IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』に関する アントニオ・グテーレス国連事務総長声明 (ニューヨーク、2018年10月8日)
プレスリリース 18-069-J 2018年10月11日
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は本日、1.5°Cの地球温暖化に関する待望の特別報告書を発表しました。
世界をリードする気候科学者によるこの報告書は、世界に向けて大きな警鐘を鳴らしています。気候変動が私たちよりも速く進み、私たちには時間がなくなっていることが確認されたからです。
異常気象の増大、海水面の上昇、北極海氷の後退など、気候変動の影響は私たちの周囲の至る所に現れています。科学者たちは、1.5°Cと2°Cの気温上昇の差について、これまでで最も明瞭な全体像を描いています。
0.5°Cの温暖化の差は、世界をまったく違うものにしてしまいます。
この差によって、数千万人をさらに多くの熱波が襲うことになります。生物種の消失は一気に増加します。世界で最も不安定な場所のいくつかでは、水不足がさらに広がります。夏に北極海が氷結しない現象は10倍に増えます。そして、世界からサンゴ礁が完全に姿を消してしまいます。
報告書は同時に、温暖化を1.5°Cに止めることはまだ可能であることも示しています。
しかしそのためには、2030年までに二酸化炭素排出量を半減させ、2050年までに正味のゼロ・エミッションを達成するという、大幅に野心的な緊急対策がさらに必要となります。
それは、社会のあらゆる側面、特に土地やエネルギー、産業、建築、輸送、都市などの主要部門で、かつてない変革を行うことを意味します。
具体的に言えば、私たちは森林破壊を止めて数十億本の植林を行い、化石燃料の使用を劇的に減らして2050年までに石炭の利用を段階的に廃止し、風力・太陽光発電の設備を増やし、気候に優しい持続可能な農業に投資するとともに、炭素の回収・貯留などの最新テクノロジーを検討する必要があります。
これからの時期は極めて重要です。私たちは、2020年までに排出量の増大を逆転させるという、パリ協定の約束を果たさねばなりません。
12月にポーランドのカトヴィツェで開催される国連気候会議(COP24)は、もはや失敗を許されない状況にあります。
国際社会はパリ協定の運用に向け、極めて重要な実施ガイドラインに合意せねばならないからです。
私はすべての国に対し、カトヴィツェ気候会議を成功させるとともに、野心を高め、国内の気候変動対策計画を一気に強化し、パリ協定の履行を緊急に加速するという、世界のトップ科学者の助言を聞き入れるよう、強く促します。
私たちは気候変動対策という課題に立ち向かい、科学の要請に応えねばならないのです、手遅れになる前に。
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*IPCC プレスリリースの日本語訳はこちらからご覧ください。