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メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官
人権デー(12月10日)に寄せるメッセージ

プレスリリース 00/117-J 2000年12月21日

「人権のための新世紀」

 一見して、楽観すべき理由はほとんどありません。新世紀は憂鬱な雰囲気の中で訪れようとしています。重大な人権侵害は後を絶たない一方で、豊かな国と開発途上国との間の大きな格差を縮めることについては、実質的な進展が見られていません。

 2000年のイメージを思い起こそうとすれば、そこに浮かんでくるのものはほとんどがマイナスの光景です。中東からは2つのショッキングな光景が飛び込んできました。父親に隠れて縮こまっていたパレスチナ人の少年が、私たちの目の前で射殺されたり、惨殺されたイスラエル兵の死体が窓から放り出されたりしたのです。

 その他、目にすることのない光景、すなわち、もはや注目されないうちに続いている人権侵害の光景については、何を語ることができるでしょう。私たちは心の底で、一般市民が依然として、世界を醜くさせている数限りない紛争の中で殺傷されていることを知っています。私たちは、冬を迎えるチェチェンの人々の惨状を知っています。私たちは、はるか遠いアフリカで、エイズの蔓延が恐ろしい数の人々の命を奪っていることも知っているのです。

 私の心に残る光景のひとつは、キャシー・フリーマンがシドニー・オリンピックの聖火を灯している姿です。それは少数民族に対する態度の変化を表す力強い象徴でした。しかし、キャシー・フリーマンの姿はある意味で、人権を擁護していく上で私たちが直面する課題を如実に示しています。確かに象徴は大切ですが、政府は現実に、すべての人の人権を保障するための改善、保護および予防措置を講じなければなりません。

 新世紀が人権尊重を広める上で画期的なスタートとなるのではないかという期待は、まだ実現していません。今年、チェチェン、東ティモールおよびコンゴ民主共和国での人権状況をつぶさに視察した私には、直面する課題の大きさがひしひしと感じられました。

 最近のイスラエルとパレスチナの(イスラエルによる)占領地区の訪問から私が得たもっとも強く懸念される印象は、歴史によって結び付けられながらも、現在はお互いに対する見方の大きなギャップの広がりによって引き裂かれた2つの民族というものでした。本質的に、私がそこで聞いたものは、(理解できることながら)以下のものでした。治安の問題に気を取られ、もう一方では、占領によるこまごまとした差別や無力感を日に日に感じ、その恥辱が自らに対する過剰な武力行使によってますます高まっているという、立場の異なる2つの主張でした。私は、パレスチナ占領地区に何らかの国際監視団を派遣し、双方で葬儀が行われるといった日常的な暴力の悪循環を解消し、対話の再開を促すことを勧告しました。

 中東における将来の平和と安定への道は、すべての関係者が、国際人権・人道法の要件を遵守することだと私は確信しています。しかし、このことは世界各地における本質的な課題を物語っています。すなわちそれは、人権に関する教育と訓練を通じて人権の文化を根付かせること、法の支配と司法制度に向けた能力建設を支援すること、国内レベルで国際的な人権の規範と基準の実践を確保することに他なりません。

人権と人間の持続可能な発展

 発展の権利と、発展を通じた権利の実現の重要性に対する認識は高まっています。グローバル化がもたらす恩恵の不均衡に関する懸念が高まる中で、人権の享受に対するグローバル化の影響に疑問を提起する傾向も現れています。事実、私は、国際的な人権が、いわゆるグローバル化と呼ばれるものに影響を与え、これを形作ってゆく政策決定の指針の一部を提供しうると信じています。

説明責任

 説明責任は強力な予防手段となります。それは、重大な人権侵害の犯人達が裁きを逃れることなく、その犯罪の責任を取らされることになるという明確なシグナルを送るものです。国際刑事裁判所をできるだけ早く発足させ、将来の人権と人道法の侵害の防止を助けられるようにすべきです。

人種主義、排外主義、差別との闘い

 2001年には、社会の内部と社会間のきわめて多くの紛争の根源となっている人種主義と排外主義の問題に取り組む絶好の機会が訪れます。人種差別的な暴行と殺人、ヨーロッパ各地におけるユダヤ教会に対する攻撃、人種主義的主張、そして極右政党に対する支持。これらすべては、人種主義が社会の中で強い力を持ちつづけている証拠です。20019月、南アフリカのダーバンで「人種主義、人種差別、排外主義および関連の不寛容と闘う世界会議」が開催されます。この世界会議の成功いかんは、人種主義と闘うための新たな決意を醸成できるかどうかによって評価されることになりましょう。今後数ヵ月の間に、若者、女性(特にジェンダーと人種の問題について)、少数民族、先住民、宗教指導者、労働組合、ジャーナリスト、学識経験者および国際人権関係者全体を動員し、これを人々の世界会議としなければなりません。

 私のねらいは、響きを持った宣言と、再検討のメカニズムを備えた現実的な行動計画を採択することにあります。世界会議は、各国政府に理想にかなった行動を取る用意があるかどうかを見る試金石となるでしょう。

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