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国連の独立パネル、包摂的なデジタルの未来構築に向けた報告書と提言を発表(プレスリリース日本語訳)

プレスリリース 19-038-J 2019年06月17日

「デジタル協力に関するハイレベル・パネル」の共同議長を務めるメリンダ・ゲイツ氏(左)とジャック・マー氏(右)が報告書を提出(2019年6月10日、ニューヨークの国連本部で)©UN Photo/Eskinder Debebe

国連事務総長の任命した独立専門家グループが、各国政府や民間セクター、市民社会に対し、
デジタル技術の恩恵を最大限に高め、その負の影響を最小限に抑えるよう、緊急な協力を要請

 2019年6月10日(ニューヨーク)-メリンダ・ゲイツ、ジャック・マー両氏を共同議長とする20人編成のパネルは、きょうアントニオ・グテーレス国連事務総長に報告書「The Age of Digital Interdependence(デジタル相互依存の時代)」を提出しました。この中でパネルは、デジタル技術の恩恵をすべての人に届けながら、これに関連する幅広い喫緊の課題にも取り組めるよう、協力の強化を求めています。

報告書は、デジタル技術によってこれまで以上に相互のつながりを深めながら、デジタル・トランスフォーメーションの経済的、社会的、文化的、政治的影響への対処に苦慮している世界の姿を浮き彫りにしています。そして、多国間協力の再活性化を強く求めつつ、これを補完するものとして、市民社会や学界、科学技術者、民間セクターなど、さらに幅広く多様な利害関係者を巻き込んだマルチステークホルダー型アプローチが必要だと論じています。

パネルで共同議長を務めるジャック・マー氏は、次のように語りました。「私たちは新たなデジタル時代の夜明けを迎えています。テクノロジーを活用し、世界の人々にとってさらに豊かな繁栄、さらに多くの機会、さらに大きな信頼を達成するためには、民間セクターや政府、一般市民、学識者、市民社会など、あらゆる当事者間のグローバルな協力が必要です。私たちは特に、さらに多くの女性や若者、農村住民、中小企業、開発途上国がその恩恵を受けられるよう、テクノロジーを包摂的なものとすることに注力せねばなりません。また、若者が過去ではなく、将来に備えられるよう、教育制度を考え直す必要もあります」

パネルは、デジタル時代に誰一人取り残さないこと、そして、デジタル協力とデジタル技術が持続可能な開発目標(SDGs)の達成にいかに貢献できるかが重要だと強調しています。また、データの活用をめぐる協力強化と「デジタル公共財」の開発で、デジタル技術を大規模に使えるようにすることで、SDGsの達成加速を支援すべきだとも論じています。報告書は、モバイルマネー、デジタル認証と行政サービス、電子商取引、安価なインターネット・アクセスについても取り上げる一方で、世界人口の約半数がまだインターネットにアクセスできないか、接続はできても潜在的な可能性のごく一部しか活用できていないという現状も強調しています。

「デジタル技術は、世界の最貧層がその暮らしを一変させることに役立つ可能性がありますが、そのためには、こうした人々が自国の経済的、社会的活動に完全参加することを阻んでいる不平等に取り組むという意志が必要です。開発途上国と社会から隔絶されたコミュニティーは、こうしたテクノロジーの利用方法の決定に発言権を持たねばなりません。そうすることによって初めて、デジタル技術が古い問題を悪化させずに、新たな解決策をもたらすことを保証することができるのです」パネルの副議長を務めるメリンダ・ゲイツ氏は、こう語っています。

パネルは、デジタル時代における人権や人間の主体性、信頼、安全の問題も重視し、ソーシャルメディア上の有害コンテンツやプライバシーの侵害という深刻な問題と、信頼できる安定したデジタル環境の重要性を強調しています。また、サイバー能力の無責任な利用の広がりにより、信頼や安定が損なわれないようにするため、より効果的な対策を講じるよう求めています。人工知能(AI)という重大問題に関し、パネルは自律知能システムを、その決定を説明でき、かつ、人間がその利用の責任を問われる形で設計するよう提言しています。

パネルは、世界的なデジタル協力のための機構の強化を求めています。また、現行の取極めに見られる不備や課題を特定し、ガバナンス機構について3つの潜在的な選択肢を提案しています。報告書の指摘によると、国際社会がゼロからスタートする必要はなく、政府、産業界、技術組織、市民社会のフォーラムやネットワークなどの確立されたメカニズムのほか、現行の規制、さらには規範、ガイドライン、行動綱領などの「ソフト・ロー」も、デジタル協力の基盤とすることができます。

最後に、パネル報告書は下記の5項目につき、提言を行っています。

  • 包摂的なデジタル経済と社会の構築
  • 人的・制度的能力の育成
  • 人権と人間の主体性の擁護
  • デジタルの信頼性、安全性、安定性の促進
  • 世界的なデジタル協力の育成

アントニオ・グテーレス国連事務総長は次のように述べています。「昨年のパネル発足以来、デジタル協力をめぐる環境は変化を遂げてきました。政治家や一部の技術リーダーは、デジタル空間の一層の精査とスマートな規制を公に求めるようになったからです。私はこの報告書が、民間セクター、政府、学界などの間で、こうした問題に関するグローバルな会話を刺激するものと期待しています」

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パネルの提言

包摂的なデジタル経済と社会の構築

  • あらゆる成人が2030年までに、デジタルネットワークのほか、デジタル対応の金融と保健サービスに無理なくアクセスできるようにする。
  • 持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて「デジタル公共財」とデータを共有するためのアライアンスを作り上げる。
  • 女性や社会から隔絶されたグループの全面的なデジタル包摂とデジタルの平等を支援する政策を採用するとともに、デジタル包摂に関する指標を確立、利用する。

人的・制度的能力の育成

  • 各国政府や市民社会、民間セクターがデジタル技術の影響を管理できるよう、地域的、世界的な「デジタル・ヘルプデスク」を設ける。

人権と人間の主体性の擁護

  • 国連事務総長は、既存の人権規範が新規・新興のデジタル技術にどう適用されているのかにつき、グローバルな検討を行う。
  • ソーシャルメディア企業は、各国政府や国際的・国内的市民社会団体、人権専門家と連携し、人権上の懸念に対する理解と対応を図る。
  • 自律知能システムは、その決定を説明でき、かつ、人間にその利用の責任を問える形で設計する。

デジタルの信頼性、安全性、安定性の促進

  • 「デジタルの信頼性と安全性に関するグローバル・コミットメント」を策定し、デジタルの安定性に関する共通のビジョンを形成するとともに、テクノロジーの責任ある利用に関する規範の履行を強化する。

世界的なデジタル協力の育成

  • 国連事務総長は、パネルが提案した選択肢を出発点に、グローバルなデジタル協力に向けた最新のメカニズムを開発するための協議プロセスに便宜を図る。2020年の国連創設75周年を「デジタル協力に向けたグローバル・コミットメント」の契機とする。
  • 協力と規制については、適応可能で包摂的、かつ、デジタル時代の目的に沿ったマルチステークホルダー型「システム」のアプローチを採用する。

 

パネルについて

デジタル技術によってもたらされる変革は、かつてない規模、広がり、そしてスピードで進む一方で、国際協力とガバナンスのための枠組みは、このペースについて行けていない。これに対処するため、国連事務総長は2018年7月、人間の福祉を前進させながら、リスクを軽減できるデジタル技術の潜在的可能性を実現すべく、いかにして私たちの協力を改善できるかという問題に関し、世界的なマルチステークホルダー型の対話を進めるため「デジタル協力に関するハイレベル・パネル」を発足させた。

「デジタル協力」とは、各国政府、民間セクター、市民社会、国際機関、技術関係者や学界がデジタル技術の社会的、倫理的、法的、経済的影響に取り組み、その社会への恩恵を最大限に高めつつ、害悪を最小限に抑えるために様々な方法で協力すること。

このハイレベル・パネルは、国連事務総長が招集したものとしては最も多様性に富んでおり、幅広い専門分野や地域、年齢層を代表する政府、民間産業、市民社会、学界、技術関係者出身のメンバー20人で構成されている。共同議長は、メリンダ・ゲイツ、ジャック・マーの両氏が務める。

パネルは、地域や属性、部門、専門分野を越えて、幅広い協議を行った。9カ月の活動期間中、パネル・メンバーとパネル事務局は4,000 人の個人、104カ国、80の国際機関、203社の民間企業、125の市民社会団体、33の技術組織、そして188のシンクタンクや学術機関と意見交換を行った。また、中国やインド、イスラエル、ケニア、シリコンバレーのテクノロジー拠点を視察したり、デジタル政策協議に参加したり、テーマ別ワークショップを開催したり、関連問題の専門家とバーチャル会議を開いたり、公に協議への貢献を求めたり、様々なステークホルダー向けのブリーフィングや一般市民に公開して行うバーチャルタウンミーティングを開催した。

報告書全文とパネルに関するさらに詳しい情報は、www.digitalcooperation.orgをご覧ください。

 

お問い合わせ先:

Anoush Rima Tatevossian, Senior Communications Officer
E-mail: anoush@digitalcooperation.org

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原文(English)はこちらをご覧ください。