UNODCプレスリリース:国際犯罪組織は東南アジア、更に取締りの弱い脆弱国家を利用し活動を大幅に拡大 ― 国連が発表
プレスリリース 19-053-J 2019年07月18日
バンコク(タイ)2019年7月18日
東南アジアにおける組織犯罪の利益は過去に例を見ない危険なレベルに達している ― 国連薬物犯罪事務所(UNODC)が今日発表の報告書で警告を発した。
「東南アジアにおける国際組織犯罪:その進化、成長、影響」(原題:Transnational Organized Crime in Southeast Asia: Evolution, Growth and Impact)と題されたこの報告書は、国連の研究では5年ぶりとなる、東南アジア全体での組織犯罪活動を俯瞰する内容となっている。報告書によると、近年、東南アジアの数カ国において警察等の取り締まりが強まった影響で、薬物等の不正取引の傾向は変化を遂げている。特に、大きな犯罪組織は活動拠点を取り締まりの弱い場所・国・特に国境地帯に移動し、さらに活動は拡大を見せている。日本の暴力団組織等も覚醒剤を黄金の三角地帯から調達していると見られている。政治腐敗や、カジノ等のギャンブル施設を利用した資金洗浄も、東南アジア地域における大きな課題となっている。
合成薬物の取引は、東南アジアにおいて莫大な利益を生む不正商取引産業へ急速に成長した。犯罪組織はメタンフェタミン市場を大幅に拡大することに成功。メタンフェタミン市場の大きさは現在、年間614億ドル(日本円で約6兆640億円)にも上ると推定されている。同時に、ヘロインの市場は縮小を進め、年間103億ドル(日本円約1兆300億)と推定されている。
報告書はさらに、東南アジア地域間での貧富の差が労働力の需要と供給を生み、人々がより良い職や生活を求めて移動しようとする結果が、人身売買や移民の密入国につながっているという。
所得の向上はさらに、木材や野生動物の違法取引にも関連している。希少で絶滅危機にさらされている野生動物等を使った製品への需要は、人々の所得の向上と共に拡大してきた。東南アジア地域の野生動物の数や森林面積は減少を続けており、サプライチェーンはアフリカ大陸へまで拡大している。
東南アジア地域は更に、高利益・低リスクである偽装品・偽装薬品の取引の中心地でもある。中には人々の健康や安全に深刻な影響をもたらす偽装薬品もある。東南アジア地域で取引される偽送品は、タバコ、自動車部品、ハンドバッグ、酒類等、様々で、市場の大きさはいまや年間359億ドル(日本円約3兆590億)にまで上るという。偽装薬品は、利用者に深刻な健康被害を及ぼしながら年間26億ドル(日本円約260億)の市場へ成長した。
UNODC東南アジア・太平洋地域代表のジェレミー・ダグラス所長は、「犯罪組織は東南アジアにおいて薬物取引、人身売買、野生動物や木材の密売、偽送品の不正取引等によって莫大な利益を得ている。利益が拡大する一方、不正に得たお金はカジノ産業等で資金洗浄されている。東南アジアが組織犯罪の深刻な問題に直面する今、このような犯罪組織が拡大できるコンディションを改善し、国境の安全を確保する等の解決策を協力して実施していくことが必要」と述べた。
この報告書は、ミャンマー・ネピドーで1週間後に控える「2019年国際犯罪に関するアセアン首脳会議」を前に発表された。首脳会議ではUNODCが政府関係者等に報告書の内容等をブリーフィングする予定。UNODCとタイ政府は、2019年アセアン議長であるタイにとっての優勢課題のひとつである、地域レベルでの国境安全確保政策に関しても、ネピドーにて協議する予定。
タイの前副首相で、現国会議員のプラチン・ジャントンは、「組織犯罪の現状は大変深刻なものとなっている。犯罪組織は東南アジア、特に取り締まりの行き届かない国々を利用している。タイはUNODCやその他各国パートナーと協力し、国際犯罪への解決策を主導していく用意がある」と述べた。
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