本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

ファッション産業の廃棄物を減らすための5つの方法(UNEP STORY 日本語訳)

2025年04月18日

Photo by AFP/ Patrick Fallon

チリのアタカマ砂漠では、不要になった衣類の山が、宇宙から見えるほどの高さになったことが報告されています。バングラデシュの首都ダッカでは、繊維染料が河川を黒く染めていると国際メディアが報じました。また、英仏海峡において、魚の腹の中に研究者たちが見つけたものは、合成繊維でした。

これらはすべて、地球にますます大きな犠牲を強いていると専門家が指摘する、衣料品業界の顕著な特徴です。しかも、それは汚染をまき散らしているだけではありません。気候変動を助長し、土地を消耗させているのです。

統計データを見てみましょう。ファッション産業は世界全体の温室効果ガスの排出量の最大8%を生み出しており、エレン・マッカーサー財団によると、毎秒、ごみ収集車1台分の衣類が焼却されているか、埋め立て地に運ばれています。

一方で専門家たちは、各国政府、企業、そして人々がこの部門の廃棄物を最小限に抑え、環境負荷を軽減するためにできる簡単なことが、いくつかあると述べています。

「良いニュースは、より循環型の持続可能なファッション部門を構築するにはまだ遅くないということです」国連環境計画(UNEP)の資源・市場部門長であるエリサ・トンダ氏は、このように述べています。「しかし、ファッション産業を環境保全の推進力へと変革する上で必要な体系的変化を起こそうとするなら、私たち全員が力を合わせる必要があります」

毎年330日、世界は「ごみゼロ国際デー」を記念しますが、今年はファッションとテキスタイル(繊維製品)に焦点を当てます。私たちはこの記念日に先立ち、ファッション部門をより持続可能なものにするための5つの方法について、トンダ氏に話を聞きました。

1. より循環型のファッション産業を構築する

ファッション産業が排出している廃棄物の大半は、同業界の「線形ビジネスモデル」に起因しているとトンダ氏は言います。驚くほどの量の衣類が、地球への影響をそれほど考慮することなく、安価に迅速に製造されています。そうした衣類は大抵の場合、短期間しか着用されず、その後は埋立地に廃棄されたり、焼却されたりしています。こうした状況が気候変動を助長し天然資源を消耗させ陸地や海洋、大気を有害な化学物質で溢れ返らせているのです。

解決策はあるのでしょうか?

トンダ氏は、ファッション産業は新商品の生産量を減らし、衣類や原材料をできるだけ長く使用することで、より循環型なものへと変わっていく必要があると述べています。そのために衣料品メーカーができることは、より耐久性のある服をデザインし、より持続可能な生地を使用し、よりリサイクルしやすい衣類を製造することです。

産業と消費者が「循環型ビジネスモデル」を採用して、ファストファッションからより耐久性のある製品や持続可能な消費へとシフトしていく中で、生産国がその変化に取り残されないよう支援することが重要になると、トンダ氏は付け加えています。

テキスタイルの製造では、1万5,000種類を超える化学物質が使用されており、中には有害なものも含まれている。そのため、各国政府に対して衣類に使用される化学物質を規制するよう求める声が高まっているPhoto by NurPhoto via AFP/Rehman Saad

2. 生地のリサイクルを向上させる

非政府組織のテキスタイル・エクスチェンジによると、新しいアパレル製品、服飾用の生地・布地、履物に使用可能な繊維のうち、リサイクルされた繊維が占める割合は、ほんの1%にすぎません。

トンダ氏は、リサイクル率を上げるために、地方自治体は古くなった衣類を人々が持ち寄ることのできる「衣類バンク」のような、繊維廃棄物を回収するインフラに投資することができる、とトンダ氏は述べています。また地方自治体は、生地のリサイクル・プログラムを拡大することもできます。一方で各国政府は、広範囲な生産者責任プログラムを実施することができます。これは、寿命を迎えた衣類の行き先の責任を、地方自治体や消費者ではなく、メーカーに持たせるもので、多くの国々でこうした取り組みが始まっています。

また一方で、アパレルブランドは、再利用しやすい生地を選択したり、有害な化学物質の使用を段階的に廃止したりするなど、よりリサイクルしやすい衣服をデザインすることができます。

3. 衣類から有害な化学物質を排除する

シュプリンガー・ネイチャー誌の論文によると、テキスタイルの製造には1万5,000種類を超える化学物質が使用されています。衣類を難燃性や防汚性にする目的で加えられるような化学物質の一部は有害であり、数十年にわたり環境内に蓄積するおそれがあり、潜在的に人や動物、地球にも害を及ぼします。こうした化学物質の混合物は複雑に相互作用することもあるため、衣服を安全にリサイクルすることが難しくなります。

トンダ氏が、各国政府がテキスタイルの生産に使用される有害化学物質の安全な管理を規制し、推進することが重要だと主張するのは、このためです。一方、アパレルブランドは、専門家たちが「グリーン・サステナブル・ケミストリー」と呼んでいる動きを採り入れ、自社の製品が環境に配慮した物質で作られていることを確保することができます。

『マイクロプラスチックス』誌に掲載された研究によれば、合成繊維の衣類を洗濯して着用する際に放出されるプラスチックのマイクロファイバーの一部に、有害な化学物質が大量に含まれています。これは各ブランドが製品から有害な化学物質を排除する形でデザインしなければならないことの、もう一つの理由です、とトンダ氏は述べています。繊維メーカー、洗濯機メーカー、そして地方自治体の下水処理場のすべてが、マイクロファイバーの削減と効果的なフィルタリングに関するデータをより多く収集・共有し、ブランドは適切に製品を手入れする方法について、消費者に情報を提供する必要がある、とトンダ氏は付け加えました。

廃棄物を減らすために、消費者はビンテージショップで買い物をしたり、手持ちの服を修繕・仕立て直ししたり、特別な日の服をレンタルしたり、友人と服を交換したりすることができる、と専門家は指摘するPhoto by Science Photo Library via AFP/Caia Image

4. 常に新しい方が良いという考え方を変える

ファッション産業は、世界で最も強力なマーケティングの動力によって煽られ、長年にわたり消費者に対して必要以上に衣類を購入するよう促してきた、と批評家は言います。エレン・マッカーサー財団によれば、2000年から2015年にかけて衣類の生産量が倍増した一方、その着用回数は36%減少しました。

最近発表されたUNEPと国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局の報告書は、ブランド・マーケティング担当者、雑誌編集者、ソーシャルメディアのインフルエンサーなど、ファッション産業の内部関係者に対して、“新しいほうが良い”というトレンドに対抗するよう求めました。この報告書では、これら関係者たちが、より持続可能なライフスタイルを推進し、アパレルブランドに生産規模の縮小を求め、過剰消費を助長するメッセージを排除することで実現できるとしています。

「各ブランドは、衣類を長く愛用する気持ちを生み出すマーケティングメッセージや製品を作ることができます。つまり顧客が製品をより長く着用し手元に置いておきたいと思うように刺激し、実際に製品をそのように長持ちさせるのです。すべての人は周囲の人々に向けて、さらに買い足すのではなく、すでに持っている服を大切にし、工夫して着るよう促すことができるのです」トンダ氏はこのように述べています。

これを支援するため、各国政府は企業に対して、製造する衣類の環境負荷を開示するよう義務づけることができます。そうすることで消費者は、より多くの情報を得て、より持続可能な意思決定を行うことができるでしょう。

5. 量は控えめに、より良い買い物を

トンダ氏は、ファッション産業をより持続可能なものにする責任の大半は各国政府と企業が負うべきとし、同時に消費者にも果たすべき重要な役割があると言います。トンダ氏は「自分の洋服棚に収まる範囲で買い物をし」、循環型ビジネスモデルを支持することを消費者に奨励しています。例えば、それは、手持ちの服を修繕・仕立て直ししたり、特別な日の服をレンタルしたり、ビンテージショップで買い物をしたり、オンラインで古着を購入したり、友人と服を交換したりするということなどです。

もし新品を購入する以外に選択肢がない場合、できるだけ持続可能なブランドや素材を選ぶこと、そして、時が経っても褪せない高品質な衣服に目を向けることをトンダ氏は推奨しています。

トンダ氏はこう言います。「消費者は多大な力を持っています。消費者がより循環型の選択をすることで、ファッション産業をより持続可能にする影響力や手段を持つ人たちにシグナルを送ることができるのです」

3月30日に記念される「ごみゼロ国際デー」は、国連総会決議77/161により制定され、国連環境計画(UNEP)と国連人間居住計画(UN-Habitat)が共同で推進しています。同国際デーの目的は、持続可能な開発の達成に向けて、廃棄物管理と責任ある消費・生産の重要な役割に関する意識を高めることです。ごみゼロ国際デーは、製品ライフサイクルのあらゆる段階における資源の使用量と環境排出物の削減に焦点を当て、個人や組織に対してライフサイクル・アプローチの採用を呼びかけています。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。 

【関連記事】

ごみゼロ国際デー(3月30日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ | 国連広報センター

ファストファッションが世界の廃棄物危機を悪化させている、と国連事務総長が警告(UN News 記事・日本語訳) | 国連広報センター