事務総長、平和構築基金の財政難克服に向けた支援の強化を訴える
2016年09月28日
2016年9月21日 ー 潘基文(パン・ギムン)事務総長はきょう、国連が未曽有の数の紛争と経済危機、さらには気候変動や不平等によって、能力の限界に達しつつあると述べ、国際社会に対し、国連平和構築基金が財政危機に陥ることを防ぐための支援を呼びかけました。
事務総長は平和構築基金拠出誓約会議「平和の持続に投資を」に出席した参加者に対し「平和構築基金がなければ、私たちは、救えたはずのおびただしい数の人命が失われ、さらに数百万人の希望が消えてなくなるのを、黙って見ていることしかできなくなってしまいますと語りかけました。
きょうのイベントでは、26の加盟国が2017年から2019年の期間につき、国連平和構築基金に1億5,100万ドルの拠出を誓約しました。
国連総会と安全保障理事会の要請により、2006年に設置された平和構築基金は、紛争後の平和構築への取り組みに焦点を絞り、現時点で25カ国の120件を超えるプロジェクトを支援しています。創設から2015年末までに、基金は紛争の再発防止と平和の持続を図るため、6億2,300万ドルを33カ国に配分しています。
ケニア、メキシコ、オランダ、韓国、ソマリア、スリランカ、スウェーデンおよび英国の常駐代表団の共催によるきょうのイベントで、事務総長は、長く減少の一途をたどっていた暴力的紛争が再び増加したために、基金が「巨大な課題」に直面しているという現状に、憂慮の念を表明しました。
潘事務総長は「国家間の戦争が少なくなる一方で、国内で紛争が生じており、その中には国際的な関与や非国家主体の関与があるケースも多く見られます。こうした趨勢によって、国連システムの能力はほとんど限界に達しています」と述べました。
また、事務総長は「私たちは、国連憲章の冒頭にある『戦争の惨害から将来の世代を救う』という高尚な使命を果たせていないのです」と付け加えています。
ケニア、メキシコ、オランダ、韓国、ソマリア、スリランカ、スウェーデンおよび英国の常駐代表団が共催するハイレベル平和構築基金拠出誓約会議「平和の持続に投資を」で、各国代表団に配布された文書。UN Photo/JC McIlwaine
事実、事務総長によると、2015年だけでも、国連による平和維持と、紛争被災者や難民に対する人道支援に340億ドルが費やされていると見られます。事務総長は「この状況は持続不可能」であることを強調しました。
事務総長は「専門家は、昨2015年中の暴力と紛争による費用が、全世界で約13.6兆ドルに達していると見ています。これは世界人口1人当たり1,800ドルを超える額に相当します。にもかかわらず、私たちは紛争予防と平和構築に向け、そのうちのわずかな割合の金額を調達することにさえ、困難を覚えているのです」と語っています。
事務総長によると、持続可能な開発のための2030アジェンダと気候変動に関するパリ協定から、平和活動の見直し、世界人道サミットに至るまで、この一年間の合意と再検討は、国連がそのアプローチと作業方法を変えなければならないことを示しています。
事務総長は「従来の私たちのツールには、時代遅れとなっているものがあります」と強調しています。「紛争の根本的原因に緊急に取り組む必要性は、これらプロセスを一貫して流れる共通観念であり、4月に総会と安全保障理事会が採択した持続可能な平和に関する画期的な共同声明は、その集大成といえます。」
事務総長によると、国連はこのような状況で、縦割りの壁を切り崩して部局・機関間の風通しを良くし、共同の分析を強調し、集団的な結果を出せるような計画を策定するとともに、世界銀行とも密接に連携することにより、「加盟国が明確に表明した意志を実行に移すべく、懸命に努めて」います。
このようなアプローチにおいて、平和構築基金には演ずべき「不可欠な役割」があることを事務総長は明らかにしました。他者にとってはリスクが大きすぎ、投資できないプロジェクトに資金を提供することによって、全世界の数百万人を支援しているからです。事務総長はまた、基金が数日内に対応し、文脈に応じて資金供与を調節することも可能だと述べました。
潘事務総長は「平和構築基金は、25以上の国連機関とその他のパートナーに資金を配分し、これらの協力を促すことにより、一貫性を高める役割も果たしています。プロジェクトで女性と若者を支援し、しかも50カ国を超える多様なドナー基盤を有するという意味で、基金は包摂性も備えています」と語っています。
事務総長は「ところが、平和構築基金の優れた実績にもかかわらず、この不可欠な資金は底をつきかねない状況にあります」と付け加え、少なくとも年間1億ドルの拠出がなければ、平和構築基金はその最も基本的な任務を果たせないことを強調しました。
潘事務総長によれば、きょう要請された資金の拠出があれば「紛争への支出と平和への支出の間にある不均衡の是正」に着手することができます。
「何もしないという選択肢を選べば、悲惨な結果が生じかねません。私はきょう、後任の事務総長が平和構築基金を最大限に活用し、その不可欠な任務を遂行できるようにすることを、皆様に強く訴えます」事務総長はこのように述べ、発言を締めくくりました。
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