世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか:国連報告書(プレスリリース日本語訳)*世界人口推計2019年版データブックレット(日本語訳)をアップしました!
プレスリリース 19-047-J 2019年07月02日
増加率は地域によって異なり、さらに多くの国で人口が減少
ニューヨーク、6月17日 – 本日発表された国連の新たな報告書によると、世界人口は現在の77億人から2050年の97億人へと、今後30年で20億人の増加となる見込みです。
国連経済社会局人口部が発表した『世界人口推計2019年版:要旨』は、世界人口のパターンと見通しを包括的に概観した報告書です。調査結果は、世界人口が今世紀末頃、ほぼ110億人でピークに達する可能性があると結論づけています。
報告書はまた、平均寿命の延びと少子化によって、世界人口の高齢化が進んでいることと、人口が減少している国の数が増えていることも確認しています。その結果として生じる世界人口の規模、構成、分布の変化は、経済的な豊かさと社会的福祉を改善しながら、環境を守るため、世界が合意したターゲットを盛り込んだ持続可能な開発目標(SDGs)の達成に大きく影響します。
世界人口は増加を続けるものの、地域によって増加率に大きな差
この新たな人口予測によると、今後2050年までに予測される世界人口の増加の過半は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシア、エジプト、米国(予測される人口増が多い順)の9カ国で生じます。インドは2027年頃、中国を抜いて世界で最も人口が多い国になるとみられます。
サハラ以南アフリカの人口は、2050年までに倍増すると予測されます(99%の増加)。2019年から2050年にかけて、人口増加率が低下するとみられる地域としては、オーストラリアとニュージーランドを除くオセアニア(56%)、北アフリカと西アジア(46%)、オーストラリアとニュージーランド(28%)、中央・南アジア(25%)、ラテンアメリカ・カリブ(18%)東・東南アジア(3%)、欧州・北米(2%)が挙げられます。
全世界の出生率は、1990年の女性1人当たり3.2人から2019年には2.5人へと低下し、2050年にはさらに2.2人へと減少が見込まれます。2019年時点で女性1人当たりの出生数はサハラ以南アフリカ(4.6人)、オーストラリアとニュージーランドを除くオセアニア(3.4人)、北米・西欧(2.9人)および中央・南アジア(2.4人)で、依然として2.1人を上回っています(1世代の置き換えを確保し、移民の流入がないと仮定して長期的に人口減少を回避するためには、女性1人当たり2.1人という出生率が必要になります)。
劉振民(リュウ・ジェンミン)国連経済社会問題担当事務次長によると、この報告書は、行動と介入のターゲットをどこに絞るべきかを示すロードマップとなります。「人口が最も急速に増えている国の中には最貧国が多いため、貧困を根絶し、ジェンダーの平等を達成し、飢餓や栄養不良と闘い、誰一人取り残さないよう、保健・教育制度のカバレッジと質を強化するための取り組みに対して、人口の増加が追加的な課題を突きつけています」
生産年齢人口の増大が、経済成長のチャンスに
サハラ以南アフリカのほとんどの国と、アジアやラテンアメリカ・カリブ地域の一部の国では、最近になって出生率が低下したことで、生産年齢人口(25~64歳)が他の年齢層よりも早いスピードで増加しています。これは「人口ボーナス」と呼ばれる著しい経済成長が期待できる機会が訪れていることを示唆します。この「人口ボーナス」から利益を得るためには、各国政府が特に若者向けの教育と保健に投資し、持続可能な経済成長を促進する条件を整備すべきです。
最貧国の国民の平均寿命は、依然として世界平均に7年及ばず
世界の出生時平均寿命は、1990年の64.2歳から2019年には72.6歳へと延び、さらに2050年までに77.1歳へと延びる見込みです。国際的な平均寿命の差の縮小という点では、かなりの進展がみられるものの、依然として大きな格差が残っています。2019年現在、後発開発途上国の出生時平均寿命は世界平均を7.4歳下回っており、主な要因として子どもと妊産婦の死亡率が高止まりしていることに加え、暴力や紛争、HIV蔓延による影響の継続が挙げられます。
世界人口は高齢化、65歳以上の年齢層が最速の拡大
2019年現在、世界人口の11人に1人(9%)が65歳以上となっていますが、この割合は2050年までに6人に1人(16%)へと増える見込みです。2019年から2050年にかけ、北アフリカ・西アジア、中央・南アジア、東・東南アジア、ラテンアメリカ・カリブの各地域では、65歳以上人口の割合が倍増するとみられています。2050年までに、欧州・北米地域で暮らす4人に1人は、65歳以上となる可能性があります。2018年には史上初の出来事として、全世界の65歳以上人口が5歳未満の子どもの数を上回りました。80歳以上の人口も、2019年の1億4,300万人から2050年には4億2,600万人へと、3倍に増えることが予測されます。
生産年齢人口の割合低下が社会保障制度に圧力
労働年齢人口の65歳以上人口に対する割合を示す潜在扶養指数は、全世界で低下を続けています。日本はこの率が1.8と、世界で最も低くなっています。また、欧州とカリブを中心とする29カ国では、すでに潜在扶養指数が3を下回っています。2050年までに、欧州・北米、東・東南アジアをはじめとする48カ国では、潜在扶養指数が2を下回るものとみられます。こうした低い数値は、高齢化が労働市場と経済実績に及ぼす潜在的な影響のほか、多くの国が高齢者向けの公的医療、年金および社会保障制度を構築、維持しようとする中で、今後数十年で直面することになる財政圧力を如実に示しています。
人口の減少を経験する国が増加
2010年以来、27の国と地域で人口が1%以上の減少を示しています。この人口減の原因として、低い出生率が続いている点が挙げられます。場所によっては、低い出生率の人口規模に対する影響が、高い移民流出率によってさらに強まっています。2019年から2050年にかけ、55の国と地域で人口が1%以上減少すると予測されていますが、うち26の国と地域では、10%以上の人口減少がみられる可能性もあります。例えば中国では、2019年から2050年にかけて人口が3,140万人と、約2.2%の減少を遂げるものと予測されます。
一部の国では、国際移動が人口変動の大きな要因に
2010年から2020年にかけ、14の国と地域で移民が100万人を超える純増となる一方、10カ国では、これと同規模の移民流出が生じるとみられます。最も大規模な移民流出の中には、移民労働者に対する需要(バングラデシュ、ネパールおよびフィリピン)、または、暴力や治安悪化、武力紛争(ミャンマー、シリア、ベネズエラ)を主因とするものがあります。ベラルーシ、エストニア、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、ロシア連邦、セルビアおよびウクライナでは、この10年間で移民が純増となり、死亡率と出生率の差によってもたらされる人口減少が部分的に相殺される見込みです。
「こうしたデータは、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)のグローバルな進展をモニタリングするために必要なエビデンス基盤に欠かせない要素となります」ジョン・ウィルマス国連経済社会局人口部長はこう語り、次のように付け加えています。「持続可能な開発目標(SDGs)の進展状況をモニタリングするための指標のうち『世界人口推計』のデータに依存するものは、全体の3分の1を超えています」
報告書について
『世界人口推計2019年版:要旨』は、国連による26回目の世界人口推計・予測の主な結果を示すものです。この報告書には、過去の関連する人口動向について入手可能なあらゆる情報の詳細な分析に基づき、235の国と地域について1950年から現在までに行われた推計の最新情報が盛り込まれています。最新の評価では、1950年から2018年までに行われた延べ1,690回の国勢調査の結果のほか、人口動態登録制度や2,700回に上る各国の代表的な標本調査で得られた情報を用いています。2019年の改訂は、現在から2100年までの人口予測も提示し、全世界、地域および国内のレベルで起こりうるか、起こる公算が大きい幅広い結末も提示しています。
『世界人口推計2019年版:要旨』と関連資料は、 https://population.un.org/wpp/で入手できます。
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報道関係のお問い合わせ先:
Dan Shepard, UN Department Global Communications, +1 212-963-9495, shepard@un.org
取材対応:
- John Wilmoth, Director, Population Division, UN Department of Economic and Social Affairs (DESA)(英語)(wilmoth@un.org)
- Jorge Bravo, Chief, Population Policies and Development Branch, Population Division, UN DESA(英語/スペイン語)(bravo1@un.org)
- Frank Swiaczny, Chief, Population Trends and Analysis Branch, Population Division, UN DESA(英語/ドイツ語)(frank.swiaczny@un.org)
- Patrick Gerland, Chief, Population Estimates and Projection Section, Population Division, UN DESA(フランス語)(gerland@un.org)
- Bela Hovy, Chief, Publication, Outreach and Support Unit, Population Division, UN DESA(英語/フランス語)(hovy@un.org)
- Guangyu Zhang, Population Affairs Officer, Population Division, UN DESA(中国語)(guangyu.zhang@un.org)
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原文(English)はこちらをご覧ください。
【関連資料】
・世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)
・世界人口推計2019年版 データブックレット(簡易日本語訳:国立社会保障・人口問題研究所)
【関連情報】
・東京で開かれた記者会見の動画は以下でご覧いただけます(2019年7月9日 於:日本記者クラブ)
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35433/report