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今年のCOP27について、知っておくべきこと(UN News 記事・日本語訳)

2022年11月04日

シャルム・エル・シェイクの山々のシルエット(エジプト、ケスム・シャルム・アッシュ・シェイク)© Unsplash/Juanma Clemente-Alloza

 

今年の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は、世界的な異常気象、ウクライナでの戦争で加速するエネルギー危機、そして、炭素排出に対処し私たちの地球の未来を守るための世界的な取り組みが十分でないことを示す科学的データが繰り返し提示される中、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されます。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、COP27では問題の規模に見合った気候変動対策の「手付金」を支払わねばならないと述べていますが、リーダーたちはそれを実現できるのでしょうか?

UN Newsは、11月6日に正式に開幕するCOP27の2週間の会期中、最新情報をお伝えしていきますが、国連のマルチメディア・チームが紅海沿岸のシャルム・エル・シェイクの現地に向かう前に、事前に皆さんが知っておくべき最も重要なことのいくつかを、このガイドにまとめました。

スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26本会議に出席する各国代表© UNFCCC/Kiara Worth

 

毎年開かれるCOP(コップ)とは?

COP(コップ)とは、地球上で最大規模かつ最も重要な、年次の気候関連会議です。

1992年、国連はブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」を開催しました。そこで国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が採択され、その調整機関(現在はUNFCCC事務局として知られている)が設置されました。

各国はこの条約で、「大気中の温室効果ガス濃度を安定させて、人間活動による気候システムへの危険な干渉を防ぐ」ことに合意しました。現在、197の国と地域がこの条約に調印しています。

国連は、同条約が1994年に発効して以来、地球上のほぼすべての国々が参加する地球規模の気候サミットである「締約国会議(COP、Conference of the Parties)」を毎年開催しています。

これらの会議において、各国は、例えば1997年の京都議定書や2015年に採択されたパリ協定のように、排出量に法的拘束力のある制限を設けるために当初の条約を様々な形で広げる交渉を行ってきました。パリ協定の中では、すべての国が世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える取り組みを強化し、気候変動対策資金を増強することに合意しました。

今年は、27回目の年次サミットにあたるCOP27が開催されます。

スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26での市民団体のデモ© UN News/Laura Quiñones

 

COP27はこれまでのCOPと何が違う?

パリ協定の署名から5年目となった昨年のCOP26(新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により1年遅れて開催)は、「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕しました。COP26議長国を務めた英国は、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標は生き残ったものの、その「勢いは弱弱しい」と言明しました。パリ協定の完全履行に向け、「パリ・ルールブック」とも呼ばれる実施指針が最終決定されるという前進が見られました。

COP26において各国は、より野心的な目標を盛り込んだ自国の計画の更新を含め、より強力なコミットメントを打ち出すことに合意しました。しかし、これまでに国連に計画を提出したのは、193カ国中24カ国にとどまっています。

グラスゴーでは、排出量正味ゼロの約束、森林保護、気候変動対策資金など様々な問題について、交渉の場の内外で多くの誓約もなされました。

議長ビジョンのステートメントによると、COP27では、交渉から歩みを進め、これまでになされたすべての約束や誓約の「実施に向けた計画」へと転換することになります。

COP27議長国を務めるエジプトは、現場での完全で、タイムリー、かつ包摂的で大規模な行動を呼びかけています。

専門家によると、今回の会議では、パリ・ルールブックの実施方法が検討されるほか、グラスゴー以降もまだ結論が出ていないいくつかの点について、交渉が行われる見通しです。

これらの問題には、危機の最前線にいる国々が、適応能力を超えた気候変動の影響に対処できるようにする「損失と被害」への資金提供や、先進国が適応資金から毎年1,000億ドルを低所得国へ拠出するという約束の履行などが含まれます。

交渉には技術的な議論も含まれます。例としては、すべての人々の条件が公平になるよう、各国が実際に排出量を測定する方法を規定するための議論が挙げられます。

こうした議論はすべて、2023年のCOP28で予定されている、初のグローバル・ストックテイクへと道を開くでしょう。これは、気候変動の緩和、適応、パリ協定の実施手段について、世界全体の進捗状況を評価する仕組みです。

2030年の排出量をさらに25%削減するため、世界は緊急に行動と野心を高めなければならない© UNEP

 

では、COP27の大きな目標とは?

1.緩和:各国はどのように排出量を減らしているのか?

気候変動の緩和とは、温室効果ガスの排出を削減または防ぐ取り組みを指します。緩和は、新技術や再生可能エネルギー源の利用、あるいは古い設備のエネルギー効率の向上、経営慣行や消費者行動の変化を意味することもあります。

各国は、自国の気候計画を見直し、緩和に関連する作業プログラムを作成するうえで、グラスゴー気候合意の呼びかけをどのように実施する計画なのかを示すことが期待されています

これは、より野心的な2030年の排出目標を提示することを意味します。UNFCCCは、現在の計画では壊滅的な温暖化を回避するのには、まだ不十分だと指摘しているからです。

農地の浸食防止策に取り組むハイチ北部の農家の人々©WFP Haiti/Theresa Piorr

 

2. 適応:各国はどのように適応し、他国の適応を支援していくのか?

気候変動は起きています。各国は排出量を削減し、地球温暖化のスピードを遅らせるためにできる限りの手を打つだけでなく、市民を守れるよう気候変動の結果に適応しなければなりません。

影響は場所によって異なります。火災、洪水、干ばつ、より暑い日や寒い日、海面上昇のリスクが高まるかもしれません。

COP26において各国代表は、パリ協定で定められた世界全体の適応目標に関する作業プログラムを採択しました

この計画は、コミュニティーや国が知識とツールを備えることで、その適応行動が世界を気候変動にレジリエント(強靭)な未来へと確実に導けるよう導入されたものです。

COP27の議長国は、各国がレジリエンス(強靭性)の向上や最も脆弱な立場に置かれたコミュニティーの支援に向けた自国の進捗を把握し、評価することを期待しています。これは、各国が自国の気候計画における適応の部分において、より詳細で野心的なコミットメントを行うことを意味しています。

昨年、先進国は適応資金を少なくとも倍増させることで合意しましたが、多くのステークホルダーは、パリ協定で定められているように、現在緩和に費やされている金額に相当する水準にまで適応資金をさらに増やすよう求めています。これは間違いなく、シャルム・エル・シェイクで大きく議論されるでしょう。

UNFCCCは、現在と未来の気候リスクに対応するためには、官民のあらゆる資金源を活用し、適応資金の規模を大幅に拡大する必要があることを明確にしています。政府、金融機関、民間セクターなどすべてのプレーヤーが参加しなければなりません。

先進国は気候変動への適応に向けて、毎年1,000億ドルを動員することを約束した© Unsplash/Jason Leung

 

3. 気候変動対策資金:交渉の部屋に居続ける象 -誰もが認識しているが、触れたがらない重要問題-

気候変動対策資金は、COP27で再び重要なテーマとなるでしょう。資金関連の議論はすでに数多く議題に上っており、開発途上国は先進国に対し、特に最も脆弱な立場に置かれた人々への十分かつ適切な資金援助を改めて保証するよう、声高に呼びかけています。

私たちは、先進国による年間1,000億ドルの約束が果たされていないことについて、おそらく多くのことを耳にするでしょう。富裕国は2009年にコペンハーゲンでこの拠出を約束しましたが、公式報告によると、この目標はいまだに達成されていません。専門家はCOP27によって、この誓約が2023年にようやく実現されることに期待を示します。

議長国エジプトは、この点を含め、過去のCOPでなされたコミットメントや誓約をフォローアップすることを目指しています。

パキスタンの洪水で破壊された自宅の瓦礫の上に立つ4歳のラヒムくん(2022年9月3日)©UNICEF/Asad Zaidi

よく耳にする「損失と損害」の問題とは?

気候変動は、熱帯低気圧や砂漠化、海面上昇などの異常気象事象を通じて、各国に多大な損害をもたらします。

こうした「自然災害」の激化は、主に豊かな先進国から排出される温室効果ガスの増加によって引き起こされており、最も被害を受けることの多い開発途上国は、補償を受けるべきであると主張しています。

デンマークは、第77回国連総会のハイレベルウィーク中、気候変動の被害を受けた開発途上国に1,300万ドルを拠出すると発表し、支援を表明した最初の国として、大きなニュースになりました。

「損失と損害」として知られるこうした支払いの問題は、まだ正式な議題に上っていませんが、COP27での議論の大きなテーマになる可能性は非常に高いでしょう。

77カ国グループ(G77)プラス中国(実質的にすべての開発途上国が含まれる)は、この問題を議題に追加するよう要求していますが、それには、会議初日にすべての国のコンセンサスを得る必要があります。

今日まで、損失と損害のための基金の創設に関する議論はありましたが、具体的なことは決まっていません。人権と気候に関する国連特別報告者のイアン・フライ氏などの専門家は、さらなる機運の高まりと「実現」に期待を寄せています。

「主要先進国の中には、この問題を非常に懸念し、汚染者負担の観点で検討している国もあります。現在、気候変動の影響を最も受け、費用負担に苦しんでいる国々は、自分たちでその費用を工面しなければならないのです」

「ですから、大国、つまり主要排出国が立ち上がり、『私たちが何かしなければならない、脆弱な国々に対して貢献しなければならない』と声を上げるべき時が来ています」フライ氏はUN Newsの最近のインタビューで、このように述べています。

タイのソーラーパネル工場で働く技術者©ADB

 

ウクライナでの戦争はどのような影響を及ぼしているのか?

パラオの国連常駐代表で気候変動交渉官のイラナ・セイド氏によれば、現在の社会政治情勢とエネルギー危機を考慮すると、今回のCOPは「混乱したもの」になりそうです。

「非常にたくさんの国が合意したことは非常に多くあるものの、ウクライナで戦争が起きたため、今はそれらを実行できないのです。戦争により、状況は一変してしまいました」とセイド氏は説明しています。

実際、ロシアのウクライナ侵攻は、世界的なインフレ、エネルギー、食料、サプライチェーンの危機を引き起こしています。ドイツなどの国々は、短期的に気候目標を縮小せざるを得ず、グラスゴーで発表された歴史的な米中気候変動作業部会は、現在中断されています。

COP27では、一部の国々が昨年打ち出した誓約やコミットメントが後退する可能性が高いでしょう。

しかし、国連特別報告者のイアン・フライ氏は、この戦争は各国がエネルギーの自給自足を目指すための「警鐘」にもなり得ると考えています。

それを実現する最も安価な方法は、排出削減の鍵を握る再生可能エネルギーの利用だとフライ氏は主張しています。

「ポルトガルは100%再生可能エネルギーに移行する方向に向かっており、デンマークもそうしていることがわかっています。これにより、他の国々も再生可能エネルギーやエネルギーの自給自足が必要とみる認識が拡大すると考えています」と同氏はUN Newsに語りました

スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26でのデモに参加する若い環境活動家たち© UN News/Laura Quiñones

 

市民社会もCOPに参加するのか、それとも各国代表だけなのか?

メインイベントは、11月6日から18日までシャルム・エル・シェイク国際会議センターで開催される予定です。

これまでのところ、政府、企業、NGO、市民社会団体を代表する3万人以上が参加登録をしています。

UNFCCCの197の締約国は、G77プラス中国、アフリカグループ、後発開発途上国、アンブレラグループ、小島嶼開発途上国、ラテンアメリカとカリブ海諸国の独立同盟といった、グループや「ブロック」単位で交渉を共にすることがよくあります。

交渉には、正式参加はできませんが、介入して透明性の維持に貢献するオブザーバーも加わります。オブザーバーには国連機関、政府間組織、NGO、宗教グループ、報道機関が含まれます。

しかし、公式交渉のほかに、会議室やパビリオン・セクションもあり、テーマ別の日に分けて何千ものサイドイベントが開催されます。

今年のテーマは、ファイナンス(金融)、サイエンス(科学)、若者と将来世代、脱炭素、適応と農業、ジェンダー、水、ACEと市民社会、エネルギー、生物多様性、ソリューションズ(今回のCOPで最も新しいテーマ)です。

例年通り、会議はブルーゾーンとグリーンゾーンで行われ、今年は2つのゾーンが真向かいに位置しています。

ブルーゾーンは国連が管理する交渉の場で、入場する参加者はすべてUNFCCC事務局の許可を得なければなりません。

今年はブルーゾーン内に、グラスゴーでのCOP26の2倍となる156のパビリオンが設けられます。多くの国連機関、国、地域が参加するほか、今回初めて若者と農業・食料のパビリオンも設けられる予定です。

グリーンゾーンはエジプト政府が管理し、登録した一般市民に開放されます。気候変動対策に関する対話、認識、教育、コミットメントを促すためのイベントや展示、ワークショップ、講演などが行われます。

議長国によると、グリーンゾーンは世界中のビジネスコミュニティー、若者、市民社会や先住民社会、学界、アーティスト、ファッションコミュニティーが自己表現を行い、声を届けることができるプラットフォームとなります。

今年はグリーンゾーンに、特別な「抗議ゾーン」や、巨大な屋外ラウンジとテラススペースが設けられます。

COP26の閉幕を告げる交渉担当者たち。この会議では、気候変動に取り組むための新たなグローバルなコミットメントが模索された© UN News/Laura Quiñones

 

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