アジア太平洋の気候変動緩和は地域に経済浮揚も(UN News 記事・日本語訳)
2019年09月12日
低炭素経済への移行を図り、レジリエンスを構築することが緊急に必要とされていますが、これはアジア太平洋における気候変動の最悪の影響を緩和するだけでなく、同地域の経済を浮揚することにもなる、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は述べています。
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2019年9月6日-バンコクで閉幕した「アジア太平洋気候週間(APCW 2019)」では、ホリスティックな長期計画を策定すれば、地域各国が再生可能エネルギーと新たなテクノロジーが持つ巨大な潜在的可能性を活用しつつ、社会経済的な便益を最大限に高められるという重要な知見が得られました。
さらに、現状の気候変動対策に対する野心のレベルでは、地球温暖化を1.5˚C以内に収めるという目標の2倍に当たる3˚Cにも達してしまうと警告し、低炭素へのシフトとレジリエンスの向上を早急に図る差し迫った理由が他にもあることを発表者たちが明らかにしました。
参加者は、政府だけでなく、地方や都市、民間セクターや金融機関もこの転換を推進しなければならないことで合意しました。
UNFCCC事務局は、18億人に上る世界の若年人口の半数以上がアジア太平洋に暮らしていることを指摘し、ユース団体が今週APCW参加者と関わり、ソーシャルメディアでの議論を盛り上げることによって、重要な役割を果たしたと述べました。
成果として生まれた主なメッセージは、国連事務総長が9月23日にニューヨークで開催する「気候行動サミット」への重要なインプットとなるとともに、12月2日から13日にかけてチリのサンチアゴで行われる国連気候変動会議(COP25)に向け、こうした成果が弾みをつけるだろうとUNFCCC事務局はプレスリリースで述べています。
検討事項
各国は現在、パリ協定に基づく各国の気候変動対策計画の強化(「自国が決定する貢献」:NDC)を策定中であり、ニューヨークでの気候行動サミットは、2020年にNDCが国連に伝達されるのに先立ち、政府や多くの気候変動対策当事者が新たな計画や取り組みを発表する機会となります。
気候変動適応計画の策定と財源は、APCW 2019においても重要な議題となり、特に最も困窮したコミュニティーや生態系に焦点が当てられました。
気候変動に対するレジリエンス構築に関し、域内の先住民や学識者などからは、気候変動対策における思考回路のシフトを強調し、長期的なレジリエンスに向けた社会の転換を支援する政策を提案する意見が発表されました。
カーボンプライシングや能力構築、地域的気候変動ファイナンスについても、脆弱性の高い国々を中心とする議論が行われました。
この1週間には、インド洋島嶼国が優先度の高いプロジェクトの財源を確保できるようにするための新たな気候戦略に関する作業も始まりました。
また、UNFCCC事務局では、アジア太平洋、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ各地域の77カ国が属する10の小地域に対し、より規模の大きい気候変動ファイナンスを利用できるようにするための戦略策定に関する支援を行っています。
アジア太平洋のほか、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブでも毎年開催されている地域別気候週間は、政府やその他の利害関係者が一堂に会し、あらゆる気候問題に取り組める場となっています。その中心的なねらいは、気候変動への取り組みという共通の目標の達成に向け、官民の力を結集することにあります。
APCW 2019はUNFCC事務局が、国連アジア太平洋経済社会委員会 (ESCAP)その他の国際・地域機関とのパートナーシップにより開催されました。今回は3月にガーナのアクラ、8月にブラジルのサルバドールで開催された会合に続き、今年3回目の地域別気候週間にあたります。
来年は、アラブ首長国連邦で中東・北アフリカ地域気候週間が開催される予定です。
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