反人種主義ダーバン再検討会合の成果
- ピレイ国連人権高等弁務官による寄稿文-
2009年04月29日
ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官による寄稿文(2009年4月24日)
今週、ジュネーブで国連の反人種主義再検討会合が開かれました(4月20‐24日)。会合の反対者たちが予告したような世界の機能停止は起きませんでした。それどころか、世界はより良い場所になったともいえます。再検討会合は総意により、全世界で人種差別や不寛容と闘うという8年前にダーバンで交わされた約束を、さらに前進させる文書を採択したからです。
数十年にわたる人権擁護活動、多くの団体や国々による取り組み、そして人種主義の恐ろしい代償を十分に示す証拠にもかかわらず、人種主義は生き残っています。大小や貧富の差に関係なく、どの社会にも人種主義は見られます。ジュネーブでの会合は、すべての国々が一堂に会し、あらゆる形態の人種主義を許さず、その根絶に努めるという共通の願いを謳った共通文書に合意する機会となりました。
しかし、文書にまだ一言も記されていないというのに、1年以上も前から、再検討会合のボイコットを求める声が強まりました。2001年のダーバン世界会議に合わせて一部のNGOが行った反ユダヤ主義活動が、ジュネーブの会合で繰り返されるのではないかという懸念が、反対の主な根拠でした。このような一部のおぞましい行為が、2001年のダーバン会議から2009年のジュネーブ会合に至る全プロセスの評判を傷つけたことは事実です。
国連総会は2001年会議の最終文書「ダーバン宣言および行動計画(DDPA)」の実施状況を再検討するため、ジュネーブでの会合を招集しましたが、カナダ、イスラエル、米国、オーストラリア、ニュージーランド、および、EU27カ国のうち5カ国の計10カ国が、これに出席しないことを決定しました。
これら諸国の欠席は大きな痛手となりました。というのも、会合の初日、イランのマフムード・アフマディネジャード大統領がイスラエル、米国その他の西側諸国を非難する演説を行い、事実上、この国連フォーラムを政治的宣伝の場に用いたからです。
しかし翌日、会合を締めくくる文書が総意により採択されたことで、そのような対立的スタンスは完全に退けられました。加盟国はその決意、妥協の精神、そして多様性の尊重を示しつつ、共通かつ緊急性の高い課題に団結して取り組む姿勢を示したのです。この合意は全世界の人種主義、差別および不寛容の数限りない犠牲者に対し、恒久的に有益な効果を及ぼすものと期待されます。
各国は最終文書で、特に移住者、難民および庇護申請者との関係において、人種主義、人種差別および排外主義の発現を予防することを約束しました。各国はまた、アフリカとアジアの出身者、先住民、および、国民的または民族的、宗教的、言語的少数派に属する個人について、参加と機会の増大を促進することにも合意しました。そして、雇用や社会サービス、医療へのアクセス、さらにはその他生活領域への参加が、差別によって公然と、あるいは極秘に妨げられないようにすることを確約しました。多様な差別形態への対策も講じられることになりました。