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4つの主要な気候変動指標が2021年に最高値を更新(2022年5月18日付 WMO プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 22-045-J 2022年08月17日

ジュネーブ、2022518日(WMO)-温室効果ガス濃度、海面上昇、海水温度の上昇、海洋酸性化という4つの主要な気候変動指標が2021年に最高値を更新しました。世界気象機関(WMO)によると、これは人間の活動が、陸上、海洋、大気にわたり地球規模の変化をもたらし、持続可能な開発と生態系に有害かつ長期的な影響を及ぼしていることを新たに明確に示す兆候です。

気候変動の日々の表れである異常気象は、数千億ドルの経済損失をもたらし、人間の命とウェルビーイングが多大な犠牲となりました。また、食料と水の安全保障への衝撃と強制移住を引き起こし、2022年はこれらがより明確になりました。

『 2021年 地球気候の現状に関するWMO報告書(State of the Global Climate 2021)』は、過去7年が観測史上、気温が最も高い7年であったと認めました。2021年は年初と年末に発生したラニーニャ現象によって、気温が最も高い7年のうちの1年に「しか」過ぎませんでした。ラニーニャによって一時的な冷却効果があったものの、気温上昇という全体的な傾向を反転させるには至りませんでした。2021年の世界の平均気温は、産業革命以前の水準を約1.11(±0.13) ℃上回りました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「みじめにも列挙されている、人類による気候崩壊への取り組みにおける失敗」を批判した上で、WMOの重要な報告書の発表を機に、化石燃料の「袋小路」からエネルギー・システムを転換するという、「すぐに着手可能な対策」を実行する緊急行動を呼びかけました

事務総長はビデオ・メッセージの中で、再生可能エネルギーへの移行を活性化するための5つの決定的な行動を提案しました。その中には、再生可能エネルギー技術と供給へのアクセスの拡大、再生可能エネルギーへの官民投資額の3倍増、毎分およそ1,100万ドルにも上る化石燃料への補助金の廃止が含まれています。

「再生可能エネルギーは、真のエネルギー安全保障、安定した電力価格、持続可能な雇用機会をもたらすための唯一の道です。私たちがともに行動すれば、再生可能エネルギーへの転換が、21世紀の一大平和プロジェクトとなる可能性があります」グテーレス事務総長はこのように述べました。

さらに、ますます悪化する気候変動の影響を防ぎ、気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃に抑えるため、世界は2030年までのこの10年で行動しなければならない、とも述べました。

ペッテリ・ターラスWMO事務局長は次のように述べました。「新たに最も暑い年を観測するようになるのは時間の問題です。私たちは、気候が変わりゆくのを目の当たりにしています。人類が生み出す温室効果ガスによって閉じ込められた熱が、今後数世代にわたって地球の温暖化を進めるでしょう。海面上昇、海水温度の上昇、海洋酸性化は、大気から炭素を取り除く手段が発明されない限り、数百年にわたって続くでしょう。いくつかの氷河が後戻りできない局面に達したため、すでに20億を超える人々が水ストレスを経験しているこの世界において長期的な影響を及ぼすでしょう」

「異常気象は、私たちの日常生活に最も直接的な影響を及ぼします。長年にわたる防災への投資により、私たちは命をより効果的に救えるようになった一方で、経済的損失は急増しています。アフリカ北東部の「アフリカの角」で発生した干ばつによる緊急事態、最近の南アフリカでの壊滅的な洪水、そしてインドとパキスタンでの猛暑を目の当たりにしているとおり、すべきことはまだたくさんあります。気候変動に適応するには早期警報システムが必須ですが、これを利用できる国々はWMO加盟国の半数にも達していません。アントニオ・グテーレス国連事務総長が要求したように、WMOは今後5年のうちに誰もが早期警報システムで守られるようにすることを約束します」ターラス事務局長はこのように述べました。

『地球気候の現状に関するWMO報告書』は、2019年までのデータが収載される気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書を補完するものです。新しいWMO報告書には、IPCC報告書で概説した気候変動指標がここ数年にわたり世界でどのように推移したか、2021年に国レベルと地域レベルで異常気象に関連する影響をどのように受けたのか、政策立案者向けに実例を挙げて情報提供するストーリーマップが付属されています。

『地球気候の現状に関するWMO報告書』は、今年エジプトで開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)の公式文書として使用される予定です。

報告書には、各国の気象水文機関(NMHSs)、世界のデータ分析機関、地域の気候機関、世界気候研究計画(WCRP)、全球大気監視計画(GAW)、全球雪氷圏監視計画(GCW)、EUのコペルニクス気候変動サービス(C3S)など、加盟国から数十の専門機関が協力しています。

国連のパートナーには、国連食糧農業機関(FAO)、UNESCO政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)、国際移住機関(IOM)、国連環境計画(UNEP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連防災機関(UNDRR)、世界食糧計画(WFP)などがあります。

主要なメッセージ

温室効果ガス濃度は、2020年に新たに世界最高値に達し、世界全体の二酸化炭素(CO2)濃度は413.2百万分率(ppm)(産業革命以前の水準の149%)に達しました。特定地点のデータによると、数値は2021年と2022年初めにも上昇し続けていることが示され、ハワイのマウナ・ロアでの月間平均CO2は、2020年4月に416.45ppm、2021年4月に419.05ppm、2022年4月に420.23ppmに達しました。

2021年の世界の年平均気温は1850-1900年の産業革命以前の平均より約1.11(±0.13) ℃高いものでしたが、これは年初と年末に発生したラニーニャ現象の冷却効果によって直近数年ほど高くはありませんでした。直近の7年間(2015年-2021年)は、観測史上気温が最も高い7年でした。

海水温度の上昇は過去最高を記録しました。水深2,000mまでは2021年も引き続き上昇し、今後も同様であると予想されます。これは、百年、千年の時間尺度では不可逆的な変化です。すべてのデータは、過去20年間の海洋温暖化の速度が特に上昇していることを示しています。温暖化はさらに深層まで拡大しています。海洋の多くが、2021年のいずれかの時点で少なくとも1回の「強い」海洋熱波に見舞われました。

海洋酸性化:海洋は、大気中に放出される人為的な年間CO2排出量の約23%を吸収します。これが海水と反応して海洋酸性化につながり、生物および生態系サービスを、ひいては食料安全保障、観光、海岸保護を脅かします。海洋の水素イオン指数(pH)が下がるにつれて、大気中のCO2を吸収する能力も低下します。IPCCは、「外洋の現在の海面pHが少なくとも2万6,000年間で最も低く、現在のpH変化は少なくともそれ以降で前例のない速さであることには非常に高い確信度がある」と結論付けました。

世界の平均海水面は、2013–2021年に年間平均で4.5mm上昇した後、2021年に過去最高となりました。これは1993年から2002年までの速度の2倍を超えており、主に氷床から氷塊が失われる速度が速まったことに起因しています。これは沿岸に住む数億の人々に多大な影響を及ぼし、熱帯低気圧に対する脆弱性を高めます。

氷圏:2020-2021年の氷河の融解量は近年より少なくなりましたが、数十年の時間尺度では、明らかに質量損失が加速に向かっている傾向が見られます。世界の基準氷河は、1950年以降で平均33.5m(氷換算)薄くなり、薄くなった分の76%が1980年以降に失われています。カナダと米国北西部の氷河は2021年に特に大きく融解し、6月および7月の熱波と火災により記録的な量の氷塊が失われました。グリーンランドでは8月半ばに前例がないほど溶け、氷床の最高点である海抜3,216mの観測所サミット・ステーションでは史上初めての降雨を記録されました。

並外れた熱波が、北米西部と地中海にわたって記録を塗り替えました。米国カリフォルニア州のデスバレーでは7月9日に54.4℃°Cに達し、少なくとも1930年代以降に記録された世界最高としての2020年の値に並び、シチリア島のシラキュースでは48.8℃に達しました。カナダのブリティッシュ・コロンビア州では、6月29日に49.6℃に達し、500人を超える人々が暑熱関連で死亡したと報告されました。これは壊滅的な山火事を招き、さらには11月の洪水の被害を拡大につながりました。

洪水によって、中国・河南省は177億ドルの経済的損失を被り、西ヨーロッパでは記録上で最もひどい洪水のいくつかが7月半ばに発生し、これに関連してドイツは200億ドルを超える経済的損失を被りました。人命の損失も甚大でした。

干ばつが、アフリカ北東部「アフリカの角」、カナダ、米国西部、イラン、アフガニスタン、パキスタン、トルコなど、世界の多くの地域に影響を与えました。南米の亜熱帯地方は干ばつによって農業に大きな損失が発生し、エネルギー生産と河川輸送が混乱しました。アフリカの角での干ばつは、2022年に入っても依然として激化しています。東アフリカでは4期連続で雨が降らない極めて確かな見通しの中、エチオピア、ケニア、ソマリは過去40年間で経験したことがない長さの干ばつに見舞われています。人道支援機関は、これらの地域の人々と生活に対する破壊的な影響について警鐘を鳴らしています。

ハリケーン・アイダは北大西洋のシーズン中で最大であり、8月29日にルイジアナ州に上陸し、米国では750億ドルの経済的損失が発生したと推定されています。

南極上空のオゾンホールがいつになく深く広がり、極渦が強く安定して下部成層圏が平均より冷たい状態であったため、その最大面積は2,480万km2(アフリカ大陸の面積)に達しました。

食料安全保障:紛争、異常気象事象、経済的打撃が複合した影響が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってさらに深刻化し、世界的な食料安全保障の改善に向けた数十年にわたる前進を損ないました。2021年に人道危機が悪化したこともまた、飢饉のリスクにさらされる国の増加につながりました。2020年に栄養不良であったすべての人々のうち、半数以上がアジア(4億1,800万人)に、3分の1がアフリカ(2億8,200万人)に住んでいます。

強制移住:水文気象関連ハザードが引き続き国内の強制移住に影響しました。2021年10月時点で最も多くの強制移住を記録した国は、中国(140万人超)、フィリピン(38万6,000人超)、ベトナム(66万4,000人超)でした。

生態系:陸上、淡水、沿岸、海洋などの生態系がもたらすサービスは、気候変動の影響を受けており、一部は他と比べてより脆弱です。一部の生態系は、前例のないペースで悪化しています。例えば、世界の貯水池である山地生態系は大きな影響を受けています。気温上昇により、海草藻場、昆布の森を含む海洋生態系と沿岸生態系が回復不能なまでに失われるリスクが高まっています。サンゴ礁は、気候変動に対して特に脆弱です。1.5℃の上昇でそれまでの生育面積の70%から90%、2℃の上昇で99%超が失われると予想されます。海面上昇の速度によっては、現存する沿岸湿地帯の20%から90%が今世紀末までに失われるリスクにさらされています。これは、その他の生態系サービスのうち、特に食料供給、観光、海岸保護をさらに危うくします。

 

世界経済フォーラム

報告書は、「歴史的転換点における、政策とビジネス戦略のゆくえ」のテーマの下に世界から2,000名を超えるリーダーたちと専門家たちが集った、世界経済フォーラムの2022年・年次総会直前に発表されました。議題の主なトピックは、2030年と2050年の重要な世界の気候目標を達成するために官民の行動を動員することです。

世界経済フォーラムの梁锦慧理事は、次のように述べました。「『地球気候の現状に関するWMO報告書』は、世界経済フォーラムのグローバル・リスク報告書で提示された環境リスクを軽減するためのスピード、規模、体系的な行動の必要性を強調しています。

最近のIPCC報告書が示すように、私たちは、排出量を減らして地球温暖化を制限する手段とノウハウをすでに持っています。資源を生産、消費するやり方を素早く転換する大胆な政策と解決策に注力する必要があります。新しい仕事の創出においても、誰もが入手できる手頃な価格の提供においても、よりクリーンで、よりグリーンな生活環境の構築においても、人々とパートナーシップを私たちのアプローチの中核に据えなければなりません。

ダボスで開催される次の年次総会は、気候行動への決意を強め、野心を行動に変え、誇れる未来を共創するためのさらなるパートナーシップを築く重要な機会です」

世界気象機関は、国連システム内で気象、気候、水に関する権威的な見解を発信する役割を果たしています。

さらに詳しい情報については、下記にお問い合わせください。

Clare Nullis
media officer
Email:cnullis@wmo.int
Tel:+41 79 709 13 97

編集者向け注記: 

報告書に使用されている情報の出所は、各国の多数の気象水文機関(NMHSs)や関連機関に加え、地域の気候機関、世界気候研究計画(WCRP)、全球大気監視計画(GAW)、全球雪氷圏監視計画(GCW)、EUのコペルニクス気候変動サービス(C3S)です。国連のパートナーには、国連食糧農業機関(FAO)、UNESCO政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)、国際移住機関(IOM)、国連環境計画(UNEP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連防災機関(UNDRR)、世界食糧計画(WFP)などがあります。

WMOは、本報告書を気候状況と気候への影響に関する権威ある典拠とした、WMOの専門家ネットワークによるすべての献身的な努力に感謝します。特に、報告書の主執筆者を務めた英国気象庁に謝意を表します。

報告に一貫性を持たせるために、可能な限りWMO気候学標準1981年から2010年をベースライン期間として使用しています。しかしながら、全期間にわたり測定値がなかったり、代表的な統計値の算出にさらに長い期間の測定値を要したりすることから、このベースラインを使用できない指標もあります。

世界の平均気温には、1850年から1900年のベースラインを使用しています。これは、最近のIPCC報告書で産業革命以前の気温の代用として使用されているベースラインであり、パリ協定の目標に関する進捗を把握するのに適しています。

WMOは、HadCRUT.5.0.1.0(英国気象庁)、NOAAGlobalTemp v5(米国)、NASA GISTEMP v4(米国)、Berkeley Earth(米国)、ERA5(欧州中期予報センター:ECMWF)、JRA-55(日本)という、6つの国際気温データセットを使用しています。

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原文(English)はこちらをご覧ください。