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国連:新たなグリーン産業の時代がSDGs達成への突破口に(2023年4月5日付プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 23-023-J 2023年04月28日

国連、2023年4月5日 — 高まる食料・エネルギー危機、不確かな世界経済見通し、深刻化する気候変動の影響を背景に、国連は本日、各国間に広がる開発ギャップを埋め、気候目標を達成し、持続可能な開発目標(SDGs)を実現するためには、持続可能な産業への変革が必要であると指摘しました。

『2023 Financing for Sustainable Development Report: Financing Sustainable Transformations(2023年持続可能な開発資金報告書:持続可能な変革への資金供給)』は、電力供給、工業、農業、輸送、建築といった分野で変革を加速するために、緊急かつ大規模な投資が必要だと述べています。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、報告書の序文で次のように述べています。「持続可能な開発に投資しエネルギー・食料システムを変革する手段を欠くため、開発途上国はさらに取り残されつつあります。持てる国と持たざる国に二分された世界は、すべての国々にとって明白な危険をはらんでいます。私たちは、速やかにグローバル協力を立て直し、多国間行動において今私たちが抱えている危機の解決策を見出す必要があります」

報告書によれば、必要な変化の一部はすでに起こりつつあります。ウクライナでの戦争によって生じたエネルギー危機によって、世界中でエネルギー移行に向けた投資に拍車がかかり、2022年には過去最高の1兆1,000億ドルに急増しました。エネルギー移行への投資額は2022年に初めて化石燃料システムへの投資額を上回りましたが、その大半は中国および先進国においてです。

『2023年持続可能な開発資金報告書』では、先進国とは異なり、ほとんどの開発途上国が投資のための資源を持っていないことが明らかになっています。気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、そして2019年に比べて最大2倍に膨らんだ債務支払いも相まって、大半の開発途上国は莫大な財政上の圧力にさらされています。その結果、こうした国々が持続可能な変革に投資する能力は限られているのです。

例えば、2020年と2021年に先進国で費やされたパンデミック後の復興費用は、一人当たり1万2,200ドルでした。これは、開発途上国の費用(410ドル)のおよそ30倍、後発開発途上国(20ドル)の610倍にも相当します。

アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長は次のように述べています。「SDGsへの投資を拡大すると共に国際金融システムを改革しなければ、私たちは持続可能な開発のための2030アジェンダに対する共通のコミットメントを果たすことはできません。朗報は、私たちが何をどのように行うべきかをわかっていることです。エネルギー、食料、教育分野において重要な変革に乗り出すところから始まり、新たなグリーン産業とデジタル時代の幕開けに至るまで、私たち全員が歩みを速め、誰一人取り残さないようにしなければなりません」

歴史的に見ると、産業化が進歩を促す原動力となり、経済成長、雇用創出、テクノロジーの前進、貧困削減をもたらしていると同報告書は指摘します。また、投資を拡大して必要な変革の基礎を築くために、統合的な国家計画に下支えされた持続可能な新世代の産業政策を提唱しています。農業関連産業、グリーンエネルギー、製造業には、包摂的な成長の機会が数多く存在しています。

近年のテクノロジーの急速な進歩は、持続可能な産業化と成長への移行が同様に急速に進む可能性を示しています。2021年から2022年の間に、インターネットを定期的に利用する人の数は3億3,800万人増加しましたが、これは1時間につき約3万8,600人増加したことになります。さらに、インターネット接続サービスが貧弱な地域での輸出業者の割合が全企業の19%にとどまっているのに対し、質の高い地域では44%にのぼります。

しかし生産力は、不均等なままです。アフリカの後発開発途上国の製造業付加価値は、SDGsターゲット9.2に従って倍増するどころか、2000年のGDP比約10%から、2021年には9%へと低下しました。ジェンダー平等を保障しながら、低炭素社会への移行を実現し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を創出し、経済成長を促すには、国内の生産能力を強化することに目標を定めた政策が必要です。

この変革に必要な資源を供給するため、『2023年持続可能な開発資金報告書』は、税制の強化、民間投資の実現と促進および国際公共投資と開発協力の拡大を組み合わせるよう呼びかけています。十分な資金を調達するために、国際金融アーキテクチャの変更も必要です。

報告書は、国際システムについて、現在、国際金融、通貨、貿易、税制の諸分野にわたって、1944年に開催されたブレトン・ウッズ会議以降最大の見直しが行われていると指摘しています。国際機関が急速に進化する各国のニーズに適応しようと取り組んでいる中で、改革が断片的で不完全なものにとどまる、あるいはSDGsを考慮に入れない場合、持続可能な開発は達成できないだろうと警告しています。

持続可能な変革を実現すべく刷新された効率的な国際金融アーキテクチャには、以下の枠組みの見直しが必要です。

  • 開発途上国のニーズを満たし、デジタル化・グローバル化された企業に対する課税ルールを含めた国際税制基準
  • 民間セクターの収益性と持続可能性をよりよく結びつけるための政策および規制枠組み
  • 開発銀行システムの規模と任務の拡大
  • 早急に事業化すべき、気候変動に関する損失と損害基金
  • 債務免除、および国際債務整理アーキテクチャの大幅な改善(低所得国の60%が債務で苦しんでいるか、そのリスクを抱えていることを考慮して)
  • グリーン補助金に関するアプローチを見直して現在の緊張を解決するための、多国間貿易ルール

機関合同報告書の作成の指揮を執った李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、次のように述べています。「持続可能な開発における格差が永続することを回避し、開発の失われた10年を防ぐための解決策が、私たちにはあります。高まる政治的緊張、国際的な連携の瓦解、ナショナリズムへ向かう憂慮すべき傾向を克服するための政治的意思を見出し、共通の未来に対し緊急に投資するこの機会を今つかまなければなりません」

 – 以上 –

 編集者注

  • 今回の報告書は、60を超える国連機関と国際機関で構成される「開発資金に関する機関合同タスクフォース」が共同で作成したものです。国連経済社会局持続可能な開発資金事務所は、世界銀行グループ、国際通貨基金(IMF)、国際貿易機関(WTO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連開発計画(UNDP)、国連工業開発機関(UNIDO)と密接に協力しながら、タスクフォースの実質的な編集者と調整役を務めています。「アディスアベバ行動目標」によりマンデートを与えられたこのタスクフォースの座長は、李軍華・経済社会問題担当事務次長が務めています。この報告書の全文は、https://developmentfinance.un.org/fsdr2023でご覧いただけます。
  • この報告書は、開発資金に関する経済社会理事会(ECOSOC)フォーラムにおける議論のたたき台となりますが、加盟国は同フォーラムで、持続可能な財源を動員するために必要な措置について議論します。報告書に基づく交渉は、現在も進められています。この報告書は、SDGsの達成を支援する持続可能な投資の機会に向けて各国政府の高官や投資家が一堂に会するプラットフォーム、「SDG投資フェア」にも情報を提供するものです。
  • 今回の報告書は、とりわけグローバルな経済状況、貿易、債務、民間企業と民間資金、テクノロジー、および国際開発協力を対象としています。

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さらに詳しい情報や、国連の専門家とのインタビューのお申し込みについては、下記にお問い合わせください。

Rita Ann Wallace
UN Department of Economic and Social Affairs
携帯:+1 516 707 5570
メールアドレス:rita.wallace@un.org

Sharon Birch
UN Department of Global Communications
メールアドレス:birchs@un.org

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