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事務総長、「エンパシー(共感)ギャップ」に警鐘を鳴らし、宗教指導者に不正義と残虐性に対して声を上げるよう促す

2015年04月28日

国連総会で開かれた「寛容と和解の促進、平和的かつ包摂的な社会づくり、暴力的な過激主義に関するハイレベルテーマ別討論」には、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教など多様な宗教を代表する指導者らが出席した©UN Photo/Eskinder Debebe

 

潘基文(パン・ギムン)事務総長は2015年4月22日、国連総会に集まった宗教指導者に、公共善のために立ち上がり、関係改善と相互理解を支持する声を広げるよう促すとともに、「エンパシー(共感)ギャップ」によって人々が不正義から目をそらし、残虐行為に無関心になりつつあることを懸念すると警鐘を鳴らしました。

「非常に深刻な分裂と憎悪に直面している今、私は国連の名の下に人々を結集させて、最善の対策を導き出したいと考えました」。事務総長はニューヨークの国連本部で開かれた、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教など多様な宗教を代表する指導者たちが集う会合の2日目にこう述べました。会合には、閣僚、学術関係者、精神的指導者らも参加しています。

事務総長は、現在の社会が、自分たちへの侮辱にはすぐさま反応するが、他者の正当な不満は無視や軽視することを、深く憂慮すると述べました。「残虐行為を繰り返し目にすることで、ある程度の無感覚や無力感が浸透しかねないことを懸念します」と話しました。

「宗教が暴力を生み出すのではありません、人間が生み出すのです」と事務総長は続けました。「今日私たちは、このきわめて重要な取り組みにおいて、人間として何ができ、また何をしなければならないのかを話し合います」。事務総長は国連総会の「寛容と和解の促進、平和的かつ包摂的な社会づくり、暴力的な過激主義に関する(Promoting Tolerance and Reconciliation, Fostering Peaceful, Inclusive Societies and Countering Violent Extremism)」ハイレベルテーマ別討論で、こう述べました。この討論は4月21日から2日間にわたり開催されました。

事務総長は「人間の尊厳と価値、男女平等の権利、寛容、互いに調和した暮らし…こうした基本原則は私たちが礎とするものであり、これらこそ国連が擁護するものです」と強調しました。

しかし、こうした価値観は暴力的過激主義や「破綻したイデオロギー」によってないがしろにされています。このような暴力的過激主義は国境を越えます。イラクとレバントのイスラム国(ISIL)、アル・シャバブ、ボコ・ハラムなどの宗教集団が残虐行為を繰り返しています。

移住者はその格好の標的となりやすく、偏見は過激主義に、民族主義は大虐殺に「直結」していると、事務総長は述べました。ホロコーストの後、国連が創設され、「世界は決して繰り返さないと誓いました…が、私たちは不正義を何度も目にしています」

人間の持つ矛盾とは「もっとも残虐な行為も、思いやり、寛容、和解も可能であるところです」と事務総長は指摘し、「今日、私は皆様の英知とリーダーシップを求めます」と添えました。

事務総長は「私たちは皆様に不寛容への対応策として対話を促していただきたいのです。皆様の声はヘイト・スピーチに対抗し、妥協点を見いだすのに不可欠になるでしょう。宗教指導者はコミュニティーの最前線にいるため、皆様の多くが急進勢力を目にしています。皆様の影響力を行使して、関係改善と相互理解を支持してください」と話しました。

過激主義の根本原因に対処することも同様に重要です。虐待や尊厳を傷つける行為が人を宗教的武力集団への加入へと向かわせます。事務総長はこう述べ、指導者たちに別の方法、すなわちもっとよい方法 ― 平等、機会の拡大、人権の擁護など ― を確保するよう求めました。

今年、「暴力的過激主義の防止を図る国連行動計画(UN Plan of Action to Prevent Violent Extremism)」を策定するつもりであることも発表しました。それと同時に、宗教指導者は、過激主義者の説話に対抗する声をあげなければなりません。

事務総長は「ミサイルはテロリストを消滅させるかもしれませんが、テロリズムを消滅させるのはグッド・ガバナンスだと私は確信しています」と述べ、人権侵害や社会的不正義を目の当たりにした場合はもれなく、それらを非難するよう会合で促しました。「皆様、穏健な多数派の声を広めるために、もっと行動を起こしてください。そうすれば、暴力と憎悪を説く者たちの声をかき消すことができるでしょう」

国際社会は人間が自由に考え、発言し、信仰する権利を擁護しなければなりません。今日集まった宗教指導者には、その話に耳を傾ける大勢の人々がおり、多大な影響力と計り知れない責任があります。

「私たちは共に立ち上がり、国連憲章の定めに応じて戦禍から次の世代を救い、人権を再確認し、社会の発展とより大きな自由の中での生活水準の向上を促すことができます」と事務総長は締めくくりました。

同日、事務総長は報道陣に対し、宗教指導者は「宗教的分裂を収拾させ、急進勢力に対抗する」上で中心的役割を担うことができると述べました。

さらに、「だからこそ、私は国連で様々な宗教を持つ人々に協力してもらい、私たちの誰もがそうした暴力を憎んでいることを表明したかったのです」と話し、国際社会に指針を与えるための宗教指導者による諮問委員会の設置を約束しました。

事務総長は「各国政府が人権を尊重し、不満を表明できる機会を国民に与えれば……暴力的過激主義への関心はしおれ、平和と繁栄が育つでしょう」と加えました。

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