN/ISDR 2005/07