ニュー・ノーマル:国連、COVID-19後の経済を活性化し、 雇用を守るためのロードマップを示す(プレスリリース・日本語訳)
プレスリリース 20-026-J 2020年04月30日
「旧態」への回帰は不可能、各国政府は新しい経済とさらなる雇用の創造を
ニューヨーク、2020年4月27日 – 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急の健康危機は、記録的水準の欠乏と失業を伴う歴史的な景気後退を引き起こし、その結果として生じた未曽有の人間の危機は、女性と子どもをはじめとする最も脆弱な立場に置かれた人々に最も大きな影響をもたらしています。国連は、各国の社会的、経済的復興へと至る道を支援するために、本日新たな枠組みを発表し、各地の人々が必須のサービスと社会的保護を利用できるよう、国際的支援と政治的関与の大幅なスケールアップを求めています。
「United Nations Framework for the immediate socio-economic response to COVID-19: Shared responsibility, global solidarity and urgent action for people in need(COVID-19への即時の社会経済対応に向けた国連枠組み:共有の責任、グローバルな連帯、困窮した人々のための緊急行動)」と題するこの枠組みは、「旧態」を越えた、より持続可能でジェンダー平等、かつカーボンニュートラルな道のりに向けて、社会と経済の安全な復興を可能な限り早期に開始するため、雇用と企業、生活を守るよう求めています。
「今回の危機は単なる健康危機ではなく、人間の危機であり、雇用の危機であり、人道の危機であり、さらに開発の危機でもあります。それは最も脆弱な立場に置かれた人々に限った話ではありません。COVID-19の世界的流行は、私たち全員がリスクを抱えていることを示しています。なぜなら、私たちの強さは、最も弱い医療制度によって決まってしまうからです。その未曽有の規模に立ち向かうためには、未曽有の対策が必要です」こう語るアントニオ・グテーレス国連事務総長はすでに今年3月、COVID-19の社会経済的影響に関する報告書「Shared Responsibility, Global Solidarity(共有の責任とグローバルな連帯)」を発表しています。
「この危機の最中とその後に、私たちが講じるいかなる策も、パンデミックや気候変動、そしてその他多くのグローバルな課題に私たちが直面した時に、より強靭さを発揮できる、より平等で包摂的、かつ持続可能な経済と社会を構築することに重点を置かねばなりません」事務総長はこのように語っています。今回発表された新しい枠組みは、国連諸機関が現場で、このビジョンをいかに実現していくのかを定めるものとなっています。
社会と経済の復興に向けた国連のこの枠組みは、今後数カ月間に下される決定が、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた前進に重要な意味を持つことを強調しています。
2014年のエボラ流行で、ウイルスそれ自体による死者よりも、社会サービスの中断と経済の崩壊により命を失った人々のほうが多かったことを指摘しつつ、新たな国連枠組みは、最も脆弱な国や集団、取り残されるおそれがある人々をまず優先しながら、今回のパンデミックで最も大きな影響を受けた人々のニーズと権利を保護することに重点を置いています。
また、新たな枠組みは、2008年から2009年にかけての世界的な経済・金融危機からの教訓にも基づき、最も被害が軽く、最も早く復興を遂げたのは、社会保障制度と基本的サービスが充実している国だったことも指摘しています。数十億人が貧困に陥るのを防ぐためには、全世界の政府が現金支給、食料援助、社会保険制度、家計支援のための児童手当など、安全のための「クッション」を早急に採用、拡張、スケールアップする必要があります。
国連はCOVID-19による影響を削減するため、最も脆弱な立場に置かれた人々や子ども、女性、男性、さらにはインフォーマル・セクターの労働者に対する影響の差異に配慮した当面の社会的保護対策を含め、今後の課題に対処するための支援を特別に拡大するよう求めています。子どもの3人に2人を含め、世界人口の過半数に相当する40億人に対する社会的保護が欠如しているか、不十分であるという現状を踏まえれば、この対策は特に急を要すると言えます。
編集者の方々へ
国連の対応は、コミュニティーを復興への取り組みの中心に据えながら、次の5つの分野を重視するものとなります。
- 既存の医療サービスを守り、医療制度のCOVID-19対応能力を強化する
- 社会的保護と基本的サービスを通じ、人々の困難への対処を支援する
- 経済復興プログラムを通じ、雇用を守るとともに、中小・中堅企業とインフォーマル・セクターの労働者を支援する
- マクロ経済政策を最も脆弱な立場に置かれた人々に裨益させるために必要な財政・金融刺激策を急拡大するための指針を提供するとともに、多国間の対応と地域的対応を強化する
- 社会的一体性を促進し、コミュニティー主導型のレジリエンスと対応システムに投資する
各国が以前の水準を超える復興(build back better)を遂げ、パンデミックを含む将来的なショックに対する準備態勢を整えるためには、環境の持続可能性に関する必要性を満たす対策で、これら5つの重点分野につながりを作らなければなりません。
162の国と地域をカバーする国連チームは、国連常駐調整官(RC)のリーダーシップの下、世界的、地域的専門家のネットワークによる支援を受けながら、今後12カ月から18カ月をかけて、この復興計画を展開してゆきます。国連開発計画(UNDP)は、社会経済復興への取り組みを技術的に主導する機関として、常駐調整官を支援し、国連チームが対応のあらゆる側面で一体となって活動できるようにします。
国連諸機関が全体として進めている総額178億米ドルの持続可能な開発プログラムは、今回のパンデミックの社会経済的影響の規模と範囲に鑑み、COVID-19関連のニーズに合わせて調整されますが、追加的な資金も必要になります。こうした取り組みを支援するため、事務総長は、低・中所得プログラム国がCOVID-19の世界的流行により生じた医療と開発の危機を克服するための援助を提供し、経済的苦難と社会的混乱の影響を最も受けやすい人々を支援する国連機関合同の資金調達メカニズムとして、国連COVID-19対応・復興基金を立ち上げました。この基金の所要資金は、当初の9カ月間につき10億ドルと予測されますが、この金額については、後に見直しが行われる予定です。事務総長はまた、世界がこれまで経験したことのない危機への最も効果的な対策を図るため、全世界の国内総生産(GDP)の10%以上に相当する多国間対応も求めました。
枠組み文書は「旧態」への回帰が不可能だと述べています。今回のパンデミックは、すでに債務と限られた財政的余地という拘束的制約を受けている開発途上国や新興経済国に打撃を与えており、開発途上国の中には、緊急の債務救済を必要としているものもいくつかあります。特に、人道危機や紛争を背景に、最も弱い立場に置かれている国々にとって、その影響は壊滅的ものとなるでしょう。国連はまた、化石燃料補助金をCOVID-19対応支援に振り分けることも含め、今後数週間から数カ月にわたって大がかりな財政上、金融上の使途変更も求めています。国連は、現状維持と従来どおりのやり方はあくまでも政策的選択肢にすぎず、不可避ではないことを強調しています。より多くの人々に裨益する持続可能な開発のためには、急速で公正、かつ環境に優しく包摂的な形で、COVID-19からの復興を実現できる選択を行わねばなりません。
枠組み文書について:本日発表された文書「COVID-19への即時の社会経済対応に向けた国連枠組み:共有の責任、グローバルな連帯、困窮した人々のための緊急行動」は、同じテーマに関する国連事務総長の「共有の責任とグローバルな連帯」報告書を実践に移すものです。また、世界保健機関(WHO)が主導する医療上の対応と、国連が主導する「COVID-19グローバル人道対応計画」に詳述された人道上の対応とともに、人命を救い、人々を守り、以前の状況を越える復興を目指す国連の取り組みに不可欠な3要素の一つにもなっています。これら包括的対応の柱を支えるのが、国連財団とスイス慈善基金が管理し、当面の医療ニーズを満たすCOVID-19連帯対応基金、人道支援を呼びかけるための「グローバル人道対応計画」、社会経済の復興を図る国連COVID-19対応・復興基金という3つの資金調達メカニズムです。
国連開発システムについて:国連開発システムは、社会的保護と基本的サービスに関する世界最大の国際主体です。国連システムは162の国と地域に展開し、基本的サービスや社会的移転、その他の形態の社会的保護を通じ、数千万人に支援を届けています。国連開発システムは、社会的保護の土台や質の高い社会サービスの提供を含む社会的保護制度開発に向けた各国政府への支援に幅広い経験を有するとともに、人道面、開発面全体を通じ、このようなサービスを支援しています。詳しくはhttps://unsdg.un.org/ をご覧ください。
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原文(English)はこちらをご覧ください。