事務総長、2030年までにすべての人々のクリーン・エネルギーへのアクセスを確保し、2050年までに排出量正味ゼロを実現する、 新たなグローバル・ロードマップを発表(プレスリリース・日本語訳)
プレスリリース 21-069-J 2021年11月30日
ニューヨーク、2021年11月3日 – 緊急の気候行動を求める圧力が高まる中、アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、2030年までにエネルギーへのアクセスと移行を巡る抜本的な変革を達成するとともに、2050年までの排出量正味ゼロにも貢献するグローバル・ロードマップを発表しました。
ロードマップにはわずか4年後の2025年までに新たに5億人が電気にアクセスし、新たに10億人がクリーンな調理法にアクセスすることを確保するために、積極的なタイムラインが設定されました。これを実現するためには、電気とクリーンな調理へのアクセスへの投資を、それぞれ毎年350億米ドルに、そして250億米ドルに増やす必要があります。実現に求められる投資は、グローバルなエネルギー投資全体に必要とされる数兆ドルのごく一部にすぎませんが、世界人口の3分の1に大きな恩恵をもたらすことになります。
「私たちは正念場を迎えています」と事務総長は述べています。「およそ7億6,000万人がいまだに電気にアクセスできていません。約26億人がクリーンな調理法にアクセスできていません。しかも、私たちのエネルギー生産・利用方法は気候危機の主な原因となっています。私たちは今後10年間で、こうした課題を解決しなければなりません。そして、今日から始めなければなりません。グローバルなロードマップがまとまったことにより、私たちはエネルギーの可能性を、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の目標を達成する上での極めて重要な手段であるという認識を共有することができ、人類と地球にとって、より繁栄した公平で持続可能な未来の実現につながります」
グローバル・ロードマップは9月24日に開催された国連のエネルギーに関するハイレベル対話の大きな成果です。ハイレベル対話では、130カ国超の国家元首と政府首脳、ビジネスほか各セクターの世界のリーダーたちが、「エネルギー・コンパクト」と呼ばれる自発的なコミットメントの一部として、クリーン・エネルギーに対する4,000億ドルを超える新たなファイナンスと投資を発表しました。このエネルギー・コンパクトは、気候変動に関するパリ協定の裏付けとして、2030年までにすべての人々にクリーンで安価なエネルギーの実現をめざすSDGs目標7の達成、そして2050年までに排出量正味ゼロを達成するためにグローバル・ロードマップに求められる、具体的な行動とパートナーシップの例です。
行動のターゲットとタイムライン
ロードマップはまた2025年までに、化石燃料消費への補助金を再生可能エネルギーとエネルギー効率へ振り向けること、現代的な再生可能エネルギーの容量を世界で100%増加させること、再生可能エネルギーとエネルギー効率への年間投資額を世界中で倍増させること、そして再生可能エネルギーとエネルギー効率で3,000万人分の雇用を創出することも呼びかけています。これらは、貧困削減、保健、教育、そして社会的保護に投資することによって、包摂的で環境に配慮した復興の確保を支援します。
ロードマップにおいて最も差し迫ったターゲットは、2021年以降、新たな石炭火力発電計画を進めないことへの呼びかけです。これは、エネルギーに関する首脳級会合に向けた準備における動員であり、No New Coal Powerエネルギー・コンパクトが脱石炭同盟(Powering Past Coal Alliance)と国連-エネルギー(UN-Energy)、現時点のパートナー政府であるチリ、デンマーク、フランス、ドイツ、モンテネグロ、スリランカ、英国の7カ国によって発表されました。
ロードマップは、再生可能エネルギーやエネルギー効率への世界全体の年間投資額と、世界の再生可能エネルギーの容量を、2030年までに3倍に増やし、石炭火力発電所については段階的に減らし、経済協力開発機構(OECD)諸国では2030年までに、世界全体では2040年までに全廃することを呼びかけています。同時に、世界中すべての保健医療施設と学校に電力を供給することを含め、誰もが電気とクリーンな調理法にアクセスできるようにするとともに、再生可能エネルギーとエネルギー効率で6,000万人分の新規雇用を創出しなければなりません。
公正で包摂的なエネルギー移行
ロードマップは、各国のエネルギー移行経路が異なることを認識した上で、設定されたマイルストーン(里程標)の達成を導く枠組みとしてSDGsを組み込み、とりわけ脆弱な立場に置かれた人々を含め誰一人取り残さない、公正で包摂的なエネルギー移行を確実に実現することを要請しています。
「エネルギーに関するハイレベル対話」の事務局は本日、ロードマップの提言とハイレベル対話から生まれた声明やコミットメントを詳述した報告書も発表しました。
パートナーシップを主導する
今後を見据え、グローバル・ロードマップは、各国政府、企業とすべてのステークホルダーに対し、変革をもたらすパートナーシップを通じてグローバルなエネルギー移行を強化・推進するよう要請しています。持続可能なエネルギーの様々な側面に取り組む25を超える国連システムの諸機関と国際機関を結集する調整機関である国連-エネルギーの支援を受けたグローバル・エネルギー・コンパクト・アクション・ネットワークを介すなどして、さらなるエネルギー・コンパクトを継続的に動員すべきです。
ロードマップは、国連システムがSDGsの目標7と排出量正味ゼロを達成し、国連-エネルギーの強化に向けた取り組みを大幅に拡大するよう呼びかけています。国連-エネルギーは、目標年である2030年にかけてエネルギー・コンパクトの進捗状況とロードマップの実施状況を調整・追跡します。
アヒム・シュタイナー国連開発計画(UNDP)総裁と、ハイレベル対話の共同議長も務めたダミロラ・オグンビイ「万人のための持続可能なエネルギー(SEforAll)」国連事務総長特別代表の二人の共同議長のリーダーシップのもと、国連-エネルギーは、エネルギー・コンパクトを含むコミットメントとパートナーシップを継続的に主導し、ハイレベル対話により生まれた機運を維持していきます。国連-エネルギー事務局は、ハイレベル対話の事務局長も務めた劉振民国連事務次長のリーダーシップのもと、国連経済社会局(UN DESA)が務めます。
報道関係者のお問い合わせ先:
国連グローバル・コミュニケーション局(UN DGC):
Dan Shepard
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国連経済社会局(UN DESA)、エネルギーに関するハイレベル対話事務局(HLDE Secretariat):
Pragati Pascale
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Daniella Sussman
daniella.sussman@un.org
国連開発計画(UNDP):
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SEforALL:
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ウェブサイト:www.un.org/en/conferences/energy2021 | Twitter:@UN_Energy
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