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高まる貿易摩擦と政策の不透明性が 経済成長の見通しを損ねている、と国連報告書(2019年5月21日付 プレスリリース日本語訳)

プレスリリース 19-036-J 2019年06月11日

 

グローバル成長の鈍化で、持続可能な開発にさらなる課題

ニューヨーク、2019年5月21日 – ニューヨークできょう発表された「世界経済状況・予測(World Economic Situation and Prospects, WESP)」2019年央報告書によると、貿易摩擦が解決せず、国際的な政策が不透明な状態にあり、景況感が軟化する中で、グローバル経済は幅広く減速しています。

グローバル成長減速の予測は、貧困を解消し、豊かさと社会福祉を推進しながら、環境を保護するという普遍的目標を定める「持続可能な開発のための2030アジェンダ」実施に向けた取り組みに、暗い影を落としています。経済成長の鈍化は、教育や保健、気候変動への適応、持続可能なインフラなどの分野への必須の投資をリスクにさらしているからです。

同報告書によると、あらゆる先進経済国とほとんどの開発途上地域の成長見通しは、内外の要因が重なったことによって悪化しています。1月に発表された予測が下方修正されたことを受け、2018年には3.0%の拡大を見せた世界の総生産の成長率は、2019年には2.7%、2020年には2.9%へと鈍化するものと見られています。

報告書は、世界経済のさらに急激または長期的な成長鈍化の原因となり、開発の前進に大きな打撃を与えかねないダウンサイド・リスクを、いくつか明らかにしています。こうしたリスクとしては、貿易摩擦のさらなる激化、財政状況の突然の悪化、気候変動の影響加速が挙げられます。

「目下の成長鈍化に取り組むためには、さらに包括的でターゲットを絞った政策対応が必要です。ますます明らかになっているのは、持続可能な開発を促進する政策がGDP成長の先を見据え、不平等や不安、気候変動のコストを適切に反映する新しい、さらに大胆な経済実績指標を明らかにする必要があるということです」こう語るのは、国連チーフ・エコノミストを務めるエリオット・ハリス経済開発担当事務次長補です。

激しい貿易摩擦の常態化が、グローバルな成長の脅威に

貿易紛争が解決せず、関税の引き上げが続く中で、2019年の世界貿易の予測成長率は2.7%へと下方修正され、2018年の3.4%から大幅に鈍化しています。報告書は、関税の引き上げと報復の悪循環が進めば、開発途上国、特に影響を被る国の経済に対する輸出エクスポージャーが高い国々に、重大な波及効果が及びかねないと警告しています。国際貿易活動の停滞がさらに長引けば、投資の見通しも悪化し、中期的な生産性の成長にも悪影響が生じるおそれがあります。

金融政策スタンスの緩和で、中期的な金融安定リスクが発生

成長の鈍化とインフレの沈静化を受け、主要国の中央銀行は金融政策のスタンスを緩和しています。こうした最近の金融政策のシフトは、グローバル金融市場と新興経済国への資本流入の安定化に役立ちました。しかし報告書は、金融緩和がさらに長期化すれば、債務累積をさらに助長することによる金融安定への中期的リスク発生などの形で、財政不均衡をさらに悪化させかねないと警告しています。

マクロ経済見通しの悪化で遠のく貧困根絶の可能性

いくつかの主要先進国は、根深い構造的な脆弱性を抱えながら、景気後退からの回復に四苦八苦したり、低成長の経路を抜け出せなくなったりしています。報告書は、アフリカや西アジア、ラテンアメリカ・カリブ地域のいくつかの国で、見通し期間中の1人当たり所得成長が極めて低くなっていることを明らかにしています。これによって、2030年までに貧困を普遍的に根絶するという目標を含め、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に追加的課題が生じています。報告書はさらに、貧困が圧倒的に農村部に多い状態は変わらないものの、貧困根絶をさらに進めるためには、進む都市化を効果的に管理する必要もあると指摘しています。これは特に、アフリカと南アジアに当てはまります。両地域は貧困層の数が最も多いだけでなく、今後20年間で最も急速な都市化を遂げると見られているからです。

カーボンプライシングは気候変動対策にカギを握る要素

自然災害の頻度と強度がともに高まっていることは、特に最も脆弱な経済にとって、気候変動による脅威が強まっていることを示しています。報告書は、地球規模の気候政策について、より強力で調整の取れた多国間アプローチを求めていますが、その中にはカーボンプライシング・メカニズムの利用が含まれています。炭素に価格を付ければ、経済政策決定者は、その消費と生産の環境コストを一部内在化せざるを得なくなります。報告書は、民間セクターで内部CO2価格の採用が進んでいることを明らかにしています。これによって、エネルギー効率が高まり、コストを節減できるだけでなく、企業が予測される政策変更に対する準備態勢を整えられるようにもなります。

 

詳しくは以下をご覧ください
https://www.un.org/development/desa/dpad/publication/world-economic-situation-and-prospects-as-of-mid2019/

メディアのお問い合わせ先:
Dan Shepard, UN Department of Global Communications
e-mail: shepard@un.org, +1 (212) 963-9495

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原文(English)はこちらをご覧ください。