SDGアドボケート共同議長による寄稿:コロナウイルスの世界的大流行の中でも、SDGsは「より良い復興」へと私たちを導く(2020年6月)
2020年06月17日
SDGアドボケート共同議長:
エルナ・ソルベルグ ノルウェー首相
ナナ・アド・ダンクワ・アクフォ=アド ガーナ大統領
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私たちの世界は今、途方もない規模の危機に立ち向かっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は全世界で猛威を振るい、人の命と暮らしを脅かしているからです。COVID-19で人命が失われることは痛ましいことですが、グローバル経済や持続可能な開発に対する影響も憂慮すべき事態です。COVID-19危機の経済的影響の全てを予測することは難しいものの、国連経済社会局(UN DESA)の推計によると、グローバル経済の損失は8.5兆米ドルにも上り、過去4年間の前進が帳消しになるおそれがあります。
COVID-19の世界的大流行(パンデミック)は、私たちの地球規模のシステムの根本的弱点をさらけ出しました。貧困の広がりや脆弱な医療制度、教育の不足、グローバルな協力の欠如が危機をさらに悪化させていることを明らかにしたからです。
仮に、私たちの世界が共通の課題に直面していることを疑う向きがあったとしても、今回のパンデミックによって、そうした疑念は一掃されるはずです。COVID-19危機は、私たちの世界の相互依存度をさらに高めています。また、人々の基本的なニーズを満たし、地球を守り、より公正でレジリエント(強靭)な世界を構築するため、緊急にグローバルな行動を起こす必要性も前面に出しました。私たちは共通のグローバルな課題に直面しており、これを共通のグローバルな対策で解決しなければなりません。結局のところ、今回のような危機で、私たちの強さは最も弱い部分で決まってしまうからです。貧困に終止符を打ち、地球を守り、豊かさを確保するためのグローバルな青写真である持続可能な開発目標(SDGs)の持つ意味も、結局はここにあります。
悲しいことに、今回のパンデミックは、SDGsに勢いがつき始め、多数の国々が順調な前進を遂げている中で生じました。世界がウイルスの蔓延を抑え、その悪影響に取り組むことに躍起になる中で、各国は実際、その優先順位を立て直し、COVID-19パンデミックへの取り組みに資源を再配分しています。目下の優先課題は人命を救うことにあるため、これが正しい選択であることは間違いなく、私たちはどんなことがあっても、これを成し遂げねばなりません。
だからこそ、私たちは一丸となって、ウイルスの感染を抑え、パンデミックに終止符を打つとともに、女性や若者、低賃金労働者、中小企業、インフォーマル部門、脆弱な立場に置かれた人々をはじめ、すでにリスクにさらされている人々に焦点を絞るため、当面の医療対策の拡大を求める国連の呼びかけを支持しなければなりません。私たちが力を合わせれば、人命を救い、暮らしを復興させ、グローバル経済を再び軌道に乗せることができるのです。
しかし、私たちがしてはならないのは、こうした危機的な時期だからと言って、資源を重要なSDGsへの取り組みからシフトさせてしまうことです。COVID-19パンデミックへの対応を、SDGsと切り離すことはできません。事実、SDGsを達成することによって、グローバル・ヘルス面のリスクや新たな感染症にも着実に取り組める道が開けます。その目標3(すべての人に健康と福祉を)を達成するためには、各国の早期警報、リスク削減、国内と地球規模の健康リスク管理能力を強化しなければならないからです。
COVID-19パンデミックはグローバル・ヘルス・システムの危機を白日の下にさらしました。また、2030年までにSDGsの目標3を達成できる見通しを著しく損なう一方で、その他すべてのSDGsにも深刻な影響を及ぼしています。
COVID-19パンデミックが私たちのSDGs達成に向けた取り組みに幅広い影響を及ぼしていることを示す、気がかりなエビデンスも出てきました。国連教育科学文化機関(UNESCO)によると、全世界で10人に9人の学生が影響を受けており、SDGsの目標4(質の高い教育をみんなに)の達成に深刻な課題が生じています。国際労働機関(ILO)の推計は、約2,500万人が失業するおそれがあり、特にインフォーマル経済の労働者は社会的保護を得られず、最も深刻な打撃を受けることを示唆しています。しかも、こうした影響は氷山の一角にすぎません。
重要なのは、COVID-19パンデミックとその影響が世界各地で、きれいな水と衛生に関するターゲット達成の危機(目標6)、経済成長の低迷とディーセント・ワーク(やりがいのある人間らしい仕事)の欠如(目標8)、不平等の広がり(目標10)、そしてとりわけ、根深い貧困(目標1)と食料不安(目標2)によって、さらに悪化しているという点です。国連経済社会局は、この危機によって年末までに、極度の貧困に陥る人が3,400万人を超えると見ています。
パンデミックの現段階においても、この危機が地球市民である私たちに対し、お互いを守る存在となること、誰一人取り残さないこと、そして最も脆弱な立場に置かれた人々のニーズを最優先に考えることの究極的価値を教えてくれているという事実は、否定しようもありません。
直ちに必要なのは、政治的な意志と決意です。私たちの世界には、SDGsを達成できるだけの知識や能力、イノベーションが存在し、私たちの野心を十分に高められれば、そのために必要な資源を結集させることも可能です。連帯の精神によって、各国政府や企業、多国間機関や市民社会は、COVID-19パンデミック対策を支援するため、可能な限り短い期間で数十億ドル、さらに場合によっては数兆ドルの資金を調達できています。私たちがこれと同じだけの重要性と緊急性を貧困や飢餓、気候変動との闘いに認めることができれば、SDGsの達成に向けた「行動の10年」でも大きな成果を得られることでしょう。
世界がこのパンデミックに対応し、グローバルな豊かさを取り戻そうとする中で、私たちはSDGsを通じ、その根本的な要因への取り組みに全力を上げなければなりません。コロナ危機の最中でさえ、手を抜いてはならないのです。SDGsの一部で前進が損なわれたとしても、意気消沈すべきではありません。むしろ、この行動の10年で「より良い復興」を遂げ、さらに健全、安全、公正かつ豊かな世界をつくるための取り組みを加速し、深めていくきっかけとすべきなのです。
この記事は当初、トムソン・ロイター財団により発表されたものです。
https://news.trust.org/item/20200416073143-62tz1
*このブログで表明された見解は、著者のものであり、必ずしも国連経済社会局の意見を反映するものではありません。
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