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『排出ギャップ報告書2022』発表:世界の平均気温上昇を1.5°Cに抑えるための「信頼できる道筋はない」とUNEPが警鐘(UN News 記事・日本語訳)

2022年11月02日

海藻の一種であるケルプは、動物の食料となり、温室効果ガスの排出量削減に役立つ可能性を持つ ©Unsplash/Shane Stagner

2022年10月27日 ― 国連の気候専門家は本日、手遅れになる前にエネルギー部門の抜本的変革を求めた緊急アピールの中で、有害な排出を削減する各国の誓約では気候関連災害を回避できる見込みは薄いと語りました

2015年のパリでの気候変動枠組条約締約国会議で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5°Cに抑えるという法的拘束力のある約束がなされたにもかかわらず、目下のところ「1.5°Cに抑えるための信頼できる道筋はない」と国連環境計画(UNEP)は、新たな報告書の中で主張しています。

耳の痛い真実

「新たな報告書は、致命的な洪水や嵐、猛烈な山火事火災を通じて自然が一年にわたり私たちに訴えてきたことを、科学の冷徹な言葉で伝えるものです。私たちは、大気を温室効果ガスで満たすことを止めなければなりません。それも、速やかに」インガー・アンダーセンUNEP事務局長はこう語りました。

「以前は、徐々に変化を起こす機会がありましたが、そのような時期は過ぎました。加速化する気候関連災害から私たちを救うことができるのは、経済と社会の徹底的な変革だけです」

UNEPによると、各国政府はカーボン・フットプリント削減に向けて「自国が決定する貢献(NDC)」を約束しましたが、2021年に英グラスゴーで開催された直近の気候サミット以降に行われた誓約では、2030年の温室効果ガス予測排出量の1%未満しか削減されないことになります。

微々たる削減量

UNEPの計算では、これは5億トンの二酸化炭素に相当するに過ぎず、排出量を45%削減しない限り地球温暖化を1.5°Cに抑えることはできないと言います。

最新のデータによると、現状では、世界は今世紀末までに2.4°Cから2.6°Cの気温上昇に至る道筋にあります。

「最良のシナリオでは、NDCを無条件かつ完全に実行し、排出量正味ゼロへの追加コミットメントを守ることで、1.8°Cの上昇には抑えられるため、希望はあります。しかし、現在の排出量と短期的なNDC目標、そして長期的な排出量正味ゼロ目標とのギャップを考えると、現時点でこのシナリオには信頼性がありません」UNEPはこのように述べています。

化石燃料に依らない解決策

この状況を改善するには、“電力供給、工業、輸送・建築部門、ならびに食料および金融システム”において、化石燃料を利用しない“大規模かつ速やか”な変革を行い、排出量を45%削減して地球温暖化を1.5°Cに抑えるか、排出量を30%削減して平均気温の上昇を2°Cに抑える必要があると、UNEPは説明しています。

また、温室効果ガスの排出量正味ゼロに向けた変革が、電力供給、工業、輸送・建築部門で進行中であるものの、これを「はるかに急速に」進める必要があると、報告書は結論付けています。

ナイジェリアのヨベ州ジャクスコの洪水による浸水地を歩く女性 ©WFP/Arete/Ozavogu Abdul

 

報告書は、再生可能電力の価格が劇的に低下している中、一部の国で電力供給における変革が最も大きく進歩したとしています。

アンダーセン事務局長は、次のように述べました。「世界経済を改革し、温室効果ガス排出量を2030年までにほぼ半減させることなど難しい注文であり、不可能だと言う人もいるかもしれません。でも私たちは挑戦しなければならないのです。気温のわずかな変化も、脆弱な立場に置かれたコミュニティー、種と生態系、そして私たち一人ひとりにとって意味があるのです」

食料システムの変革

UNEPはさらに、「食料生産産業は温室効果ガス排出量の約3分の1を占めるため、同産業でも迅速かつ持続的な排出量削減が必要」としています。

また、自然生態系の保護、食生活の変更、農場での食料生産の改善、食料サプライチェーンの脱炭素化という4つの分野で行動を起こすことで、食料システムからの排出量が2050年までに現在の水準の3分の1程度に削減できる可能性があると指摘しました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。