国連の小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議、SIDSが壊滅的な債務危機に直面する中、「レジリエンス(強靭性)の新たな時代」を宣言(2024年5月30日付プレスリリース・日本語訳)
プレスリリース 24-036-J 2024年06月14日
セントジョンズ(アンティグア・バーブーダ)、5月30日 — 第4回国連小島嶼開発途上国国際会議(SIDS4)は本日、アンティグア・バーブーダにて、脆弱な立場に置かれたこれらの国々に有意義な変化をもたらす、大胆な新しい10カ年行動計画を全会一致で支持し、閉幕しました。
小島嶼開発途上国(SIDS)は、狭小な国土や地理的遠隔性、限られた資源や輸出品目など固有の課題を抱えていることから、持続可能な開発において特殊な事例に留め置かれており、衝撃や危機に対して脆弱な立場にあります。
多くのSIDSが、世界的な金融危機と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックという二重のショックによって依然として不安定であり、最近の複数の世界的な危機の同時発生も相まって、状況は深刻化しています。現在、SIDS諸国の40%超が、持続不可能な水準の債務の瀬戸際にあるか、あるいはすでに対応に追われており、健康や教育の分野に投資すべき資金がしばしば持続不可能な債務の返済に充てられています。
さらにSIDS諸国は、世界全体の二酸化炭素排出量のわずか1%しか排出していないにもかかわらず、グローバルな気候危機の最前線に立たされています。SIDS諸国が気候変動への適応や緩和の取り組みを発展させるのを支援するという国際的な誓約は目標に届いておらず、SIDSは、2019年に開発途上国向けの気候変動対策資金として誓約された1,000億米ドルのうち、150億米ドルしか手にしていません。
SIDS4会議の主要な成果である「SIDSのためのアンティグア・バーブーダ・アジェンダ(ABAS)— 新たな繁栄への宣言」は、SIDS諸国の持続可能な開発のために、新しい、野心的な道を開くものです。
アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長は閉幕にあたり、SIDSに向けた投資の必要性について次のように強調しました。「この4日間で、皆様の多くがABASを実現することにコミットされました。私たちは、欧州連合(EU)、ドイツ、オランダ、米国からのコミットメントも確認しました。その他の国々からのさらなる協力にも期待しています」
モハメッド副事務総長は今後について、「障害者、高齢者、先住民も含め、SIDSの中で脆弱な立場に置かれた、または取り残されたグループの人々の声が引き続き届けられるよう、努力を惜しんではなりません」と述べました。
各国首脳22名を含む約3,000人の参加者が会議に出席し、小島嶼国の優先事項を世界の開発アジェンダの先頭に位置付けることを支持しました。4日間にわたり、世界の指導者たちは、民間セクター、市民社会、学術界、そして若者たちとともに、課題に光を当て、革新的で実践的な解決策を提示し、SIDS諸国における持続可能な開発を加速させる多くのコミットメントを発表しました。
成果文書について
会議は、今後10年間の持続可能な開発におけるSIDS諸国の熱意とともに、その実現のために国際社会に求められる支援を示した「SIDSのためのアンティグア・バーブーダ・アジェンダ(ABAS)— レジリエント(強靭)な繁栄への新たな宣言」を全会一致で採択し、閉幕しました。
SIDS4の事務局長を務めた李軍華国連経済社会問題担当事務次長は、次のように述べました。「本日ここで採択された『SIDSのためのアンティグア・バーブーダ・アジェンダ』は、SIDS諸国が賢明で、状況に合った包摂的な開発戦略を策定するための明確な道筋を描いています。同アジェンダは、SIDS諸国の経済を変革し、持続可能な開発へ向かう明確な軌道にそれらの国々の経済を乗せる可能性を持っています。ここからが本当の仕事の始まりです。私たちは、SIDS諸国とともにABASの包括的な実現のために取り組むことを誓っており、少しの時間も無駄にはできないのです」
SIDS諸国がレジリエント(強靭)な繁栄を目指すその野心を達成できるよう、各国は既存の義務とコミットメントに沿って、無理なく利用できる譲許的融資をより利用しやすいものにし、開発融資の実効性を高め、生物多様性に関わる気候変動対策資金を増やすとともに、気候行動を直ちに加速させることに合意しました。
その他の重点分野としては、海洋を基盤とした経済、科学、テクノロジー、イノベーション、SIDS諸国におけるデータ収集と分析を含むモニタリングと評価が挙げられました。
多次元脆弱性指数の価値
各国はまた、その国の脆弱性を測定して開発状況をより包括的に把握するのに役立つ「多次元脆弱性指数」の価値を強調し、それを国際金融機関が現行の実践や政策に組み込むことを推奨しました。また、マルチハザードに対応した早期警報システムと国連事務総長の「すべての人に早期警報システムを」イニシアチブを含む、災害リスク削減の主流化および防災の強化も、主要な優先事項となります。
ラバブ・ファティマ国連事務次長 兼 国連後発開発途上国・内陸開発途上国・小島嶼開発途上国担当上級代表は、次のように述べています。「SIDS4は、SIDS諸国の開発過程において、真に重要な節目となっています。“アンティグア・バーブーダ”は今後10年、そしてその先も、世界中の小島嶼開発途上国の進歩と繁栄を表す言葉となるでしょう。この重要な会議の閉幕にあたり、私たちの時代を表すインスピレーション、アイデア、決意をここから前進させようではありませんか」
コミットメントのスナップショット
- アンティグア・バーブーダは、「SIDSおよび債務の持続可能性支援サービスのための中核的研究拠点」を設立。
- 米国は、2024年までに、国際的かつ公的な気候変動対策資金を以前の水準の4倍に当たる、年額110億米ドル超まで増額する約束を発表。
- EUは、持続可能な開発への民間セクターの参加を促すために、2027年までに「グローバル・ゲートウェイ」投資戦略を通じて、官民投資で3,000億ユーロを動員することを誓約するとともに、SIDS諸国で複数のイニシアチブを進行中。
- バルバトスは、「持続可能な開発のための国連工業開発機関(UNIDO)-バルバドス・グローバルSIDSハブ」の設立を発表。
- 国連開発計画(UNDP)は、国連環境計画(UNEP)と共同で新たに立ち上げた、1億3,500万ドルの「ブルーとグリーンの島嶼統合プログラム」を発表。
- 「緑の気候基金(GCF)」は、2030年までに500億米ドルを達成する「50by30」ビジョンとともに、各国が野心的なプログラムをより推進できるよう、同基金が協力する組織間のネットワークを強化していく取り組みを発表。
全ての項目については、以下のコミットメント暫定リストをご覧ください。https://sdgs.un.org/sites/default/files/2024-05/Preliminary%20list%20of%20SIDS4%20commitments%2030May_rev.pdf
今後の展望
SIDS4会議は、2024年9月22日から23日にかけてニューヨークの国連本部で開催される「未来サミット」に道筋をつけました。未来サミットは、マルチラテラリズム(多国間主義)を刷新し、誰一人取り残さないという約束を果たすための重要な機会として、SIDS諸国の懸念にさらに取り組み、最も脆弱な立場に置かれた国々が持続可能な開発目標(SDGs)を支援する上で必要な資金とテクノロジーの両方にアクセスできるようにするための好機となります。
未来サミットでは、世界の指導者たちがSIDS諸国の優先項目に適切に沿った「未来のための協定」に合意する予定です。この中には、SDGsを達成する上での大きな資金ギャップに対処し、譲許的融資の割り当てに脆弱性の尺度を組み込むことも含まれます。未来サミットでは、開発途上国の声と代表権を強化し、持続可能な債務の促進を目的としてグローバルな債務アーキテクチャを改善するために、国際金融アーキテクチャの改革を求めます。
SIDS4会議に関する主なリンク
ウェブサイト:https://sdgs.un.org/conferences/sids2024
メディアコーナー:https://sdgs.un.org/conferences/sids2024/media
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