気候変動が持続可能な開発に向けた前進を脅かしている、と国連の新たな報告書が警告(プレスリリース日本語訳)
プレスリリース 19-051-J 2019年07月10日
持続可能な開発目標(SDGs)策定から4年
一部に前進が見られる一方で、残る大きな課題
ニューヨーク2019年7月9日 - 気候変動と国家間、国内的に広がる不平等の影響により、持続可能な開発アジェンダに関する前進が損なわれ、過去10年間で人々の生活を改善してきた多くの進歩が逆転するおそれが出ている、と持続可能な開発目標(SDGs)に関する国連の最新報告書は警告しています。
一年を振り返る重要な会合である「持続可能な開発に関する国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)」の開幕にあたり発表された今回の報告書は、入手可能な最新のデータに基づいており、17のSDGsすべての実現に向けた進捗状況を測定し、ギャップを把握するために不可欠な資料となっています。
より公正かつ健全な地球を目指す世界の青写真として、SDGsが策定されてから4年が経過していますが、報告書は、極度の貧困削減、予防接種の普及、幼児死亡率の引き下げ、電力を利用できる人々の増大など、いくつかの分野で前進が見られることを指摘しつつも、グローバルな対応に向けた野心は不十分で、最も弱い立場に置かれた人々や国に最も大きな被害が及んでいると警告しています。
主な調査結果は次のとおりです。
- 国家間、国内的な不平等の拡大に注意を向けることが急務だと報告書は警告しています。発育不良の子どものうち、4分の3は南アジアとサハラ以南アフリカに暮らしています。極度の貧困率は、農村部で都市部の3倍に上ります。若者は成人よりも失業する確率が高くなっています。障害者年金を受給している重度障害者は、全体の4分の1にすぎません。女性と女児は依然として、平等の達成を妨げる障壁に直面しています。
- 2018年は、記録上4番目に暖かい年となりました。大気中の二酸化炭素濃度は2018年も上昇を続けました。海洋の酸性度は産業革命以前との比較で26%高くなっており、二酸化炭素排出が現在のペースで続けば、この割合は2100年までに100%から150%に上ると予測されています。
- 極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、1990年の36%から2018年には6%へと低下しましたが、世界が固定化した貧困や暴力的紛争、自然災害に対する脆弱性への対応に苦心する中で、貧困削減のペースは鈍化し始めています。
- 長く減少が続いていた全世界の飢餓は、再び増加へと転じています。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は「2030年までに目標を達成するために必要な社会的、経済的変革を遂げるには、より本質的で迅速かつ野心的な対応が求められていることは、誰の目にも明らかです」と語っています。
前進の遅れが特に目立つのは、気候変動対策や生物多様性など、環境関連の目標です。最近、国連が発表したその他の重要な報告書も、生物多様性に対する未曽有の脅威[1]や、地球の気温上昇を産業革命以前との比較で1.5°Cに抑える緊急性[2]を指摘しています。
「自然環境は恐ろしい速さで悪化しています。海面は上昇し、海洋の酸性化は加速し、過去4年は記録が残る中で最も暖かい年となり、100万種の動植物が絶滅の危機に直面し、土地の劣化も放置されています」事務総長はこのように付け加えました。
環境破壊の影響は、人々の生活にも及んでいます。異常気象や自然災害の増大と激化、生態系の崩壊は、食料不安を高め、人々の安全と健康を損ない、多くのコミュニティーが貧困や避難、不平等の拡大を強いられています。
気候変動に決定的な対策を取るための時間は無くなってきている、と警鐘を鳴らす劉振民(リュー・ジェンミン)国連経済社会問題担当事務次長は、巨大な地球規模の課題に立ち向かうため、国際協力と多国間行動を強化することの重要性を強調しています。
劉事務次長は「この報告書で明らかにされた課題はいずれも、グローバルな解決を要するグローバルな課題です。課題が相互に関連しているのと同様に、貧困や不平等、気候変動、その他のグローバルな課題に対する解決策にも、相互関連性があります」と語っています。
こうした脅威にもかかわらず、報告書は、目標の相互関連性を活用することにより、前進を加速できる貴重な機会も存在することを示しています。例えば、温室効果ガスの排出量削減は、雇用の創出や、より暮らしやすいまちづくり、すべての人の健康と豊かさの向上と両立します。
国連は9月の第74回国連総会ハイレベルウィーク期間中、SDGsサミット、気候行動サミットをはじめ、世界のリーダーと国際社会に改めて活力を与え、世界の軌道を修正し、人々と地球に対する約束を果たすための10年の幕開けを告げる重要な会合を予定しています。
報告書全文は、https://unstats.un.org/sdgsからダウンロードできます。
持続可能な開発目標(SDGs)報告について
この年次報告書では、目標達成に向けたこれまでの世界の取り組みの概要を紹介し、前進が見られた分野と、さらに対策が必要な分野を明らかにしています。報告書は、国際・地域機関と国連システムの機関、基金、計画からの資料提供を受け、国連経済社会局が作成しています。各国の統計学者や市民社会の専門家、学識者も報告書の作成に寄与しています。
詳しくは、https://unstats.un.org/sdgs/をご覧ください。
ハイレベル政治フォーラム(HLPF)について
SDGsの達成に関する最大の年次会合と呼ばれるハイレベル政治フォーラム(HLPF)には毎年、社会のさまざまな部門のリーダーが参集します。国連経済社会理事会が招集する今年のフォーラムは、7月9日から18日にかけて開催されます。7月16日から18日には閣僚級会合が予定されています。フォーラムには80人を超える閣僚が参加し、10日間にわたって160件近いサイドイベントも開かれる予定です。
詳しくは、https://sustainabledevelopment.un.org/hlpfをご覧ください。
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Devi Palanivelu |+1 917 495 5424 | palanivelu@un.org
UN Department of Economic and Social Affairs
Yongyi Min | +1 212 963 9293 | min3@un.org
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[1] IPBES. “Nature’s Dangerous Decline ‘Unprecedented” Media Release, 6 May 2019: http://bit.ly/BiodiversityReport
[2] IPCC. “Special Report on Global Warming of 1.5ºC” Press Release, 8 October 2018: http://bit.ly/IPCCSummary
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