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朝日地球会議2022に寄せる メリッサ・フレミング 国連事務次長ビデオ・メッセージ (2022年10月16日)

プレスリリース 22-062-J 2022年10月16日

皆様、ニューヨークからこんにちは。

朝日地球会議2022に参加する皆様にお話しできることを嬉しく思います。

私たちは、世界が未曽有の複数の危機に直面し、人々の生活が一変する危機的な時代を生きています。

しかし、希望こそが私たちを前進し続け、変化と具体的な行動の原動力です。

希望を解決策と組み合わせることで、より平和で持続可能な世界へと続く道を開くことができます。

今年の朝日地球会議のテーマ「希望と行動が世界を変える」が、これまで以上に重要である理由はここにあります。

皆様、

現在、世界は数えきれないほどの危険に直面しています。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、9月の国連総会で、人類と地球の存続について警鐘を鳴らしました。「私たちの世界は危機に瀕し、麻痺しています」と警告したのです。

不平等がもたらす苦しみ、気候変動による破滅的な惨禍、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの長引く影響、新旧の紛争が引き起こす計り知れない苦痛。

ウクライナでの無意味な戦争や世界中で増加している戦闘行為といったこれらの紛争が、まさに人類の未来を脅かしています。地政学的な分断により、あらゆる形態の国際協力が弱体化しているのです。

気候危機が甚大な被害をもたらしています。世界の第一線の科学者たちは、人類の半数近くが気候変動の危険地域で暮らし、15倍も高い確率で気候変動による被害で死に追いやられることを確認しました。

同時に、COVID-19も収束しておらず、パンデミックからの復興にもばらつきがあります。

拡大する不平等、急騰する食料とエネルギーの価格、インフレの高騰が生活と生計を破壊しています。9月に発表された『人間開発報告書2021-2022年版』によると、世界の人間開発指数が初めて2年連続で低下しました。

一つひとつの危機が、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を遠ざけています。とはいえ、SDGsが極めて重要で、より良い世界へのロードマップであり続けることに変わりはありません。しかし、2030年の期限が近づく中、目標の達成が危ぶまれています。進捗が失速し、後退しているものさえあります。

これらすべての問題により、世界の様相は暗澹としています。確かにその通りなのですが、私たちを失望させ、打ちのめしているのも事実です。

世界の終わりを思わせるような見出しは注目を集め、緊迫感を生みます。しかし、それらはほぼ止むことがないため、多くの人は希望を持ち続けにくくなっています。

研究によると、こうしたニュースやメッセージから目を背ける人がますます増えています。暗いニュースが多すぎると、情報を遮断したくなる人もいるでしょう。

このようなニュースの忌避は、世界中のジャーナリストにとっても深刻化している問題です。ロイター研究所の最新の「デジタルニュースレポート」によると、多くの国でニュースに対する関心と全体的なニュース消費量が大きく低下しました。また、ニュースへの信頼度は、ほぼ全域で昨年より低下しています。

これらの課題を踏まえながら、希望を築き、人々を解決策へと導くために、コミュニケーションをどのように用いればいいのでしょうか

私の見方では、人々の関心を惹き、行動を促したいのであれば、人々に対して、世界の暗い現実から目を背けるのではなく、希望に満ちたメッセージに関わり続ける理由を提供すべきです。

解決策のない問題は存在しないと示さなければなりません。恐怖に囚われるのではなく、希望を抱いてもらえるように。

どうすればより公正で持続可能な未来を築けるのかを明確に思い浮かべるための情報や活動に、人々がアクセスできるようにする必要があります。

そうすれば、想像力を高め、世界をより良い場所にする運動に参加する喜びを感じてもらうことができるのです。

こうした取り組みの中で、勇気づけられる結果がすでに表れています。

例えば、2020年ドバイ国際博覧会への国連の参加では、SDGsのための一致団結した行動の活性化が狙いでした。国連が拠点を置いたパビリオンには、前向きに変化するための方法を求めて120万人が訪れました。国連は、2025年の大阪・関西万博でも多くの来場者と交流することを楽しみにしています。

さらに、東京2020大会においては、東京の国連広報センターと朝日新聞社の連携によりSDGメディア・ゾーンが開催され、世界中に配信されました。指導者やイノベーター、メディアが一堂に会したこのイニシアチブは、多様性、寛容、尊敬の価値を促進するスポーツが持続可能な開発の重要な成功要因だと示しました。

皆様、

希望を生み出し、解決への道を開く取り組みにおいて、国連と世界全体は恐るべき敵に直面しています。

私たちはますます汚染が進む情報環境に生きているからです。悪意ある人々が誤情報や偽情報の種をインターネット上にまき散らし、コミュニティーに実害を与えています。この現象は、COVID-19のパンデミックが世界にショックを与えたとき、森林火災のように広がりました。

国連では、行動しなければならないことに気が付き、対応策、つまり反撃方法を考え出しました。国連は、コミュニケーション団体であるPurposeとともに「Verified(ベリファイド/検証済み)」イニシアチブを立ち上げました。目的は、ソーシャルメディアのフィードに信頼できる保健ガイダンスを載せ、虚偽の情報を打ち消して偽りを暴くことです。

Verifiedを通じて作られた共有可能なコンテンツは、数百万人には届きました。しかし、誤情報や偽情報はCOVID-19よりもはるかに大規模に蔓延し、平和や人権、さらには地球の未来までもが危険にさらされています。

例えば、気候緊急事態については、虚偽や誤解を招くコンテンツが人々の理解を歪め、気候科学の価値を損ない、最終的には緊急に必要な気候行動を遅らせています。

偽情報の影響は、紛争下でも見られます。国連平和維持要員を対象にした最近の調査では、44%が誤情報や偽情報によって活動が重大な悪影響を被っていると答えました。

偽情報はまた、世界中のかつての紛争発生地域でも広がっており、ジェノサイドを否定したり戦争犯罪人を賞賛したりすることが急増し、社会を結束させる取り組みを弱体化させています。

国連だけでこの問題に立ち向かうことはできません。各国政府、メディア、民間セクター、市民社会、社会全体が国連と協力して希望と解決策を推進していく必要があります。世界の現状を改善する話ではなく、生きるか死ぬかの問題です。

事務総長が国連総会での演説で強調したように、「一丸となって行動することで、私たちはか弱いながらも希望の芽を育てることができるのです」

友人の皆様、

最後に、このフォーラムに招いてくださった朝日新聞社に感謝したいと思います。またこの機会に、前向きな変化を起こそうと約束し、取り組んでいるすべての方々にも感謝の意を伝えたいと思います。

健全な地球の上に、平和、尊厳、繁栄で満たされたより良い世界を築くための共同の取り組みを、続けていこうではありませんか。

共に、一つの人類という家族として。

ありがとうございました。

* *** *

*本メッセージは、メリッサ・フレミング事務次長が「朝日地球会議2022」(https://www.asahi.com/eco/awf/)に寄せました。