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「国連軍縮部は活発な取り組みを続けています」-COVID-19パンデミックの軍縮の仕事への影響について

2020年04月28日

中満泉軍縮担当上級代表からのメッセージ

©UN Photo/Eskinder Debebe

新たな危機

人類は新型コロナ・ウィルスCOVID-19パンデミック(世界的伝染病)という第二次世界大戦以来の大きな挑戦に直面しています。この急速に拡大する地球規模の公衆衛生の緊急事態によって、私たちの医療、経済、社会システムにかつてない負担がかかっています。そして私たちはパンデミックが不安定、動乱、紛争などの新しいリスクもたらすことを防ぐために懸命に努力しなければなりません。

このパンデミックは、安全保障の分野で破局的な対立を防ぐための枠組みが崩れてかけている時に起こりました。いくつかの国が、より速く正確な核兵器を製造し、予測できない可能性を持つ新兵器技術を開発し、ここ数十年のいかなる時点よりも多くの資源を軍事部門につぎ込んでいます。

国連の75年の歴史において、莫大な破壊力を持つ兵器により安全保障を確保しようとする愚かさがこれほど明らかであったことはありません。

この命取りの中毒にブレーキを掛ける必要が、これ以上明確なことはありません。

これを認識し、国連軍縮部はリモートワークに形は変えたものの、積極的に全面的に活動を続けており、軍縮という重要な仕事に献身的に取り組んでいます。

私はこのパンデミックが私たち軍縮部の仕事のそれぞれの分野に、どのような影響を与えているのか説明したいと思います。また、私たちのマンデートを遂行し、事務総長の軍縮アジェンダを推進するために行っているいくつかの変革を共有したいと思います。

すべての大量破壊兵器を廃絶するための取り組み

私たち軍縮部は、関連する諸条約・機関の締約国・加盟国、市民団体及びその他の関係者とともに、核兵器のない世界の実現、また生物・化学兵器の脅威に対し安全を守るため、絶え間なく努力を続けています。

COVID-19の最も大きな直接的影響は、核兵器不拡散条約の2020年運用検討会議が延期されたことです。この会議は条約の発効50周年と条約の無期限延長決定25周年を祝う機会となるはずでした。ただし、状況さえ許せば直ちに条約検討会議は開催され、私たちの集団安全保障にとって重要な役割を果たすでしょう。それに向け軍縮部は運用会議次期議長及び副議長と協議を重ねています。

同様に、私たち軍縮部は加盟国及び国連事務局を含む国連システム全体の私たちの同僚と連携し、バーチャル会議やオンライン作業などを含むあらゆるオプションを模索しながら、大量破壊兵器の非国家主体への拡散防止、包括的核実験禁止条約や中東非大量破壊兵器地帯に関する会議など種々の条約・プロセスへのサポート、化学・生物兵器及び有毒兵器の使用を調査するための既存の事務総長メカニズムの即応体制の強化、化学兵器使用者に対する責任追及を強化しようとする安全保障理事会の努力への支援などをすすめています。

通常兵器の脅威への取り組み

加盟国は6月15日から19日に予定されている第7回小型武器行動計画隔年会合の開催計画について再考しています。軍縮部ではその期間中も、小型武器に関する事務総長報告書の作成も含めて、この会合にむけた全過程のサポートを粛々と進めています。

「通常兵器弾薬の過剰蓄積に起因する諸問題」に関する政府専門家グループについては、予定通り4月の20-24日に、オンラインによる非公式な形式で協議を開催するよう調整を進めています。[1]また、私たちのスタッフは会期中にも専門家との個別協議において議長に対する支援を続けています。

COVID-19 の パンデミックにより、通常兵器関連プロジェクトについては、受益国において私たちの実践的サポートが若干遅れをきたしています。軍縮部は、状況が許すようになれば直ちにこれらのプロジェクトを成功裏に完遂することを確保するために、必要不可欠な準備作業を継続しています。このような一時的な影響は、欧州連合(EU)拠出のプロジェクト「ジェンダーと小型武器」にも及んでいます。当面はオンライン・トレーニングの開発とデスクリサーチ(机上調査)を続行しています。また、アフリカ連合(AU)のイニシアティブ「サイレンシング・ザ・ガンズ」への支援策である「アフリカ武器恩赦月間」にむけた軍縮部のプロジェクトも、同様にパンデミックの影響を受けています。それでも、政府担当者やプロジェクトの主要パートナーとの協議・調整、デスクリサーチ、ワークショップや啓発のための資料の準備を進めています。

私たちの新しい資金援助メカニズムである「人命を救う軍縮」基金 (Saving Lives Entity – SALIENT)については、国連開発計画(UNDP)、平和構築支援事務局と協力し、プロジェクト管理文書の決済、受益国へ実地調査派遣のための企画書の作成にあたっています。また、軍縮部は、国連軍備登録制度・国連軍事支出報告制度といった軍備の透明性メカニズムに関するデータベースを維持し、適宜更新し続けています。一方、国連セーファーガード技術審査委員会は、オンラインのプラットホームを通じて国際弾薬技術指針(IATG)の見直しを積極的に進めています。この見直しについては、予定通り2020年末には完了する見込みです。

新たな兵器技術への対処

国連軍縮委員会の年次会合は延期となりましたが、宇宙空間の軍縮側面に係る多国間審議の次のステップを支援するため、軍縮部は引き続き宇宙部と国連軍縮研究所と緊密に協力しています。この次のステップには透明性と信頼醸成措置の実施とそれらの更なる発展、そして、宇宙空間での軍備拡張競争に対する効果的な予防策の策定が含まれます。私たちはジュネーブ軍縮会議と国連総会第一委員会の枠組み内で、これらの諸問題に取り組み続けます。

国際安全保障の文脈における情報通信に関するオープン・エンド作業部会と政府専門家グループについては、会議の予定変更が必要かを判断するため、私は各プロセスの議長と協力することに力を入れています。現時点までに、オープン・エンド作業部会の議長は33031日に予定されていた作業部会報告書のゼロ草案に係る会期間協議を中止せざるを得ず、代わりに代表団に書面での貢献を求めています。この二つのプロセスの他の会議への影響については継続的に見直していきます。

ジュネーブを拠点とする軍縮プロセスの継続性の確保

ジュネーブでは、軍縮条約や軍縮機関の会議を支えることが中核的なビジネスですが、COVID-19は今年一杯、いろいろな会議の計画に影響を与えそうです。

今までのところ、軍縮会議は316日から27日までの本会会は予定通りに開催することができませんでした。今年の会期は525日に再開される予定ですが、軍縮部は現在の議長の2020年の他の議長と地域コーディネーターと間でのオンライン協議を支援しています。

このパンデミックはジュネーブで開かれる予定の他の軍縮条約の協議にも影響を与えています。私たちのジュネーブのスタッフは、これらの会議の議長・副議長や締約国や利害関係者と、中止、延期、またはオンラインによる代替策などの選択肢を見つけるために幅広い協議を行っています。また、私たちは可能な限り最大限、これらの軍縮プロセスに対し実質的な支援を続けています。

また、軍縮部はジュネーブを拠点とする条約の財政的な持続可能性を強化するための努力を推し進めています。私たちはこれらの諸条約の全体にわたる構造的挑戦に対処するための方策やプラットフォームを推進し、また、説明責任、オーナシップ、透明性を高めるために各国と緊密に協力しています。生物兵器条約や将来の核分裂性物資カットオフ条約を支える私たちのプロジェクトは概ね継続中です。また、私たちは生物兵器条約の発効45周年、そして特定通常兵器使用禁止制限条約採択40周年を記念する戦略的な広報の準備をしています。

軍縮教育の進展

ウィーンにおいて軍縮部は、欧州安全保障協力機構(OSCE)と共同で実施している軍縮教育プロジェクトのオンライン部分を実施する準備を引き続き進めています。最近、このプログラムで150名の参加者が、1000名以上の候補者による激しい競争の中から選ばれました。本プロジェクトの8週間におよぶオンライン教育は予定通り4月6日に開始しますが、OSCEと軍縮部はウィーンでの参加者を集めた研修については延長することに合意しました。

これに加え、私たちは軍縮教育におけるオンライン教材の更なる開発を検討するためパートナーと一緒に取り組んでいます。

軍縮における女性のエンパワーメントと数的平等の促進

男女平等及び女性のエンパワーメントの進展とパートナーシップが、軍縮プロセスやフォーラムにおいても注目され、さらに加速されることが期待された年でしたが、COVID-19危機により政府のさまざまな優先事項が競合する中、このアジェンダを推し進めれるかどうか一層不透明になりました。私たちの軍縮部は引き続き、バーチャル形式で開く会議を含め、すべての軍縮プロセスでの女性のリーダーシップと完全、平等かつ有意義な参加を促進し、種々の武器の性別毎に異なる影響を考慮した分析とアプローチを強化していきます。

地域レベルでの軍縮の推進

軍縮部の三つの地域センターは、資金援助国と受益国と協力し定期的な対話を維持しています。パンデミックのため、アフリカ、ラテン・アメリカ、カリブ海、アジア、太平洋における参加者を集めたプログラム活動は今までのところ延期せざるを得ませんが、これらのセンターは引き続き現地への出張や作業を必要としない様々な努力を続けています。これらのセンターは、引き続き実質的な文書の作成や国家行動プランの起草などの機能を果たしています。一方、軍縮部による会議やワークショップの準備も継続しており、各センターが最も早い機会に、即刻、完全な業務を再開できるように準備しています。加えて、地域センターは新しいプロジェクトの資金援助国との対話を続けています。

ステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーション

今後も軍縮部は、多国間軍縮・不拡散・軍備管理に係る公正、最新且つ適切な情報をウェブサイトおよびソーシャルメディアを通じて加盟国、外交コミュニティ、非政府組織、ならびに一般の方々に提供していく決意です。これに加え、United Nations Disarmament Yearbook(国連軍縮年鑑)第44号を含む近刊の出版物の準備も進めています。

加盟国が引き続き近日中に行われる会合の準備を続けていますが、私たちこれらの会合の加盟国以外のステークホルダーに対し会合の中止、延期、又はバーチャル会議といったそれぞれのステータスに係る情報を提供していきます。軍縮部は電子ニュースレターならびに若者を対象としたウェブサイトの作成を含むオンライン・リソースを通じて、若者との取り組み、若者の軍縮教育や彼らのスキル向上への支援努力を続けています。

今後の展望

COVID-19によるパンデミックは私たちすべてに試練を課し、第二次世界大戦のように私たちの世界を予測不能な形で変容させています。

しかし、あの恐ろしい世界大戦の試練とは違って、私たちすべてが「共に」この危機に直面しているということを忘れてはなりません。

このパンデミックは、第二次世界大戦の厳しい教訓が、共通の安全保障を支えるためのより深い国際協力とより強固な制度の礎を築いたのと同じように、社会、組織、個人を結束させる可能性も秘めています。

軍縮部は、この地球規模の緊急事態が紛争の温床とならないようにするために、共通の努力の堅実なパートナーであり続けます。

またこの危機を通じ、私たちが団結して、深い亀裂を超越し、最も深淵な共通の願いを追及することができるように切望します。

私たちの共通の願いには、健康な生活を確保し、地球上の市民一人ひとりの幸福を促進し、すべての人が平和で安全に暮らせる世界を創造することが含まれます。今こそ、人間性を私たちの安全保障の中核に据えようではありませんか。

* *** *

[1] 4月20日から24日に開催が予定されていた「通常兵器弾薬の過剰蓄積に起因する諸問題」に関する政府専門家グループの会合は、オンラインによる非公式な形式により、予定どおり開催されました。最終の第三回会合については7月20日から24日にニューヨークで開催される予定ですが、状況に応じて臨機応変に対応することになります。この際に勧告を含むグループ報告書がとりまとめられ、10月の国連総会第一委員会で議論されます。通常兵器弾薬に関する枠組みの強化が焦点の一つになっています。

原文(English)はこちらをご覧ください。