国連寄託図書館をご存知ですか
― 第43回国連寄託図書館会議、実施報告 ―
2011年09月07日
皆様は、国連寄託図書館をご存じでしょうか。
国連寄託図書館とは、国連の認定を受けて、国連の公式文書や刊行物を国連から収受し、地域の皆さまの利用に供する図書館のことです。
世界各地のおよそ400館ほどが指定され、日本においては現在、以下の13館が指定されています。
北海道大学付属図書館、東北大学付属図書館、国立国会図書館、中央大学図書館、東京大学総合図書館、日本大学国際関係学部国際機関資料室、金沢市立泉野図書館、京都国連寄託図書館(立命館大学明学館1F)、神戸大学国連寄託図書館、広島市立中央図書館、福岡市総合図書館、西南学院大学国際機関資料室、琉球大学付属図書館。
これら図書館には、国連総会や安保理などの過去の会合の内容を記録した議事録や決議、報告書、および人口や貿易などの統計年鑑、さらに、国連が直面するさまざまなテーマの下に出版される販売刊行物が置かれ、国連寄託図書館担当の司書が依頼に応じ、レファレンス・サービスも提供します。
最近では、国連寄託図書館は国連資料の収蔵や参考調査サービスを超えて、アウトリーチ活動の展開が期待されるようになり、多くの図書館が国連デーやその他の国際デーなどの機会を利用して、展示、講演会、セミナー、ガイダンスなどを催したり、スタンドアップ・キャンペーンに参加したりしながら、国連情報の発信拠点として活発に活動しています。
国連においては広報局(DPI)が国連寄託図書館制度の担当部局となっていることから、国連広報センターは、これら図書館とのパートナーシップを構築し、アウトリーチ活動を奨励、支援しており、毎夏9月には丸2日間にわたって、集中的な訓練研修のための会議を催しています。
2011年度の会議は9月1日(木)、2日(金)に開催されましたので、以下、簡単にご報告いたします。
会議初日の午前中、まずは国連広報センターの山下所長が大局的見地から、国連の現在の優先課題を概説。それに続いて、妹尾広報官から国連広報センターの活動および図書館のアウトリーチ活動への期待などを説明しました。そして、その他の職員も自らの具体的な仕事を紹介しながら、国連広報センターと国連寄託図書館のパートナーシップの協力拡大のためのヒントを提示しました。
そのあと午後には、国連寄託図書館から過去1年間の活動報告がなされ、各館から、貧困根絶をめざすスタンドアップ・キャンペーンへの参加、講演会やセミナー開催、職場体験事業を通じた子どもたちへの国連文書案内、国際年にちなんだイベント・展示、ニュースレターの発行など、それぞれが企画、運営する様々な活動が発表されました。また、東日本大震災により数万冊の収蔵書が書架から落下し、その復旧に苦労されたことなどの話も紹介されました。
それに続いて、国連寄託図書館が向こう一年間のアウトリーチ活動のための具体的な目標や課題を考えるワークショップが行われました。各館が小グループに分かれ、知恵を絞り、話しあい、それぞれの考えや具体的な計画などを発表しました。
次に、初日の終わりから2日目にかけては、国連職員や外部講師等によって、国連資料に関する集中研修が行われました。
その内容は、ハマーショルド図書館・元課長の佐藤純子氏による「国連のレファレンスツールの歴史とその方向性」および「国連財政に関する情報/資料」、広島修道大学の井上実佳准教授による「国連平和維持活動、その歴史と展望」、国連広報センターの千葉潔職員による「持続可能な開発、リオ20に向けて」、国連大学ライブラリーの松木麻弥子室長や同大学出版部の桜井慎也氏による「主要なUNU刊行物の紹介」など。それぞれ、一時間以上に及ぶ講義が行われ、それぞれのテーマの下、国連情報/資料の分類やしくみが詳しく説明されました。
今年の会議の大きな特徴は何よりも、国連寄託図書館以外の図書館の皆さまの参加を得たことでした。
具体的にご参加いただいた図書館は、FAO寄託図書館、国際協力機構図書館、慶応義塾大学三田メディアセンター、青山学院大学図書館、東京外国語大学付属図書館、国際教養大学図書館、江戸川区立東葛西図書館の7館です。
国連広報センターは現在、これら図書館とも、さまざまな形で協力関係を深めています。
国連ハマーショルド図書館は、今後の国連寄託図書館の方向性を探っていくうえで、「Collectionからconnection(収集から、つながりへ)」という言葉をキャッチ・フレーズに掲げて、ネットワークを通じたアウトリーチ活動の強化の必要を強調していますが、その観点から、今年、国連寄託図書館を超えて、国連専門機関の図書館、公共図書館、私立大学付属図書館の皆さまを交えて、国連のアウトリーチ活動への協力のあり方について、前向きな討議をすることができたことは、とても有意義な進展といえます。
これまで、あまり国連寄託図書館をご存じなかったという皆さまも、ぜひ、この機会に、お近くの寄託図書館を一度ご利用になってみてください。国連やさまざまなグローバル・イシューに関する資料や文書を通して、国際社会と自分をつなぐ扉を開けられるかもしれません。