写真で見るアントニオ・グテーレス - 他者への奉仕を生涯の仕事として
2016年12月28日
2016年12月11日-ポルトガル出身のアントニオ・グテーレス氏は2016年10月13日、国連総会による任命を受け、間もなく国連事務総長に就任します。グテーレス氏の任期は2021年12月31日までの5年間となっています。
67歳のグテーレス氏は、1995年から2002年にかけてポルトガル首相、2005年6月から2015年12月にかけて国連難民高等弁務官を歴任しました。
グテーレス氏は世界のトップ外交官への就任を前に、国連職員との深い連帯感と、全世界で職員とともに活動できることに対する期待感を表明しています。
次期事務総長に指名されたグテーレス氏は「この選任プロセスできょう、真の勝利を収めたのは、国連の信頼性であると私は信じています。また、すべての加盟国によって選ばれた事務総長として、私が各国に対し平等に、国連憲章に謳われたアジェンダのみに基づき奉仕せねばならないことも、極めて明らかになりました」と述べています。
リスボン:未来の国連事務総長、誕生の地
1949年にポルトガルの首都リスボンに生まれ、この地に育ったアントニオ・マヌエル・デ・オリヴェイラ・グテーレス氏は1971年、Instituto Superior Tecnico(インスティトゥト・スペリオール・テクニコ:工科大学)を卒業しました。
数か国語に通じた政治家、そして豊かな経験を持つ指導者
ポルトガル語、英語、フランス語、スペイン語に堪能なグテーレス氏は、政府と公務で20年を超える経験の持ち主です。1976年に初当選を果たしてから17年間、ポルトガルで国会議員を務めました。
1995年、グテーレス氏はポルトガルの首相に就任しました。その後7年間の任期中には、東ティモール危機の解決にも積極的に関与しました。
最も脆弱な立場にある人々とともに過ごした10年
2005年6月から2015年12月にかけ、グテーレス氏は国連難民高等弁務官(UNHCR)を務めました。125カ国に1万人近くの職員を展開する世界最大の人道支援機関の一つをグテーレス氏が率いていた時期に、UNHCRの活動規模は3倍に拡大しました。
国連、次期事務総長を見出す
2016年12月13日、国連総会は全会一致で、グテーレス氏を次期国連事務総長に任命しました。グテーレス氏は2017年1月1日、任期5年で世界のトップ外交官に就任します。平和、正義、人間の尊厳、寛容、連帯という価値に対する信念は、グテーレス氏が難民や紛争地帯の人々をはじめとする社会的弱者の苦痛の緩和に重きを置いていることによく表れています。
新たな事務総長、新たなアプローチ
次期国連事務総長は、平和と安全、持続可能な開発、人権という3本柱の関連性を相互に補強するため、包括的なアプローチを採用する必要性を認識しています。グテーレス氏は「開発なくして平和はなく、平和なくして開発がないことは、広く認識されていますが、もう一つ言えるのは、人権の尊重がなければ、平和も持続可能な開発もないということです」と述べています。
政治的解決を第一に
人道問題には、政治的解決の道しかないと確信するグテーレス氏は、国連が「あらゆる段階で政治的解決を第一に考え、予防的アプローチを推進し、人権を中心的要素として取り込むとともに、女性と女児の包摂的な関与とエンパワーメントを図る」べきであると強調しつつ、「女性の全面的参加は、どの和平プロセスの成功にも欠かせない」ことを明らかにしています。
ジェンダー平等は権利と自由の必須要素
グテーレス氏のジェンダー平等の達成に向けた強い決意は、国連が「あらゆる人権と基本的自由と不可分の一体をなす要素として、ジェンダーの平等を目指すグローバルな運動の先頭に立ちながら、女性と女児を保護の対象として捉えることから、そのエンパワーメントを推進することへ、また、女性に対する個々の注目から、中心的要素としてのジェンダー主流化へと軸足を移さねばならない」という主張にはっきりと表れています。
平和への新たな誓い:外交の活性化
世界が危機の予防よりも、その管理に多くのエネルギーと資源を費やしていることを指摘するグテーレス氏は、「予防の文化」を構築することの必要性を痛感しています。この関連において、国連の斡旋と調停の能力は、グテーレス氏が優先課題にすると述べている「平和のための外交の活性化」の中で「誠実な仲介者、橋渡し役、そして平和のメッセンジャーとして」の役割を果たすことになります。
また、次期事務総長は、平和維持と平和構築が、予防、紛争解決、平和維持、平和構築および長期的開発を包含する包括的、現代的かつ効果的な平和活動の体制、すなわち「平和の連続体」をつくるための「またとない機会を創造する」とも述べています。
次期事務総長は、不寛容や暴力的過激主義、急進化に対抗する総力の結集を図るうえで、価値を議論の中心に据えることを重視しています。グテーレス氏は「必要な場合には、国連憲章に従って武力を行使しなければなりません」と述べたうえで、次のように付け加えています。「それは価値を守るための闘いでもあるのです」
パートナーシップ、改革、イノベーションは不可欠
グテーレス氏は、多国間主義を効果的なものにするためには、国連が地域機関、国際金融機関、そして市民社会と民間セクターという3つのレベルで強力なパートナーシップの文化を育成することが必要であると確信し、「グローバルな整合性を確保するためには、あらゆるレベルで戦略的協力を常に維持することが必要」と強調しています。
グテーレス氏は、事務総長が遂行と結果を志向したうえで、改革やイノベーションを推進しなければならないと主張し「国連の未来は、変化と適応を受け入れる姿勢によって決定されるでしょう」と述べています。さらにグテーレス氏は「国連旗の下で活動するあらゆる要員に最高の倫理的基準を課す」ことなどにより、「揺るぎない決意をもって透明性、アカウンタビリティーおよび監督の確保に努める」ことを約束しています。
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