COP29国連気候会議、いのちと暮らしを守るべく開発途上国向け資金を3倍に増やすことで合意(2024年11月24日付 UNFCCCプレスリリース・日本語訳)
プレスリリース 24-083-J 2024年12月05日
UNFCCC/2024年11月24日 — 国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)は本日、各国が国民と経済を気候関連災害から保護し、クリーンエネルギー・ブームの多大な恩恵を分かち合うことを支援する新たな資金目標を掲げて閉幕しました。
気候変動対策資金が焦点となったCOP29では、アゼルバイジャンのバクーに200カ国近くの代表が結集し、次のような画期的な合意に達しました。
- 開発途上国に向けた資金拠出の目標を、従来の年間1,000億米ドルから、2035年までに年間3,000億米ドルへ3倍に増加させる。
- 開発途上国に向けた公的部門・民間部門からの資金拠出を、2035年までに年間1兆3,000億米ドルに拡大するために、すべての当事者が協力して取り組むことを確実にする。
この合意は、気候資金に関する「新規合同数値目標(NCQG)」を正式名称とし、合意内容のすべての文言についてすべての国々が全会一致で承認することが求められるプロセスの中で、数年にわたる準備作業と2週間の集中交渉を経て合意されました。
「あらゆる国々で気候変動の影響が深刻化する中で、この新たな資金目標は人類にとっての“保険”です。とは言え、どんな保険もそうであるように、保険料が全額期限通りに支払われなければ機能しません。何十億もの人々の命を守るためには、約束が守られなければならないのです」UNFCCCのサイモン・スティル事務局長は、このように述べています。
「それは、クリーンエネルギー・ブームの成長を継続させ、すべての人々のためのより多くの雇用、より力強い成長、より安価でよりクリーンなエネルギーという多大な恩恵を、すべての国々が共有するのに役立つでしょう」
国際エネルギー機関(IEA)は、クリーンエネルギーへの世界全体の投資額が2024年に初めて2兆米ドルを超えると見通しています。
COP29における新たな資金目標は、COP27およびCOP28で達成されたグローバルな気候行動における重要な前進を足掛かりとしています。COP27では、歴史的な「損失と損害基金」に合意し、COP28では、エネルギーシステムにおけるすべての化石燃料からの迅速かつ公正な移行、再生可能エネルギーの3倍増、気候レジリエンス(強靭性)の強化が世界的に合意されました。
COP29では、これまでに開催されたCOPで達成できなかった炭素市場に関しても、合意に達しました。これらの合意は、各国がその気候計画をより迅速かつ安価に実施し、科学的に求められている通り、今後10年間の世界全体の排出量半減をより早く前進させる助けとなるでしょう。
透明性のある気候報告と気候変動適応策に関しても、重要な合意が得られました。その要約は後述の通りです。
スティル事務局長はまた、バクーで合意された内容がすべての締約国の期待に応えるものではないこと、そしていくつかの重要課題については、来年もさらに多くの取り組みが必要であることを認めています。
「どの国も望んでいたすべてを手に入れたわけではなく、私たちは山のような仕事を抱えてバクーを去ることになります。私たちが前進させるべき他の多くの課題は、ニュースのヘッドラインには載らなくとも、何十億もの人々にとってのライフライン(生命線)です。ですから、勝利の余韻にひたっている時ではなく、私たちは目標を見定め、ベレン(COP30の開催地となるブラジルのアマゾン地域の都市)への道のりにおいて努力を倍増させる必要があるのです」事務局長はこのように述べています。
COP29での資金合意は、すべての国々がより強力な気候計画(「国が決定する貢献(NDC)」)の提出期限を来年に迎える中で成立しました。これらの新たな気候計画では、1.5℃の温暖化の上限の維持を現実的なものとするために、すべての温室効果ガスとすべての部門を対象としなければなりません。COP29では、英国とブラジルというG20の2カ国がNDC3.0において気候行動を強化する計画であることを明確に示しました。それは、そうすることが自国の経済や国民にとって完全に有益であると両国が考えたためです。
スティル事務局長はこう語りました。「私たちはまだまだ長い道のりを歩まねばなりませんが、ここバクーでまた、重要な一歩を進めました。国連のパリ協定は人類の救命ボートであり、その他には何もありません。ですからここバクーで、この会場に集まったすべての国々が、ともに前へと漕ぎ進んで行くのです」
COP29におけるその他の主な成果の概要は、次の通りです。
パリ協定第6条
ここ2週間での注目すべき成果は、炭素市場に関する進展でした。10年近くにわたる作業を経て、各国はパリ協定の下で炭素市場の運用方法を定めた最終的な構成要素について合意し、国と国との取引と炭素クレジットの仕組みを完全に稼働させます。
国と国との取引(第6条第2項)については、COP29の決定により、各国がどのように炭素クレジットの取引を認可するのか、また、それを追跡する登録機関をどう機能させるのかが明確化されました。さらに、透明性のあるプロセスにおける技術的なレビューを通じて、環境に関する誠実性が事前に確保されることが再確認されました。
COP29の初日には、各国は国連のもとで管理された炭素市場(第6条第4項 — メカニズム)の基準について合意しました。これは、新たな資金の流れの恩恵を受ける開発途上国にとっては朗報です。また、市場での足場を得るのに必要な能力構築の支援を受けられる後発開発途上国にとっては、とりわけ良い知らせです。
「パリ協定クレジットメカニズム」と呼ばれるこの仕組みは、強力な環境および人権保護に照らしたプロジェクトの義務的なチェックによる裏付けを得るものであり、そこには、先住民の情報に基づいた明確な同意が得られない限りプロジェクトを進めることができないようにするセーフガード(保障措置)も含まれています。また、プロジェクトの影響を受ける人は誰でも、決定に対する異議申し立てや苦情の申し立てを行うことができます。
第6条第4項で合意された本文では、国連の炭素市場を科学に基づいたものとすることを明確に義務付けています。この文言は、炭素市場を立ち上げて運営する機関に対して、今後のすべての作業において利用可能な最善の科学的知見を考慮することを求めています。
炭素市場に関する作業は、バクーだけに留まるものではありません。新たな炭素クレジットメカニズムを構築する監督機関は、膨大な「2025年のToDoリスト」を締約国から手渡されており、今後も締約国に対して説明責任を負うことになります。
透明性
透明性のある気候報告については、バクーにおいて大きく前進しており、気候政策を長期的に強化するためのより強固な根拠基盤を構築し、資金的なニーズや機会の特定を支援します。すべての締約国が2024年末までの提出を求められている「第1回隔年透明性報告書(BTR)」を、現時点で13の締約国が提出しています。アンドラ、アゼルバイジャン、欧州連合(EU)、ドイツ、ガイアナ、日本、カザフスタン、モルディブ、オランダ、パナマ、シンガポール、スペイン、トルコが、透明性の高い気候報告を先導し、他の国々の模範となる行動を示しています。受理されたBTRのリストは、こちらで継続的に更新されています。
さらに、COP29では透明性に関するすべての交渉項目が成功裏に妥結され、「強化された透明性枠組み(ETF)」の報告ツールや技術トレーニングの時宜にかなった完成、2024年に始まったETFに基づく報告を行う開発途上国に対する支援に対し、締約国から賞賛の声が上がりました。
気候変動に関する透明性を締約国および非締約国のステークホルダーとともに推進するUNFCCCの協働イニシアチブ「#Together4Transparency」の下で、計42のイベントが開催されました。これらのイベントでは、NDCや排出量正味ゼロへの道筋を策定したり、非締約国のステークホルダーによる気候行動を認識する上で、透明性が果たす重要な役割が強調されました。実施されたイベントには、ハイレベルセッション、出席が義務づけられたイベント、各国がBTRを準備するためのトレーニングセッションや、技術専門家が今後のレビュープロセスに備えるためのトレーニングセッションなどが含まれます。
UK International Forest Unitが4年間にわたりUNFCCCの活動を支援すべく300万ポンドの拠出を誓約したことで、「REDD+プログラム」の重要な役割が認識されました。この資金援助によって多くの国でREDD+の活動が強化され、UNFCCC事務局はREDD+の専門家が技術的対話に参加するための専用スペースを設けることが可能になります。これらの取り組みは、2030年までに森林の伐採や劣化を食い止め、再生するグローバル・ストックテイクの目標に沿い、REDD+の透明性と実施を強化することが期待されています。
適応
COP29は、適応についても重要な機会であり、いくつかの重要な成果がもたらされました。後発開発途上国(LDC)に関連する事項についてのCOPの決定には、LDCの「国別適応計画(NAP)」実施のための支援プログラムの策定に関する規定が盛り込まれました。締約国は、NAPの策定と実施に向けた進捗に関する2回目の5年評価について広範に議論し、2025年6月にも引き続き議論する予定です。
「国別適応計画(NAP)に関するハイレベル対話」には、気候変動への適応の緊急性の高まりに対処するために、後発開発途上国や小島嶼開発途上国の閣僚、金融専門家、国際ドナー国が招集されました。議論では、2025年のNAP提出期限に間に合わせるための革新的な資金調達、技術支援、行動の加速化に焦点が当てられました。ハイレベル対話は、NAPを迅速化し、計画を具体的な成果に変えるための強力な行動呼びかけで締めくくられました。
適応に関する世界的な目標についての成果は、COP30に向けた指標作業計画の明確な道筋を定めており、専門家が締約国にバトンを渡す前に技術的な作業を継続するプロセスを提供しています。COP29ではまた、UAEフレームワークの実施を強化するためのバクー適応ロードマップとバクーハイレベル対話も発表されました。最終的に今回の成果は、革新的な適応策を今後も継続的に明確化する合意が成立したことで、野心をかき立てるものになっています。
COP29では、気候行動における先住民や地域コミュニティーの発言権を高める決定的な一歩を踏み出し、「バクー作業計画」を採択し、地域共同体および先住民プラットフォーム(LCIPP)の促進作業部会(FWG)のマンデートを更新しました。採択された決定は、締約国、先住民、地域コミュニティー間の協力促進においてFWGが成し遂げた前進を認識した上で、気候危機への対応における先住民と地域コミュニティーのリーダーシップを強調しています。
ジェンダーと気候変動
各国は、ジェンダーと気候変動に関する決定に合意し、強化された「ジェンダーと気候変動に関するリマ作業計画」をさらに10年間延長し、ジェンダー平等の重要性を再確認するとともに、条約全体を通じてジェンダー主流化を推進しています。
各国はまた、COP30での採択に向けた新たなジェンダー行動計画の策定にも合意し、具体的な実施の方向性を定めることになりました。
市民社会の参加、そして子どもと若者たち
COP29には、世界の指導者たちのほか、市民社会、地方政府、企業、先住民、若者たち、慈善団体、国際機関が参加しました。5万5,000人超が参加し、アイデアや解決策を共有し、パートナーシップや連合を構築しました。
COP29でなされた決定は、とりわけ「気候エンパワーメント行動(ACE)」の下で、気候行動にすべてのステークホルダーが参画するようエンパワーメントすることの多大な重要性についても改めて強調しています。締約国はACEのそれぞれの要素を各国の気候変動政策、計画、戦略、行動に統合することの重要性をいま一度思い起こし、UNFCCC事務局がまとめたACEの要素をNDCに統合するための模範事例集に注目しました。
COP29は、「若者主導の気候フォーラム」への子どもたちの意味ある参加を確保するための専用スペースが初めて設けられたことで、重要な節目となりました。最年少の弱冠10歳の子を含めた4人の子どもたちが司会やスピーカーを務め、締約国やオブザーバー機関と直接やり取りをしました。子どもたちの参加は、気候行動を推進する上での包摂や世代間協力の重要性に光を当てるものでした。
公式交渉と並行して、COP29のグローバル気候行動スペースでは、各国政府や企業、市民社会が協力し、それぞれの現実世界における気候問題解決策を紹介するプラットフォームが提供されました。その概要や要約は、こちらでご覧いただけます。
「世界的な気候行動のためのマラケシュパートナーシップ」のハイレベル気候行動チャンピオンは、COP29で「世界気候行動年鑑(2024年版)」を発表し、企業や投資家、地方政府、市民社会も含めた非締約国のステークホルダーによる気候行動が、パリ協定の目標達成に向けた前進を後押ししていること、そしてそうした人や組織の参画がこれまでになく重要であることを示しています。
さらに詳しく
UNFCCCのサイモン・スティル事務局長によるCOP29の閉会スピーチの原稿は、こちらからご覧いただけます。(アラビア語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語版もあります)
COP29の決定文書は、こちらをご覧ください。
UNFCCC事務局が記録したCOP29での気候行動に関する発表については、こちらをご覧ください。
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原文(English)はこちらをご覧ください。