記録的な二酸化炭素排出と北極氷原の溶解により、2016年は史上最も暑い年に
2016年11月17日
2016年11月14日 – 国連の気象機関によると、地球の平均気温が産業革命以前と比べて摂氏約1.2度上昇する中で、2016年は史上最も暑い年となる見込みです。これには昨年暮れに発生した激しいエルニーニョ現象も関係しています。
継続的な動向を見る限り、これまでで気温が最も高かった17年のうち16年は、今世紀に属しています(1998年は例外)。記録を更新している気候変動指標は、気温だけではありません。大気中の温室効果ガスの濃度も記録を塗り替え続けているほか、北極海の氷原も、今年初めと、再凍結が始まる10月の2つの時期をはじめとして、極めて薄い状態が続いています。今年はグリーンランドでも、氷床の大規模で異常に早い溶解が見られました。
ペッテリ・ターラス世界気象機関(WMO)事務局長はプレスリリースを発表し、エルニーニョによる猛暑の影響がなくなってからも、地球温暖化は続くだろうと警告しました。
ターラス事務局長によると、ロシア北極圏の気温は長期平均を摂氏6度から7度も上回っているのに加え、ロシアやアラスカ、カナダ北西部のその他北極圏や亜北極帯地域でも、気温が平年よりも3度以上、高くなっています。
ターラス事務局長は「気温の記録を小数点以下で更新されることは、もう当たり前になっています」と語ります。
WMOの調査結果を見ると、気温の上昇が最も顕著な北半球では、陸域の90%超で気温が平年よりも摂氏1度以上、高くなっていますが、アフリカ南部の大半と、その他南半球のいくつかの地域でも、同じ傾向が確認できます。
海水温も平均を上回っているため、大規模なサンゴ白化現象や生態系の混乱も進んでいます。中でもグレート・バリア・リーフの一部では、全体の50%ものサンゴが死んでしまいました。その一方で、南米と南極大陸を隔てるドレーク海峡周辺をはじめとする南洋では、水温が平年を下回っています。
海水面は2014年11月から2016年2月までの間に、約15ミリメートル上昇しましたが、これは1993年以来のトレンドである年間3~3.5mmの5倍に相当します。
ターラス事務局長は「記録的な時間で、記録的なグローバル・コミットメントを受けて発効」し、全世界の憂慮すべき動向に対応するうえで欠かせないパリ協定の実施に対するWMOの支援について触れました。昨年12月に採択されたこの協定は、今年の11月4日に発効しています。
10月初旬、パリ協定は、全世界の二酸化炭素排出量のうち55%を占める55カ国という最終的な発効基準をクリアし、1カ月以内に発効することとなりました。特に、協定が多数の国々による批准と、2つの具体的な発効基準を要求していることを考えれば、その発効は極めて速やかだったといえます。
事務局長は「気候変動によって、異常気象の発生件数と影響は高まっています。『一生に一度』と思われていた熱波や洪水が、より定期的に起こるようになっています。海水面の上昇は、熱帯低気圧による高潮の危険性も高めています」と述べています。
事実、2016年には、最多の死傷者を出した10月のハリケーン「マシュー」をはじめ、異常気象による大きな影響が見られています。また、台風やサイクロン、アジアとアフリカ全土での洪水、大規模な熱波、カナダで史上最悪の被害をもたらした山火事、大規模な干ばつも発生しました。
WMOは、温室効果ガス排出量の監視を改善し、その削減を目指す各国の実効的措置に対する支援に努めています。
ターラス事務局長は「数週間から数十年間の単位で気候予測を改善すれば、農業、水管理、健康、エネルギーのような主要部門が将来に備え、適応するための助けとなるでしょう」と説明しています。
さらに事務局長は「インパクト・ベースの気象予報や、早期警報システムは今後とも、人命を救うことになるでしょう。特に開発途上国の災害早期警報と気候サービスの能力を強化する必要性が高まっています。これは、気候変動への強力な適応方法となります」と明言しました。
現在、モロッコのマラケシュで開催中の国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(略称COP22)の一環として、WMOは国連パートナーからの情報提供も受けつつ、初めて気候変動の人道的影響の評価を含む暫定報告書を発表しました。最終報告書は来年早々に発表される予定です。
WMOは、国際移住機関(IMO)と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による結論に異常気象を関連づけています。これによると、2015年には113カ国で、気象、水、気候および地球物理学に関連する災害により、1,920万人の避難民が新たに発生しています(2016年のデータはまだ不明)。この数は、人間による紛争や暴力によって避難を余儀なくされた人々の2倍を超えています。
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